第110話・滅ぶ運命と、抗うものと
──ドゴドゴドゴドゴォォォォッ
旧神ツァトゥグァに突き刺さる巨大な杭……いや、針を次々と破壊し、針から伸びているパイプの先、大型タンクへと移動する。
その俺の背後からは、ニンジャ機が追尾しており、時折り手裏剣を飛ばしてきては,俺を牽制している。
「くっそ、邪魔くさいわ‼︎」
『前方からステラアーマーが三機。エネルギーブレードを所持しています』
「その程度の武器、このカリヴァーンに効くと思っているのなかぁ‼︎」
──ゴゥッ‼︎
背部スラスター全開のまま加速し、右脚部に魔力を凝縮すると、エネルギーブレードを構えた一機に目掛けてランキングレッグラリアート‼︎
──ドゴグシャッ
胴部が真っ二つに裂けるが知らん‼︎
どうせコクピットは頭部に丸見えだし、ジェネレーター部分は背中ユニットと胴部一体型、腰部フレームを破壊した程度では爆発するはずもない。
──ドッゴォォォォォォン
その横、もう一機はというと、ニンジャ機のはなった大筒に胴部を吹き飛ばされて爆発。
さらにもう一機にたいして手裏剣が深々と突き刺さったのだが,そのうちの一つが頭部コクピットを直撃。
爆発することなく、敵ステラアーマーは稼働停止した。
「バッカ野郎! 殺す必要なんてないだろうが」
『奴らは、世界の理を歪める。滅んで構わん』
「なんだよ、その破壊の美学は‼︎ お前には、人間のような熱い血潮が流れていないのかよ‼︎」
まあ、異星人だから、そんなものは流れてないかもしれないけどね。
『任務のためならば、涙すら捨てる』
「人を殺してまで、やり遂げないとならない任務なんていらんわ‼︎」
『やらねば、我らが星が滅ぶ‼︎ 神威を失った神の末路を、貴様は知らないのか‼︎』
「知るか、そんなもの‼︎」
急速反転して、ニンジャ機に向かって急速接近。
そのまま敵機体の顔面めがけて、|悪魔の右手(デモンズライト)により破壊の魔力をコートした右腕を、力一杯叩きつけようとした‼︎
「神威型、パンピングボンバー‼︎」
──ブゥン
それは直撃直前に、体勢を比低くしたニンジャ機によって躱されてしまった。
しかもカウンターでカリヴァーンの膝に向かって蹴りを入れてバランスを失わせようとしてきたのだが、それは左舷スラスターを吹かして回避した。
「そもそも、貴様がこの星を救いたいというのなら、なんで俺の鍵を狙ってくるんだよ‼︎」
『ふざけた事を。霊子光器は、四神の鍵を生贄にする事で、願いを叶える|魔導遺物品(アーティファクト)だろうが‼︎』
「……はぁ?」
待て待て?
なんだその|魔導遺物品(アーティファクト)って。
そんなの知らんわ。
そもそもそれは、
「霊子光器は、この星の魂の収束されるものだろ。それがなんで、願いを叶えるアイテムになったんだよ‼︎」
『我らが里に伝わる口伝。そもそも霊子光器は、我らが祖先が神より授かったもの。神代の力を捧げることにより、どんな願いも叶える。それが、長き時を経て、捧げるものが命に成り代わってしまった』
そこからの説明乙って話によると、ニンジャの仕えていた大名が霊子光器の話を聞き、それを奪うために彼の故郷を滅ぼそうとしたらしい。
そして発見された霊子光器に死者の魂が吸い込まれるのを見た大名は、最初は犯罪者を生贄に捧げることで、霊子光器から綺麗な宝石を受け取ったそうだ。
それ以後、大名は次々と犯罪者を殺め、犯罪者がいなくなれば、罪なきものを犯罪者に仕立て上げ、霊子光器から財を生み出していた。
しかし、それもいつまでも続くものではなく、ある日を境に、霊子光器は姿を消したらしい。
乾涸びてミイラになった大名を残して。
彼は、先祖が霊子光器によって滅ぼされかかった事を知っている。
そんなある日、空から異星人がやってきた。
彼らは星の中を巡るステラフォースに目をつけ、それを汲み出して実験を行った。
その結果、ステラフォースを液化して持ち出すことに成功した彼らは、その源流がどこにあるのかを調査。
そして辿り着いたのが、この大地だったらしい。
『我が里の呪い師は告げた。この星のステラフォースが枯渇すると、星は滅ぶと。御神体からステラフォースが抜き取られ神が死ぬと、この星の守護が失われ、崩壊すると……』
「それで、霊子光器を探し出して回収したのかよ。俺の鍵のことは、誰から聞いた‼︎」
『霊子光器からだ‼︎』
「碌なもんじゃねえな。エルフたちは、霊子光器は星の魂だと話していたぞ‼︎」
『そういう逸話もあるというだけに過ぎない。伝承など、その地によって幾らでも変化するからな‼︎』
そうかそうか。
つまり、このニンジャは俺の持っている風の鍵のことは知っていても、大地の鍵については知らないということか。
それなら、とっとと大地の鍵を回収したほうがいいな。
星を守るってことなら、この設備を全て破壊して、ツァトゥグァをフォースフィールドで包み込むようにすればいいだけだし。
ほら、超人なんたらに出てきた、星があったよね?
ミラーオブラフなんちゃら。
あんな感じに、星全体を結界で包み込むのなら、外部からの侵略も防げるんじゃね?
「勝手にしろ‼︎ 俺は、俺のやりたい事をする。それに、俺のことをつけ狙うよりも、ここの施設を破壊するほうが、今は良いんじゃないか?」
『貴様から鍵を奪うよりも……か。いいだろう、先に施設を破壊して、鍵を奪うのはそのあとだ‼︎』
空中で踵を返すと、ニンジャ機は後ろに向かってかけていく。
「じゃあな、稲穂のニンジャさん」
『月影だ。そして我が魔導甲冑は“朧月”だ』
「ミサキ・テンドウだ。我が相方はマーギア・リッター“カリヴァーン”だ」
初めての自己紹介。
ちゃんと返事も返したよ、無礼だといきなり『辞世の句を読め』とか言われそうだからな。
そのまま高速で離れていったので、ここからが本番。
「さてと。脅威は去ったので、バックウェポンシステム換装。センサーモードに切り替えて、大地の鍵の観測開始」
『了解。並行作業で、超空間通信システムの修復も再開します』
あとはツァトゥグァの表面を覆う金属鎧の上を、ゆっくりと移動。
そして分かったことは、このツァトゥグァ、となりのト◯ロのように腹天状態で横になっている。
その上に金属鎧のようなフレームを装着して足場を作り出し、体液を回収する装置などを設置している。
真っ直ぐに頭に向かって移動を開始すると、ハストゥールの時のように、頭の中に声が聞こえてくる。
『かよわきものよ、我が体から異物を外してくれて感謝する』
「……うわぁ、いきなりきた。あんた、ツァトゥグァ?」
『うむ。我が封印を貫くものがあるなど、予測もしていなかったゆえに。対処が遅れてしまった』
「そういうことか。今もまだ、封印状態なん?」
『うむ。我は星と共にある。故に、我はここで眠り続けていた。よわきものよ、汝からはハストゥールの鍵を感じる。そういう事なのか?』
お、物分かりが早くて助かりますわ。
「はい。すでに宝剣の鍵の柄と風の鍵は、私の元にあります」
『アクシアの解放か。何を望む?』
「さぁ? 世界征服とか物騒な事じゃないことは、確かだよ。帝国や……月影にはやらんけど」
『正直だな……ほら、持っていけ』
──シュゥゥゥゥ
すると、ツァトゥグァの声と同時に、俺の目の前に鍵が浮かび上がる。
それを受け取って、すぐさまアクシアの鍵を|無限収納(クライン)から取り出すと、二つを融合してアクシアの鍵を進化させた。
──プシュゥゥゥゥゥ
「おおう、鍵が二つ伸びている。こりゃあ、たしかに複製できんわな」
『かよわきものよ次は何処へ向かう?』
「水は最後なので、炎の鍵だよなぁ」
『かよわきものなら、それは容易く手に入るだろう……では、向かうのだな?』
「待って、まだこっちの仕事は終わっていないからさ。この星を襲った奴らに、しっかりとケジメをとってもらわないとならないから」
『ふむ。ならば、全てが終わったら、我を呼べ』
そこまで告げて、ツァトゥグァはいびきを掻いて眠り始める。
さて、月影に合流して、この面倒くさい奴らを宇宙に叩き出す算段を考えるとしますか。
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