44話

 『ぎゃー! やられたー! 無理っすよこんなの!』

『ちょっと何でいきなりヘル級なんて選んだのリーゼくん!』

『だってさっさと報酬ゲットしたいじゃないですか!』

『だからって戦力が足りないでしょ! ってかあと1人だれ!?』

『ってかゆうねるくんは!?』

『ちょっと連絡してみます!』


「まったく悠弥のやつ何やってんだよ、これじゃレイドボス勝てないだろ!」


薄暗い部屋の中で理人はLIMEを起動させて細かな指遣いで文字を入力して送信ボタンをタップする。


すぐに送ったメッセージの横に既読がついた。


「お、もしかして今から来るのか助かるぜ!」


ピロン!と軽快な音がスマホから流れ、理人はすぐに画面を見る


Yuya Sakura

『これから海に行くので無理。レイド頑張れ』


「なんだよ海ってリア充かよぉぉぉぉぉぉ!?」


理人の雄叫びが家中に響き渡っていた。

もちろんこの後、部屋にやってきた母親に怒られたのは言うまでもない。




「準備完了! いつでもいけるよー!」


現時刻、午前9時を回ったあたり。

バイクのエンジンをかけ、回転数を安定させてから戻ると

玄関でチュニックにジーパン姿小さなリュックを背負った深愛姉が子供のように待ちきれないと

いった表情で立っていた。


「それじゃまだ寒いよ」

「そう? ここ最近暖かいから平気じゃない?」

「普通に立ってるならそうだけど、ずっと風を受けれてば寒くなるから」

「うん、わかったー」


そういって深愛姉は自分の部屋に行くとすぐに薄手のコートを着て戻ってきた。


深愛姉がヘルメットを被ったのを確認すると、ヘルメットの顎の部分にあるインカムのスイッチを入れる


「深愛姉、聞こえるか?」

「うん、聞こえるよー」


このインカムは深愛姉が部屋の整理をしているときに見つけたもので

確認したところ、父親のものだったらしい。

どうやら、仕事が落ち着いたら俺とツーリング行こうとしていたらしく

会話でもできたら楽しいだろうと思って買ったようだ。


「……それじゃ発進するぞ」

「イエーイ! しゅっぱつしんこー!」


俺の背中にガッチリ捕まったのを確認すると

ローギアに入れてバイクを発進させる


しばらく走っていると先の信号が赤になったので

徐々にスピードを緩めながらブレーキをかけていく。

これが一人なら前の隙間を通って先頭車の前にいくのだが

今日は後ろに深愛姉がいることなのでやめておいた。


「それにしてもさ……」

「どうしたの?」

「……何で海?」

「昨日の海を舞台にしたドラマやってたんだけど、主人公がバイクで気持ちよさそうに走ってたの見たら行きたくなったの!」

「うわ……単純」

「もー! 悠弥のいじわるー!」


信号が青になり、前に並ぶ車が走り出したのでそれに続いて

バイクを再び発進させていく。


しばらくの間クランプバーにマウントしたスマホナビに従い、国道を走っていたが、徐々に国道から離れていき、大きな駅の前を走らせていった。

信号待ちをしているときにナビを確認すると、このまま走っていくと海が見えてくるようだ。


「道あってる? なんか普通に繁華街通ってるけど?」


深愛姉が不安そうな声を出していた。


「この道をずっと行けば海に着くみたいだってさ、ナビ様が言うには」

「よかったー」


インカム越しに深愛姉の安心した声が聞こえた。


「発進するからちゃんと捕まってろよ……」

「うん!」


ナビに従ながら走り続けていくと、先ほどの賑わいのある繁華街とは

うって変わり、気がつけば急勾配の坂道を登っていった。


「なんかさっきからゆっくり走ってるけど平気?」

「……ブレーキきつくなるけどセカンドで走ってればいけるはず」

「よかったー! 私が重いから遅くなってるのかと思ったよ」

「……そう思うなら、デザートの量を減らすんだな」

「もー! 悠弥のばかー!」


深愛姉は俺の背中を勢いよく叩く。


「……運転手に危害加えて事故ってもしらないからな」


坂を登り切るあたり一面見渡すことができた

遠くにはうっすらとだが、海も見えていた。


そのことに気づいた深愛姉は体を少し逸らして海の方を見ていた。


「悠弥! 海だよ、うーみー!」

「わかったから! ってか危ないから体を真っ直ぐにする!」

「はーい!」


坂を降りながらひたすら真っ直ぐに進んでいく、途中には道路の上空をモノレールが通り過ぎていった。


「こんなところにモノレールが走っているのか……」


滅多にみることのないモノレールに興味を惹かれ

それを話題にして深愛姉に話しかけようとするが——


「海、まだかなー さっきからドキドキが止まらないー」


——同乗者はそんな気分ではなさそうなのでやめておいた。


坂を降り切るとその先には太陽の光に照らされ、目を細めてしまうぐらいキラキラと輝く生命の源とも言われる青い海が姿を現した。


「うーみーだー!」


深愛姉は両手を上げて喜んでいた。

赤信号で止まっていたからよかったけども……


「深愛姉、嬉しいのはわかるけど危ないから手を離さないように……」

「しょうがないじゃん! 海がみえたんだもーん!」


どんな理由だよ……


「発進するからしっかり捕まってろ!」

「はーい!」


信号が青になった瞬間に左手でクラッチを強く握りながら

ローギアに入れてバイクを発進させて行った。


「海が私を待ってるよー!」

「だーかーらー! 危ないから両手をあげるな!!」




一方、ある電子空間にて……


『リーゼさん、これ以上は無理ですって!』

『好きなだけ周回できるんですからレベル帯変えましょうよー!』

『ここは何としても持たせるんだ! きっとあいつは来てくれる!』

『来る気配全然ないじゃないですかー!!』


理人は画面の外でドッシリと椅子の上で胡座をかき、自信たっぷりに

チャットをしているものの内心は・・・


「頼むから早くきてくれー! 悠弥ぁぁぁぁぁぁ!」



==================================


【あとがき】


お読みいただき誠にありがとうございます。


次回は3/12(土)に投稿予定です


お楽しみに!


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

読者の皆様に作者から大切なお願いです。


「面白そう」

「続きが気になる」

「応援する」


などと少しでも思っていただけましたら、


【フォロー】や【★星評価】をしていただけますと大喜びします!


★ひとつでも、★★★みっつでも、

思った評価をいただけると嬉しいです!

最新話or目次下部の広告下にございますので、応援のほどよろしくお願いします


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る