第109話・三つ巴の攻防
あのニンジャ機って、何者なんだろう。
取り敢えず捕まえてみて、話を聞きたいところなんだけど。
その前にやらないとならないことが多すぎる気がする。
「カリヴァーン、動体センサー及び魔力センサーを起動、あのニンジャが接近してきたら,すぐに知らせてくれ」
『了解です』
まずは背部ウェポンラックの、超空間通信システムの修復。
材料は|無限収納(クライン)にある素材を使えばなんとでもなるから、それを取り出して|物質修復(レストレーション)の魔法で修理を始める。
まあ、発動したら、あとは表示されている時間を待たないとならないんだけどね。
「完全修復まで八時間か。カリヴァーン、ウェポンラックを外してくれるか? 別ユニットを取り出すからさ」
『了解です』
──バシュッ
固定ボルトが外れ、フォースフィールドによって固定されたウェポンラックが地面に降ろされる。
そして、近接格闘専用追加ブースターと、サブマニュピレーターを搭載したウェポンラックを|無限収納(クライン)から取り出すと、それをカリヴァーンに設置。
「おっけ。ボルトで固定はしたから、システムの同期を宜しく」
『外したのは、長空間通信ユニットのみですか』
「いや、センサーユニットを外した。ここまでくると、あとは突撃して回収するだけだからさ」
『了解』
よし、これで通信も復旧したし、近接戦闘に持ち込んでどうにかできそうな気がする。
それよりも、ここからの優先順位だよなぁ。
「あのニンジャ機は、俺の持っている風の鍵を奪おうとしている。まあ、これについては|無限収納(クライン)に入れてあるので、俺以外は取り出すことができないから問題はないとして……」
問題は、大地の鍵。
奴よりも早く手に入れる必要があるのなら、作業の優先順位は以下のようになる。
1.大地の鍵の回収
2.ステラフォースを奪っている敵施設の破壊。
3.霊子光器の奪回。
「結局は、こうなるのかよ。詰めるところ、特攻で敵施設に突入し、鍵の回収ののちに軍施設を破壊。可能ならば、復旧不能にしてしまうのが一番なんだよなぁ」
そうなると、問題はどこに現れるか。
まず、敵と正面切って戦闘に突入してしまう。
これは、カリヴァーンなら負けないと思うが、数でこられると非常に面倒くさい。
また、俺が突入することを見越して、横からあのニンジャ機が大地の鍵を攫っていく可能性もある。
「いずれにしても、やるっきゃないか……」
腹は決めた。
あとは、実践勝負するしかない。
………
……
…
カリヴァーンに搭乗し、軍施設の上空まで飛んでいく。
どうせ基地施設では、熱源センサーで俺の居場所はわかっているはず。
──ヴィーン、ヴィーン
ほら、基地全体に警報が鳴り響いたでしょ?
すぐさま基地から6機のステラアーマーが飛んでくると、今回は有無を言わずに攻撃を仕掛けてくる。
──BROOOOOOM‼︎
今日は機関砲らしき武器を構えて、一斉に撃ち放ってきた。
「来た来た。フォースフィールド展開っ‼︎」
素早く回避を繰り返しつつ、フォースフィールドで実弾兵器を止める。
すれ違いざまに射撃してくるのを躱しつつ、一気に降下を開始。
「カリヴァーン、高熱源区画はどこかわかるか?」
『奥の倉庫区画内、地底からの反応かと思われます』
「よっしゃ、吶喊‼︎」
──ザシュゥゥゥゥゥゥゥ
地面に着地し、そのまま慣性に任せて地面を滑っていく。
大地が抉れ、アスファルトのようなのが後方に吹き飛んでいくが、全て無視。
──ヒュィィィィン
すぐさま前方に三機のステラアーマーが着地すると、腰に下げてあった巨大な刀のようなものを引き抜いて構える。
『貴様は稲穂の国のニンジャだな‼︎』
「ちっがうから‼︎ 通りすがりの異世界人だから」
『巫山戯るな、武器を捨てて投降するなら殺しはしない。だが、対抗するなら、殺す』
「なんでわからないかなぁ……って、そりゃあ無理だよな。ということなので、押して参る‼︎」
──ビュゥゥゥゥゥゥ
|悪魔の右手(デモンズライト)を作動し、さらに指先から爪のように伸ばす。
眼前のステラアーマーも三機がゆっくりと回り始め、カリヴァーンを囲むような体制を取った。
『捕縛しろ‼︎』
──プシュゥゥゥゥゥ
隊長機らしき機体が叫ぶのと同時に、残りの二機がロープのようなものを腕から射出した。
それはカリヴァーンの左右の腕に巻きついたのだが、出力的にこっちが有利。
『そのまま押さえておけ‼︎』
その叫び声と同時に、隊長機がブースターを全開にして加速し、カリヴァーンに向かって間合いを詰めてくる。
うん、惜しい。
いい連携だけど、それまで。
「やらせるかよっ‼︎」
──グィン
右腕を力一杯引っ張って、ロープを射出してきた機体を俺の目の前まで引き寄せる。
そしてタイミングよく隊長機に激突させると、右腕を回してロープを切断。そのまま両手で左腕のロープも引っ張って!もう一機も引きずり倒した。
「いつまでも、あんたらの相手をしている余裕なんてないんだわ。あばよっ‼︎」
すかさず眼前の倉庫の入り口に向かって走り出すと、|悪魔の右手(デモンズライト)の爪で壁を全て切断。
──ドグゥアガラガッシャーン
壁を破壊し、そのまま内部に突入。
幸いなことに大型倉庫だったため、カリヴァーンでも腰を屈めれば入らないことはない。
けど、それは断る‼︎
「カリヴァーン、生体反応確認」
『この周辺にはありません』
「地下に通じている道は?」
『奥に竪穴があります。ジオフロントのように広がる地下へと伸びている感じです』
「そこまで突っ込む‼︎」
|悪魔の右手(デモンズライト)の出力を上げて,力一杯振り下ろす。
──ズドドドドトトドドッッッ
建物の内部を破壊し、竪穴までの道を作り出す。
そこを急いで進んでいくと、直径30mほどの竪穴まで到達した。
「よっしゃ、飛び込む。背部スラスターは展開しないで、ノズルの角度調整を行いつつ降下を開始する」
『了解‼︎』
軽くジャンプして飛び降りると、すぐさまスラスターを吹かしつつ降下を開始。
このまま何事もなければいいんだが。
『上空から高エネルギー反応、ニンジャ機が急速接近‼︎』
「くるとは思っていたよ。フィールドプロテクション作動‼︎ 竪穴を魔導エネルギーで塞いでしまえ‼︎」
──ブゥン
|神の左手(ゴットレフト)を上空に掲げて、フィールドプロテクションを作動する。
──ガギィィィィーン
すると、ニンジャ機が刀を引き抜いてプロテクションを力一杯切りつけたのだが、今回は破壊することも中和することもできず、すぐさまジャンプして上に逃げていった。
「そうだろうよ。フォースフィールドとは、一味も二味も違うからな。さて、次は何をしでかし……」
『上空から落下物反応。ステラアーマーの残骸及び建物の瓦礫が降ってきます』
「全速降下、スラスター出力最大っっ。重さで負けるわ‼︎」
すぐさま機体の姿勢を変更し、地下へ向かって急降下加速を開始する。
そして一分ほどでポッカリと開いた空洞に出ると、俺は目の前の光景に絶句した。
金属製の大地、そこに穿たれたいくつもの杭。
そこに繋がれているパイプからは、赤い液体が汲み上げられている。
まるで、巨大な鎧を着た生物から、体液を吸い出しているかのように。
「……そういうことか。ステラフォースって、そういうことかよ‼︎」
目の前の巨大な生物。
俺の|解析(アナライズ)は、その存在を、こう記した。
『封じられた旧神ツァトゥグァ』と。
ステラフォースとはすなわち、旧神から汲み上げた『液化した神威』であることが、ここでようやく理解できた。
「ふ、ざ、け、るなよ‼︎ カリヴァーン、あの杭を全て破壊する!いくぞ‼︎」
右腕の|悪魔の右手(デモンズライト)の爪を限界まで伸ばすと、俺は手近な杭へと飛んでいった‼︎
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