第111話・蹂躙と、大破壊と

 うぉりゃぁぁあぁぁぁ!


──ドゴドゴドゴドゴォォォォッ

 大地の鍵を回収した俺は、次の仕事として軍事施設の大破壊を開始。

 もうね、鍵は回収したんだから、思う存分やらせてもらうことにしたよ‼︎


「命知らずだけ、俺の前に立て‼︎ 命乞いをする奴は、とっととこの星から逃げろ‼︎」


──キィィィィィン

 |悪魔の右手(デモンズライト)により伸ばした爪、名付けて『|悪魔の爪(デモンズクロー)』で施設を次々と切り刻んでいく。

 必死に命乞いをしながら逃げるもの、装輪装甲車で近寄り攻撃をするもの、そしてステラアーマーにより俺を捕まえようとするものなど、さまざまな光景が広がる。

 だが、この軍施設の兵装レベルでは、カリヴァーンの表面に常時展開しているフォースフィールドを貫通することはない。


『この化け物がぁ‼︎』


──ガギィィィィーン

 色違いのステラアーマーが振るう、巨大な有線式エネルギーハルバード、それを|悪魔の爪(デモンズクロー)で弾き飛ばす。

 

『敵兵装は、魔導兵器です』

「へぇ、そいつはとんでもないな……」

『魔力により結界を中和するものと思われます』

「こいつで、あの結界を破壊した可能性は?」

『おそらく86%。デモンズクローを弾き飛ばすなど、論理的ではありませんから』


 それなら、こいつを使い物にならなくすればいい。

 

──キィィィィィン、ガギィィィィーン

 エネルギーハルバードとデモンズクローの打ち合いが始まるが、一進一退というほど追い込まれてはいない。

 むしろ、ステラアーマーの振るうエネルギーハルバードが、徐々に威力を落としていく。


『ちっ、相変わらず使い物にならない兵器だ‼︎』


 そう叫びながら、背部ユニットごとエネルギーハルバードをパージ。

 すぐさま下腕部のアームガードを展開して拳をカバーすると、今度はインファイトで殴り掛かってくる。


『おらおらおら、その長い爪だと、懐に飛び込まれたら不利だろうが‼︎』

「そうか?」


──シュゥゥゥゥ

 爪を格納して拳に|悪魔の右手(デモンズライト)を纏う。

 そして殴り掛かってくる拳を左手で受け止め、その肘目掛けてチョップを落とす‼︎


──ドゴッ

 一発で腕を膝から切断する。

 さらに逆水平チョップでステラアーマーの左肩を粉砕すると、とどめに腰目掛けて左手ミドルキック‼︎


──ドゲグシャア

 見事に腰部から切断すると、そのまま重力に任せて倒れていくのを放置。


「よく聞け、これから貴様らの施設全てを破壊する。一時間以内にこの星から出ていけ‼︎さもなくば、皆殺しだ‼︎」


──ギリリ

 首を掻っ切るポーズを見せると、頭部コクピットから指揮官らしい男が走って逃げ出す。

 それに追従するように、施設の奥から宇宙船が次々と発進し、上空へと飛んでいき……。


──ドッゴォォォォォォン

 そのうちの一隻が、空中で爆発する。

 その爆炎の中から、月影の朧月が姿を表すと、別の宇宙船へとジャンプ‼︎


「ば、馬鹿野郎、せっかく逃げているんだから、手出しするな‼︎」

『この手の輩は、手勢を集めてまた戻ってくる。そうなる前に根絶やしにするのが至極当然‼︎』

「アホだろ、お前、本当にアホだろ‼︎」


 人のことは言えないが、俺は、あんな殺戮兵器ではない。

 すぐさま背部スラスターを展開して朧月に向かって接近すると、高速スラッシュキックで朧月を宇宙船から引き離す‼︎


──ドゴッ

 その蹴りを受けて地表目掛けて墜落する朧月だが、そこに向かって宇宙船も下部砲塔を展開して一斉砲撃を始めた‼︎


「な、なんだって。お前たちも逃げろよ、なんでわざわざ火に油を注ごうとするんだよ‼︎」


──ドッゴォォォォォォン

 その砲塔は朧月だけを狙っていたわけではない。

 下部三連装主砲はカリヴァーン目掛けて斉射されたが、フォースフィールドで全て受け止めた。

 そして持てる限りの兵装をばら撒きつつ、宇宙船は次々と大気圏を突破、宇宙へと逃げていく。


「……マジかよ」


 軍施設のあった場所は、幾つもの巨大なクレーター群に姿を変えた。

 爆風により近隣の建物も吹き飛び、大勢のエルフたちが建物から外に避難を始めている。


「なんで、最後にぶちまけたんだよ……」

『逃走するための安全策、でしょう。ミサキさまなら、このような被害を見て、それを無視して追いかけてくることないと判断したのかと』

「そのために、罪ない人々を巻き込むのか? そのために都市まで蹂躙するのか?」


──ギリリ

 力一杯、拳を握りしめる。

 俺の見通しが甘かったのか?

 いや、朧月が追撃をしたから?

 どのみち、起きてしまったことは覆せない。

 今やることは、避難しているエルフたちの安全確保。

 そして、月影の対処。

 星を守るためなら、外から来た奴らの命など微塵にも感じないのか?

 どうしてそこまで、簡単に人の命が奪えるんだ?


『……先日のエルフの方々を確認。カリヴァーンに向かって手を振っています』

「そ、そうか‼︎」


 慌ててモニターを確認すると、確かにエルフの長老のような人たちも手を振っている。

 

「外部スピーカーに接続……大丈夫ですか‼︎」

『おお、ミサキさま。大丈夫です、建物は破壊されましたが、基地で騒動が起きたときには、すぐさま避難を始めていましたから‼︎』


 ホッ。

 少しは落ち着いてくる。

 

「被害者は?」

『怪我人はいますが、魔法で治療しておりますから大丈夫です‼︎ それよりも、あの異星人を星から叩き出してくれて、感謝します‼︎』

「ま、まあ、結果的には叩き出せましたけど、またくる可能性があります』


 どうする?

 当初の予定通りに、結界を張って星を守るか?

 エルフが魔法を使えるのなら、大規模結界発生装置は作れる。

 それとも……。


 ゆっくりとカリヴァーンを降下させつつ、クレーターに突き刺ってピクリとも動かない朧月を確認する。

 外部装甲にダメージはあるものの、致命的な損傷はない。


「丈夫だな……まあ、あそこから動かないのなら、好都合だわ」


 カリヴァーンを着地させて降着ポーズを取らせると、コクピットを開いて姿を出す。


「長老、これは俺からの提案です」


 大声で叫ぶと、エルフたちが集まってくる。

 よし、覚悟を決めろ。


「俺は大規模結界発生装置を作れます。それで星を丸ごと包み込み、星全体を守ることができます。ですが、高出力の結界中和装置があった場合、破壊されるかも知れません」


──ザワザワッ

 安堵と不安の混ざった声が聞こえてくる。


「俺にできることは、大規模結界発生装置を作ること。もしくは……俺の住んでいる星に避難するか。そこは、ここよりは安全ですが……」

「ミサキさまのお気遣い、感謝します。ですが、我らはこの星に生まれ、この星と命運を共にしてきました。ここは、私たちの『故郷』なのです」


 ここを離れることはない。

 生きるも、滅ぶも、全ては運命。

 そう言葉を終えた長老。

 それなら、俺がやることはひとつだけ。


「わかりました。そんじょそこらの結界中和装置に負けない魔導具を作ります。それで、この星を守ってください」


 この言葉に、エルフたちは頷いている。

 よっしゃ、久しぶりにフルパワーの錬金術を始めるとしますか。

 

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