2nd Season

43話


 「明日からみんなが待ちにまった大型連休だ!」


暖かくなったと思っていたのも束の間、夏の足音が聞こえるぐらいの

暑さが徐々に近づいている4月最後の平日

やけに長く感じる1日の終わりを告げるホームルームにて担任が先ほどの言葉を発すると教室中が騒がしくなっていった。


「やったぜ! 明日からゲームし放題だぜ!」


俺の前の席に座る理人も両手をあげて喜びの声をあげていた


「休みだからと言ってハメを外しすぎるんじゃないぞ! 俺はこの連休中、かわいい娘とイチャイチャするんだからな!」

「うわあ先生マジキモいんだけど!?」

「うるせー! おまえらもいつか子供ができたらこうなるんだからな!」

「そうだとしても生徒の前でイチャイチャとか言わないわー」


数人の生徒にイジるだけイジられた担任はバン!と教卓を叩き……


「何か問題起こしたら俺の至福の時間がなくなるんだからな! 絶対に起こすな! はい、ホームルーム終わり! さっさと帰れ!」


そう言って担任は怒りの形相のまま教室から出ていった。



「そんじゃ俺は明日から始まるレイドイベントに向けて準備するから帰るぜ!」


俺が何か返そうと思っているうちに理人はカバンを持ってすぐに教室から出ていった。


「佐倉、帰らないのか?」


隣の席の習志野が俺を見上げるようにみていた。


「帰るよ、習志野はどっか行くのか?」

「深愛さんがいるなら佐倉の家に行くつもりだけどさ」


習志野は残念そうな顔をしながらカバンを持って立ち上がる


「そういや深愛姉、今日は撮影か……」

「そうなんだよ! しかも今日は海で撮影だから見ることもできないし!」


そういや朝食を食べながらそんなことを言っていた気がした。


「海ってことは水着なんかなー? どんな水着着るのかな! ファッション雑誌買わないと!」


習志野は目をキラキラを輝かせていた。




「そんじゃ、深愛さんが帰ってきたら楽しみにしてるって言っといてー!」

「……気が向いたら言っておく、ってか気をつけてな」


習志野は俺の家の駐車場に停めてあった原チャのエンジンをかけると

ヘルメットをかぶりすぐに発進していった。


習志野を見送った俺はすぐに着替えを済ませてPCを立ち上げて

ゲームを起動する。


すると見覚えのあるキャラが俺のキャラの元に近づいてきた。

キャラの上にはリーゼと書いてあった。

理人が操作するキャラクターだ。


リーゼ@レイド参加よろしゅう!

『やっとINしたな! おまえがくるのを首を長くして待ってたぜ』


ゆうねる

『俺は待ってない』


リーゼ@レイド参加よろしゅう!

『そんなつれないこというなよ相棒! レイド特攻武器漁りに行こうぜ』


ゆうねる

『同行料としてリアルマネー100万ほど頂こうか』


リーゼ@レイド参加よろしゅう!

『俺が出世して100万なんてポンとだせるようになるまで待ってくれ』


「……おまえじゃ一生無理だ」


俺は声に出して苦笑しつつ理人のキャラの後をついていった。



リーゼ@レイド参加よろしゅう!

『ちょっとまて! 今日の物欲センサー俺にだけ厳しくね!?』


ゆうねる

『日頃の行いだろ』


1時間ほど特定の敵を狩り続け、なぜか俺ばかり特攻武器が

腐るほどドロップしていた。


リーゼ@レイド参加よろしゅう!

『俺の物欲センサーはツンデレだしな、まったくしょうがないな』


ゆうねる

『負け惜しみ乙』


おそらく画面の向こうでは理人が地団駄を踏んでいることだろう


ゆうねる

『そんじゃ、ぼちぼち落ちる』


リーゼ@レイド参加よろしゅう!

『勝ち逃げか! そんなこと俺が許すとでも!?』


ゆうねる

『俺の代わりに夕飯の準備してくれるなら続けてもいいけど?』


リーゼ@レイド参加よろしゅう!

『おつー!』


即レスだった。

俺は小さくため息をつきながらゲームを終了させる。


「さてと……今日の夕飯はどうするか」


腕を伸ばすと関節あたりがバキバキと音を立てていた。

……大丈夫だよな、俺の体。




「冷蔵庫には……」


リビングに行き、夕食の準備のため冷蔵庫の中身を確認する。

いつもは深愛姉が作っているが、今日は遠くで撮影があり

帰りが遅くなると言っていたので、今日に限っては俺が作ることに


「ベーコンとネギ……ご飯もたっぷりあるからチャーハンでいいか」


献立が決まったので、炊飯器を開けて釜に適当に米を入れて

水で濯いでいった。



「ただいまぁ……なんかいい匂い〜」


炊飯器でご飯が炊き上がると同時に深愛姉がふらつきながら

リビングの中に入ってきた。


「……深愛姉おかえり」

「つかれたよ〜」


深愛姉は椅子に座り、テーブルの上でぐでっと倒れ込んでいた。

相当疲れてるみたいだな。


「そんなに疲れるなんて珍しいな」

「歩いたり、走ったり、色々やったんだよー……」

「……今日は海で撮影じゃなかったの?」

「ちがうよー……海は見える場所だけど室内だったんだよー!」


深愛姉の話では夏物の撮影だが、テーマが『夏に向けての運動』で、服装はジャージがメイン。

しかも、臨場感をだすために撮影場所の運動場で走ったり、縄跳びをしたり普段はしないことをやらされたようだ。


「海だっていうから楽しみにしてたのにー!」


深愛姉は子供のように頬を膨らませながらテーブルの上をバンバンと叩いていた。


「テーブルが壊れるから叩くな、もうすぐ夕飯できるからその前に風呂入れば?」

「そうする〜」


ふらふらになりながらも深愛姉は洗面所の方へ向かって歩いていった。




「お風呂入ってさっぱりしたらお腹すいたー!」


リビングのドアをバンと勢いよく開けて深愛姉が入ってきた。

……頼むからドアはゆっくりと開けて欲しいんだが


「出来てるからさっさと椅子に座る」

「はーい!」


俺と深愛姉のさらにチャーハンを装いスプーンと一緒にテーブルの上に置いていった。


「いただきます」

「いただきます!」





「ごちそうさまでした!」


2人同時に皿の上のチャーハンを平らげて手を合わせていた。

同時といっても量がまったく違うのは言うまでもない。


「ご飯作ってくれたんだし、洗い物はやろうか?」

「……いいよ、疲れているんだしやっとくよ。 テレビでも見てれば?」

「ありがとう〜」


深愛姉は立ち上がってソファの方へ向かっていった。



『明日から大型連休開始! 天気も崩れることもないので絶好の行楽日和です』


深愛姉がテレビをつけると報道番組の天気予報が流れていた。

そういえば明日から休みだったな。

かと言って、どこかに出かける予定など何もないが。


天気予報が終わると同時に報道番組がおわったようで

テレビからはのどかな音楽が流れていた。


『海を覗きながら見る路線旅!』


どうやら旅番組が始まったようだ。


ちょうどよく夕飯で使った食器が洗い終わったので

俺もテレビがある方へ向かっていく。


テレビでは旅番組でよくみかける2人の男性俳優が

海岸線と並行して走る電車に乗り、窓から海を見ていた。


『おぉー!これはいい眺めじゃない……ってアンタはなんで寝てるの!』

『しょうがないでしょ、朝早かったんだから』

『放送中なんだからそんなこと言わないの!』


テレビに映る2人の掛け合いをみて深愛姉が笑っていた。


「そういえば明日から連休だよね。 悠弥は予定はあるの?」

「ない。 たぶん引き籠もって終わりじゃない?」

「そっか〜」


深愛姉はテレビに釘付けになっていた。


「洗い物も終わったし風呂入ってくる」

「うん! いってらっしゃーい!」





「ふぅ……さっぱりした」


使ったバスタオルを洗濯機の中に入れて

洗濯機のスイッチを入れで自動で設定してまわす。


洗面所からでるとリビングから音が漏れていた。

どうやらまだ深愛姉はいるみたいだな……。


そのまま階段を上がり部屋に戻った俺は

PCの電源をつけてゲームを起動しようとしたが……


「悠弥! 入るよー!」


深愛ねえがいつもの如く、勢いよく俺の部屋のドアを開ける。

ってか疲れてるんじゃないの!?


「深愛姉、頼むからドアはゆっくりあけ——」

「——明日は何も予定ないよね?!」

「さっき言ったけど連休中は引き籠もる予定だ」


俺の言葉に深愛姉はニコッと笑顔で俺の顔を見ていた。

なんだろ、ものすごく嫌な予感しかしないんだが……


「それじゃさ! 明日海に行こうよ!」


はい、予感的中。

こう言う時は見事に予感を外して欲しいという俺の祈りは

天に届くことはない。


この後はもちろん最初は断ったが、毎度の如く言いくるめられて

承諾してしまうことになるのは言うまでもない。


==================================


【あとがき】


お読みいただき誠にありがとうございます。


2nd Seasonスタートしました!

また宜しくお願いいたします!!


次回は3/9(水)に投稿予定です


お楽しみに!


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

読者の皆様に作者から大切なお願いです。


「面白そう」

「続きが気になる」

「応援する」


などと少しでも思っていただけましたら、


【フォロー】や【★星評価】をしていただけますと大喜びします!


★ひとつでも、★★★みっつでも、

思った評価をいただけると嬉しいです!

最新話or目次下部の広告下にございますので、応援のほどよろしくお願いします

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る