第101話・ルルイエの家? いやいや、違います
──ピーン……ピーン
カリヴァーンのコクピット内に、海底探査用ビーコンの音が響く。
よく映画やアニメでは見たことがあったが、自分が経験するとは思っていなかった。
俺とヘルムヴィーケ、許褚の三人は、マーギア・リッターで海底神殿へと潜航を行なっている。
センサーによると、深度2500mに人工建造物の反応があるのだが、これが海底神殿なんだろうなぁ。
「海水の成分的には、ほぼ地球型と同じか。生命の起源である『海のスープ』が異世界にも存在し、生物が俺たち地球人のように進化を進めたんだろうなぁ」
『地球よりも無機化合物の反応が少ないですね。それに、人工化合物反応が殆どありませんが、陸上に知的生命体は少ないかと』
「ヘルムヴィーケ、それって海洋汚染がされていないって言うこと?」
『良く言えば、そうなります。知的生命体が存在し、海洋進出を行っていたとするなら、汚染は少なからず存在します。まあ、風の王によって撃墜された船舶によるものは確認できましたから』
──ズーン
その説明を受けながら、ゆっくりと海底に着地する。
たしかに、海底には撃墜された『何かの残骸』が無数に転がっている。
それらを避けつつ目的座標に向かうと、半球型のバリアのようなものに包まれた建造物までたどり着いた。
「ここが、海底神殿か。昔見た、未来の海底都市って感じだな」
『おおよそ直径300mの、物理的障壁です。フォースフィールドとはまた違うタイプの、非物質型バリアですね』
「エネルギーフィールドとか、光子の力のバリアとか、そんな感じか。出入り口はあるか?」
『……あります。ですが、どうやって開けるのですか?』
「そこに向かってから考える。まずは、向かってからだな」
ヘルムヴィーケに案内を頼み、扉とやらに近寄る。
すると、半球状のバリアに組み込まれた、高さ20m、幅10mほどの両開き扉にたどり着く。
材質的には石、大理石のようなものを磨き上げ、さらに細かい彫刻まで施されている。
「ここが出入り口かな?」
『ここと同じような場所が、全部で五箇所もあります。何か意味があるのでしょうか?』
「さぁな。何か意味があったとか、もしくは、単なる出入り口なのか、判断に困るところだよなぁ」
この規模の海底都市で、こんなに出入り口を必要とするのか怪しいところではある。
バリアの耐久性にも、問題が出そうな気がするのだが。
そして扉には、星形の彫刻が彫り込まれている。
直線的ではない、曲線で描かれた星、その中心には炎を纏ったような瞳が刻まれており、扉を開くと星が二つに裂ける仕掛けになっている。
『……ミサキさま、五つの扉は、この星形を記しているのでは?』
「そんな気がしてきたわ。そして、さっきからカリヴァーンの周りにサメが集まりつつあるんだが。でっかいやつが」
『こちらもです。最大で全長20m、私たちの機体よりも大きいです』
「カリヴァーンよりもデカイって、凄いわ。それが大量に集まってきたって……降りたらパクッて食われるな。しっかし、どうしたものか」
『ここは一旦、引き返した方が無難です。今は牽制されているように感じますが、攻撃に転じられたら、流石に恐怖しますよ』
「同感だよ。映画を体験したくはないからね」
『竜巻に乗って飛んできたり、ロボだったり、空中を泳ぐやつですね?』
「そっちかよ‼︎」
思わず突っ込んでみたものの、これ以上ここにいるのは危険と判断。
あまり手荒な真似はしたくないし、何が原因で封印されているクトゥルフが目覚めるか分かったものじゃない。
何より、鍵の秘密については、まだわかっていないから。
そう言うことで、ここは一旦退却。
真っ直ぐに降下艇まで戻ると、今後の対策について協議することにした。
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