Side Story
vol.1
「佐倉悠弥様でお間違いないでしょうか?」
ある土曜日の朝、荷物が届いたので玄関のドアを開けた。
届けられた荷物は大人1人が抱えるほどの大きさのダンボールが1つ
送り状の差出人をみると『佐倉 和彦』と書いてあり、備考欄には大きく天地無用!と書かれていた。
父親からか……何を送ってきたのやら
俺はため息をつきながら配達員に渡されたボールペンで受け取りのサインをする。
「ありがとうございます、またどうぞ宜しくお願いします」
配達員は軽く頭を下げるとそのまま入り口付近に停めてあった
軽トラックに向かっていった。
軽トラックが行ったことを確認して玄関を閉めて
ダンボールをリビングに運び、厳重に貼られたガムテープを剥がし中身を確認していく。
「……やっぱこれかよ」
ダンボールの中から出てきたのは気泡緩衝材、通称プチプチで丁寧に包まれたゲーム機と大量のソフトだった。
もちろんゲーム機と言ってもウイッチのような最新のものではなく
俺が産まれる前に出ていた所謂、レトロゲーム機だ。
俺の父親はこういうレトロゲーム機やソフトを集める趣味がある
昔からリサイクルショップを見つけては買ってくる。
……で、なぜかそれを俺に薦めようとしてくるからタチが悪い。
そのおかげで色んなゲームに触れることができたし
ゲーム好きの父親のおかげで最新ゲームや高スペックのPCに触れることが
できたのだから悪くはないんだけど……
プチプチを外そうとしていたところ俺のスマホが鳴り出した。
画面には父親の名前が表示されていた。
「もしもし?」
『悠弥か? ブツは届いているか!』
通話ボタンをタップするといつもよりも大きな父親の声が聞こえた。
……スマホを耳にあてなくてよかった。
ちなみに例のブツというのはいわずもがな、このレトロゲーム機セットだろう。
「さっき届いたよ」
『それはよかった。 深月さんに見つかった危うく捨てられかけてな』
「何でだよ?」
『本体だけで高スペックゲーミングPCが買える価格だったからな』
「は!?」
俺は声が裏返るほど大きな声を上げていた。
『ネットで見てもジャンク品しかなくて、たまたま行ったリサイクルショップにほぼ未使用品のもの見つけてな。そりゃ買うしかないだろ!』
「衝動買いで諭吉さんが何十枚も消えれば深月さんも怒るに決まってるだろ」
俺が呆れた声で答えるも、父親は豪快に笑っていた。
それからは父親は送ってきたゲーム機、『FXエンジン』への熱いを超え、暑苦しい思いを語り始めだしていた。
途中で何度通話終了ボタンをタップしようと思ったことか……
『その後にでたセイテンドーの次機種に敵わず廃れたんだけどな、楽しいゲームもあるから是非おまえもやってみてくれ!』
「わかった……」
『ってことで俺は仕事があるのでな! 深愛ちゃんと仲良くやるんだぞ!』
そう言って父親の方から通話を切っていった。
「はぁ……疲れた」
俺はソファに腰掛け、全体重を背もたれにかけていった。
「ただいまー! 悠弥起きてるー?」
リビングのドアを開けたのはもちろん白い春先のコートにジーパン姿の深愛姉。
そういえば、朝早くLIMEで撮影に行ってくると言ってたな。
「なにやってるの?」
「……父親の趣味に付き合わされてる」
何重にも梱包されたプチプチを解いていき、レトロゲーム機を
取り出して、テレビに映像ケーブルを取り付け、鈍器にもなりそうな電源ケーブルを挿す。
ダンボールに入っていたソフトの束から適当に1つ取り出してから本体に差し込み、電源ボタンを横にスライドさせる。
するとテレビにゲームの画面が映し出される。
壮大なBGMと共にロボットのような小型戦闘機が描かれたタイトル画面が表示される。
「なにこれ、ゲーム?」
「……そうだよ、俺らが産まれる前にでていたゲームだってさ」
俺の返答に深愛姉は不思議そうな顔をしていた。
仕方なく、俺は事の経緯を説明していく。
「カズさん、ゲーム好きだったんだ! なんか意外」
深愛姉は持っていたバッグを適当な場所に置き、ソファに座る
「悠弥、ちょっとやってみてよ!」
深愛姉はソファから身を乗り出してテレビを見ていた。
俺はコントローラーを持ってソファに座ろう……
と思っていたが、コントローラーのコードが短かかったのでその場に
座ることに。
コントローラーは十字キー、RUNと書かれたボタン、セレクトボタン、
あとはⅠとⅡと書かれたボタンがあった。
ウイッチと比べると随分少なく感じる。
そう思いながらも俺はRUNと書かれたボタンを押す。
タイトル画面からすぐにゲーム画面に変わり、プレイヤーである戦闘機が画面の上方に向かって進んでいく。
Ⅱボタンで撃ちながら出てくるアイテムを取りながらゲームは進み
ボスへと進むが、その間に何度もやられていったせいか次々と残機を減らし、ボスに着く頃には残機が底をつき、あっけなくやられてそのままゲームオーバーへ。
「……画像が荒いせいか見づらい」
俺は目を軽く擦りながら電源を切る。
「私もやっていい?」
「いいよ、ダンボールの中にソフトが大量にあるから」
「なんかよくわからないからこのゲームでいいよー」
俺は深愛姉にコントローラーを渡すと今度は俺がソファに座る。
「ふっふっふ、悠弥よりも先に進んじゃうよ!」
コントローラーを握った深愛姉は何故か正座姿で
不敵な笑みを浮かべていた。
「……頑張ってくれ」
「深愛ちゃんいきまーすっ!」
深愛姉はテレビを食いつくようにみながら
コントローラーのボタンを縦横無尽に押していった。
「目が疲れたし足が痺れたー!」
深愛姉は生まれたての子鹿のように足を震わせながら
ゆっくりと立ち上がってからソファに座ると同時に足を伸ばしていた。
ちなみに深愛姉は何度も挑戦していったがボスに近づく前に
ゲームオーバーとなっていた。
「目が疲れるのは仕方ないとして、何で正座なんかしてたんだよ……」
「気がついたら正座してた……」
俺は不思議そうに深愛姉の話を聞きながら
ゲーム機とソフトをしまっていく。
「あ、そういえばこの前、ママから私宛に届いた荷物があったんだった」
深愛姉はすぐに立ち上がるが、足の痺れが取れていないのか
今まで聞いた事のない叫び声を上げながらリビングの奥にある
クローゼットを開けていく。
すぐに持ってきたのは小さなダンボール。
宛先には深愛姉の名前が書いてあり、送り先には深月さんの名前が
書かれていた。
「届いてすぐに撮影に行っちゃったから忘れてたよ」
深愛姉はカッターナイフでガッチリと貼られたガムテームを切っていく
「何だろうな〜。 チョコとかクッキーならいいなあ」
「何で甘いもの限定なんだよ……」
ニコニコ顔の深愛姉がダンボールを開けた先には
ご希望のチョコでもなくクッキーでもなく、長方形サイズの本が何冊も入っていた。
表紙には見てるだけで甘ったるくなりそうなイラストが
いやまさかなぁ……
「これ、ママの好きな画集だ」
「え……?!」
俺が素っ頓狂な声をあげていると深愛姉は本を取り出して
ページを開いていく。
開いたページには細いタッチで描かれたいた。
ちなみに耽美な感じ男性が2人で
深愛姉にはまったく驚くところか、恥ずかしがる素振りを
見せないがもしかして……
「深愛姉もこういうのが好きだったり……?」
「そんなわけないでしょ! 私の周りでこれが理解できるのは琴葉だけだよ!」
俺は深愛姉が両手を勢いよく振りながら答えているのを見て
心の底から安堵の息をつく。
同時刻
遠い地にて……。
「お買い上げありがとうございました! 買取も受け付けていますので……」
チェーン展開する某リサイクルショップにて和彦と美月は
お互い、子供のように自分の好きなものを抱えて店の外にでていた。
和彦は大量のゲームカセット
深月は綺麗なタッチの男性2人が描かれた画集
「まさかレアソフトが見つかるとはな!」
「絶版になった画集があるなんて!」
2人はお互いのもった品を見ては呆れ、すぐに自分の持っている品を見て
はすぐに笑顔になっていた。
「「仕事がんばりますか!」」
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【あとがき】
おはこんばんちわ、数週間ぶりです。
綾瀬桂樹です。
お読みいただき誠にありがとうございます。
急におもいついたのでサイトストーリーとして
書いてみました。楽しんで頂けましたら幸いです。
サイドストーリーに関しては不定期ですが、
思い付いたら投稿していこうと思います。
そして朗報(?)になりますが
2nd Seasonを3/5(土)から随時、投稿することにしました!
それまでもうしばらくお待ち頂けければと思います!
何卒、宜しくお願い申し上げます。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
読者の皆様に作者から大切なお願いです。
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