第112話・大円団にはまだ早い?

 ステラフォースを汲み上げていた侵略者を排除して。


 この星を守るための手段として、俺ができる事を考えた。

 そして辿り着いたのが、『フォースプロテクション』で星を包む作戦。

 神の機動戦艦から地球を守った結界装置、あれで星を包み込む。

 さらに、星の絶対座標軸を1度だけ、多次元側にシフトさせる事で、外界から触れられなくすることも可能である……ん?


「そっか、絶対座標軸をずらすだけでいいのか」


 今は、腹が減っては戦ができぬという事で、避難しているエルフのための炊き出しを行い、皆で食事をとっている。


「ミサキさま、絶対座標軸とは?」

「まあ、俺のいた世界の話なんだけどさ……」


 とりあえず、簡単に説明するんだけれど、この方法には致命的欠点がある。

 近い将来、この星の人々が宇宙に進出する場合、何もない空間に飛び出す可能性があるという事。

 まあ、それについては、多次元シフトを解除すればいいので、システム的には解決するんだけど。

 淡々と説明すると、最後にエルフの長老が困った顔になってしまう。


「問題は、それを管理するのは私たちですか」

「そういう事。システム的には大きくなるし、各大陸ごとに設置する必要が……って、本体をここに設置して、あとは衛星軌道上に配置するから問題はないか。エルフの民で管理できるか?」

「……我々は構いませんが、他大陸の民が、この装置の利権を求めてくるやも知れませぬ」

「そこは俺の関与する事じゃないし。必要なら、エルフみたいに魔力を持つものしか入れない結界も作れる。まあ、事情を説明するなり、結界の中に逃げるなりすればいいと思うよ….」


 ひとつ一つの問題を塗りつぶし、最適解まで辿り着くように話し合いを続ける。

 そして日が暮れる頃には、話し合いは完了。

 この軍事施設があった場所に【多次元シフトシステム】を構築し、さらに街全体を魔力の結界で覆う。

 

「そういう結果になったからな。月影、お前も本国に戻って報告しろよ‼︎ お前たちの目的も『星を守る』なんだから、これで解決だろうさ」


 離れた場所で俺たちを監視している月影。

 背後には半壊している朧月もあるが、脚部及び動力部などは稼働するので、移動に対しては無理をしなければ問題はないように見える。


「……やむなし」

「やむなしじゃねーよ‼︎ そもそもお前がやりすぎたんだろうが‼︎ あそこまで皆殺しモードに目覚めやがって、余計に火に油を注いだ結果になるのは、見えていただろうが」

「全て根絶やしにすれば、本星との連絡が途絶える」

「……この殺戮忍者が」


 敵が怒りに任せて砲撃を行った結果、地上の軍事施設は跡形もなくなっている。

 残ったシステムから情報を引き出すこともできなくなり、破壊した地下施設にもそれらしいものはなかった。

 まあ、地下施設の残骸は全て|無限収納(クライン)に収納したので、これを材料にシステムを構築するんだけどさ。


「まあ、一旦は本国に戻る。ミサキ、貴様との決着は、そのあとだ。我々は、まだ貴様の持っている鍵を諦めたわけではないからな」

「まだ狙っているのかよ、星を守る手段については、さっき説明しただろうが」

「一族の再興、それを成すためにも必要だからな」

「勝手にしろ。仕掛けてくるなら反撃するが、そうじゃないのなら、俺からは何もしない」


 そう告げたら、月影が朧月に搭乗した。

 そしてスッと姿を消したが、特段俺を狙って何かする様子はない。


「さてと、そんじゃ、明日からでも始めますか。俺は準備があるので、これで失礼します」

「ありがとうございます」


 エルフたちに再度、感謝されながら、俺はカリヴァーンで地下施設のあった場所に向かう。

 いや、流石に大掛かりな作業になるから、一人じゃ無理だよね。

 という事なので、久し振りの量産型サーバントの作成を開始しますよ。


………

……


 一時間足らずで、作業用サーバントを一体作成。

 それを|量産化(プロダクション)で朝まで数を増やす。

 

「さて、オクタ・ワン、聞こえるか?」

『ピッ……通信回線の復旧を確認。ご無事でしたか?』

「まぁね。まさか超空間通信システムが破壊されるとは、俺も予想外だったわ」

『ピッ……ミサキさまならば、時間はかかっても修復すると信じていました』

「サンキュー。こっちの様子なんだが」


 淡々とここまでの状況を報告するんだけど、通信の向こう側がなんとなく険悪な雰囲気になっている感じがする。


『ミサキさま、その侵略者たちの本星を爆破しましょう』

「アホか、その声はヘルムヴィーケだな? そんなことしなくても、守りに徹したら勝ちだよ」

『ミサキさまを狙ったという事実が罪そのものです。罪には罰を‼︎』

「まあ落ち着け。ヒルデガルドはいるか?」

『マイロード、私はここに』

「星の遺跡の調査はどこまで進んだ?」

『はい。先日、帝国軍の先遣隊が星まで到着、空洞目掛けて一斉砲撃を開始しました』

「……はぁ?」


 話によると、帝国軍もなんらかの方法でアクシアの鍵の在処について情報を入手した可能性がある。

 そしてアマノムラクモを発見し、そのまま攻撃を開始したということ。

 そして空洞に鍵がないことを知っていたのか、内部に向かって『|惑星破壊ミサイル(プラネットバスター)』を射出。

 遺跡群は完全崩壊したらしい。


「鍵の在処を知る……最悪、火の鍵は帝国が保持している可能性があるということか」

『ピッ……もしくは、ハストゥールから聞き出した可能性があるということです』

「まあ、敵艦隊は殲滅したんだろ?」

『ピッ……アマノムラクモに牙を剥いた以上、敵艦隊八隻全て拿捕。乗組員は降下艇で星に降りてもらい、全ての艦隊のシステムは手中に収めました』

「だろうなぁ。お土産、ありがとうよ」

『ピッ……お褒めに預かり恐悦至極。お戻りはいつ頃で?』


 星のフォースプロテクションシステムの起動までは、だいたい一週間は見ないとならない。

 その後で、次の鍵の場所まで転移させてもらうから、戻るのはまだ先になるよなぁ。


「……と言うことだから、もう少し待て」

『ピッ……了解です。ここ最近はアヤノコージが猛威を奮っていますが、よろしいのですか?』

「猛威?」

『はい。日々の鍛錬を繰り返し、次のミサキさまの出撃には何としても同行しようと画策しています』

「塞ぎ込んで何もしないよりはマシ。監視だけしておいて」

『了解ですわ』


 さて、そんなこんなで近況報告も完了。

 あとは、装置を作るだけか。

 どうせ完成したら月影がやってくるだろうけど、無視無視。

 殺戮忍者の相手なんてしてられないわ。

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