第108話・第三勢力と、狙われたカリヴァーン
さて。
定時連絡の時間なので、カリヴァーンのウェポンラックを展開し、アマノムラクモに超空間通信を送る。
「こちらミサキ。そっちの状況はどんな感じだ?」
『ピッ……現在、地下遺跡群の調査を開始。あの竪穴の途中にあった水は、空間転送を行うためのものであること、鍵を持つものを、次の世界に送るためのものであることは理解できました』
「ほうほう、それで、俺だけがこっちにきたのかよ……って、ちょい待ち、それって」
『ピッ……はい。アクシアの鍵が発するシグナルは、ミサキさまの
「マジかぁ……こっちの世界のエルフは、ステルスモードで消えていても魂を見て俺を発見したし、洒落にならないわ」
そこまでの超技術がある世界。
そして、エルフたちの聖地である遺跡、その奥から出土した霊子光器。
大地の鍵は古代神殿サーナイオンにある。
それをとりに向かうためには、あの軍施設に突っ込まないとならない。
星からステラフォースを汲み上げている軍事国家と、それをよしとしないエルフたち。
そして、盗まれた霊子光器。
このあたりを淡々と報告すると、イスカンダルが通信に出る。
『ミサキさま。古代神殿サーナイオンと申しましたか?』
「ああ、知っているのか雷電?」
『ピッ……そのネタが分かりません』
「まあ、それは置いておく。どうなんだイスカンダル」
『はい。サーナイオンは、大地の旧神の眠る地。地底世界クン=ヤンを指します。ミサキさまにわかりやすいように綴りますと“ Xinaian”、シィナイアン。これが訛ってサーナイオンと』
「なるほどなぁ。つまり、俺は来るべきところに来たってことかよ。それで、この後のことなんだが」
そう問いかけると、次々と答えが出てくる。
『ピッ……カリヴァーンで強行突破して、大地の鍵を回収するべきです』
『そうですな。早く戻らなくてはなりませんが、おそらく、また強制転移させられるでしょう』
『マイロード。私たちは、一刻も早く無事なお姿を見たいのでする』
まあ、モニター越しには見えておると思うんだけどさ。相変わらず過保護でいらっしゃるわ。
「それだと、エルフを助けられない。盗まれた霊子光器の件もあるのにさ」
『『『関係ありません』』』
「マジかぁ!!」
『そういう問題は、現地人の問題です。迂闊に首を突っ込むものじゃないですが』
『ピッ……イスカンダルに同意』
『マイロード。そこで他世界に干渉するのは、のちの影響を考えてもよろしくありません』
ここで俺が手を貸しても、ずっとここにいる訳じゃない。
それよりも、報復措置を考えるのなら、手を出さずに過去の人間に任せるのが正解だとさ。
まあ、言いたいことは理解できるし、やるからにはアフターケアもって事だからなぁ。
「うーん。ちょっと考える。さすがに巻き込まれた感もあるし、そもそも霊子光器ってのが気になる」
『マイロード。それではやり過ぎないように。こちらはイスカンダルの指示で遺跡の調査を続行しますので』
「うん、よろし『ドッゴォォォォォォン』なんだぁ、回線切る‼︎」
いきなりの大爆発。
カリヴァーンが大きく揺れ、モニターが乱れる。
「カリヴァーン、何が起こった?」
『敵襲です。まさか、私のシステムに干渉しないで攻撃してくるとは、予測外です』
「コントロール貰う、お前はサブにまわってくれ」
『了解』
さて、センサー全開で敵を探す。
すると、正面150mに、人型兵器が刀を構えて立っている。
大きさにして10mほど、うちの量産型マーギア・リッターよりも小さい。
純白の機体で、どことなくニンジャをイメージしているように感じる。
「ちっ。これがゲームだったら、速攻で仕留めないとお前が経験値を持っていくんだろうなぁ……って何?」
──シュン
眼前の機体が消えたかと思ったら、背後に一撃を受けた。
『ウェポンラック損傷、超空間通信破壊』
「バカな、カリヴァーンにダメージを与えただと?」
『ウェポンラックの通信システムは、ミスリル軽合金です。破壊不可能ではありません』
「いや、それでもさ」
すぐに後ろを向きつつ数歩さがる。
あいも変わらず目の前で刀を構えているわ。
『左です‼︎』
「はぁ?」
──ドッゴォォォォォォン
いきなりの攻撃に、カリヴァーンが右方向に吹き飛ぶ。
『フォースフィールド貫通。敵はフォース干渉兵器を搭載しています』
「まっ待て待て、それって最悪じゃないか?」
『いえ、そうでもないです』
この状況で最悪じゃないって、どうなんだよ?
いつのまにか正面のニンジャ機は消滅して、左側面で大筒みたいなものを構えているし。
──ドッゴォォォォォォン
「
ニンジャ機の砲撃と、突き出した左手が同タイミング。神の左手から発するエネルギーフィールドにより、敵の砲撃は停止する。
これには敵機も驚いたのか、数歩下がってから手裏剣のようなものを飛ばしてくる。
「甘いわ、
右手に魔力を集めて、横に薙ぐ。
指先から発する破壊の波動が、手裏剣を分解した。
『解析完了。敵機はステラアーマーではないようです。内部から、カリヴァーンのような魔導力を感じます』
「ほう、ほうほう。それじゃあ話し合いにでも持っていきますか」
ゴキゴキッと拳を鳴らして、俺はニンジャ機に向かって叫ぶ。
「貴様はどこのものだ、稲穂の国のニンジャって、お前のことか‼︎」
『……』
返答はない。
そりゃそうだ、ここで返事でもしてきたら、ニンジャらしくないわな。
おしゃべりなニンジャなんて、存在してはいけない。
「返答はない。まあいいさ。どうして俺を狙う‼︎」
『……貴様から、風の鍵を感じるから……』
「……は?」
いや、待って。
なんでお前が、風の鍵を狙う?
それって、アクシアの秘密にたどり着いたのか?
「なぜ、鍵のことを知っている?」
『聞き出したから。まあいい、いずれにしても、我らは鍵が必要だ』
そう叫ぶと、ニンジャ機は手にした何かを地面に投げつける。
それは煙幕だろ、それぐらいは知っているさ。
──キィィィィィン
すると、ニンジャ機の足元に魔法陣が広がり、ニンジャ機を吸い込んで消滅した。
え?
そこは煙幕だろ?
そのためにセンサー感度を上げたんだぞ?
『高難易度転移術式です』
「解析は?」
『すでに完了。ですが、転送先座標が不可解なほどに流動していました』
「つまり、ランダムテレポートの可能性があるってことか。参ったなぁ……ここにきて第三勢力で、しかも鍵の秘密を知っているってか」
頭をかく。
とりあえず、周囲の安全を確認できないと超空間通信機システムの修復なんてできない。
久しぶりに、追い詰められっぱなしだわ。
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