第22話

 「37.5度。今日と明日は寝てないとダメだな」


お姫様抱っこで深愛姉を部屋のベッドに運び

体温計で熱を測ったところ、見事に風邪をひいてしまっていた。


「なんかあたまがぼーっとする……」


完全に熱にやられていた。


「薬と水持ってくるから寝てなよ」

「はーい」



リビングで薬箱から風邪薬を取り出し、深愛姉が普段使っている

タンブラーに水を淹れて部屋に戻る。


「薬持ってきたから飲んで、水もたくさん飲みように」


体を起こした深愛姉は俺の言う通りに薬を口の中に入れて

タンブラーの水を飲んでいった。


「ゆうやー」

「どうしたんだ?」

「苦いんだけどー」

「そりゃ薬だからな……」

「甘い薬がいいー」

「そんなものあるわけないだろ」

「チョコが薬になればいいのに」

「変なこと言ってないで寝る……」

「はぁい」


深愛姉は素直に体を倒して目を瞑っていた。

暫くすると薬が効いてきたせいかすぐに熟睡していた。


ここにいてもやることはないので、自分の部屋に戻ることにした。





「もうこんな時間かよ」


部屋に戻りいつものようにゲームをしていた。

ふと気になって外を見ると真っ暗になっており、時計を見るといつもなら

夕飯を食べている時間だった。


「様子見に行くか」


ゲームのチャットで「離席なう」と一言だけ入力して部屋をでた。


「深愛姉入るよ」


ノックするが返事がなかったので、一言だけ言って部屋の中に入る。

ベッドを見ると先ほどと同じように深愛姉は寝ていた。

額に手をあてると、先ほどではないがまだ熱かった。


夕飯の準備をするために部屋を出ようとすると


「あれ……悠弥?」


後ろから声をかけられた。

どうやら起こしてしまったようだ。


「起こしちゃったか……」

「大丈夫だよー」


部屋の電気をつけて座布団があったのでそれに座る。


「体の具合はどう?」

「まだフラフラするけど、さっきよりは楽だよー」


風邪薬の効果があったのか、下がってきているようだ。


「それならずっと寝てれば明日には治ってるかもな」

「うん!」

「それよりお腹は?」


いつもなら夕飯を食べてる時間なので空いてるとは思うが…

深愛姉は自分のお腹に手をあげながら


「言われたら空いてきたかも」

「わかった、今から作るよ」

「あとデザートも!」

「……贅沢な病人だな」

「こう言う時しか我儘いえないじゃん」


いつも言ってるような気がするが……

口に出したら倍以上の言葉で返ってきそうなので黙っておいた。


「適当に作ったらまた来るから」

「はーい!」


さてと、お粥ってどうやって作るんだっけか……



「鍋に炊いたご飯と水を入れて……」


スマホ片手に料理サイトで書いてあることをやっていく。


「最初は強火のあとは弱火でコトコトと……」


書いてある通りの手順をふむこと数十分

鍋の中でとろとろになったお粥が出来上がった。


「たしか冷蔵庫に梅干しがあったはず…」


小皿に梅干しを2〜3個いれてはい完成。

我ながらうまくいったんじゃないだろうか。


「……食べるのは俺じゃなくて深愛姉だけどな」


お盆に乗せて腹を空かせた姉が待つ部屋へ


「入るよ」


体全体を使ってドアを開き、部屋の中へ入っていく。


「もう出来たの?」

「お粥だしな」


深愛姉はベッドで横になってスマホを見ていたが

俺が部屋に入ると体を起こす。


お盆をベッドの横にあるサイドテーブルに置き

お粥とレンゲを渡そうとするが


「……何やってんだ」


深愛姉は目を瞑って口を開けていた。

その光景は餌を待つ雛鳥のよう……


「悠弥があーんしてくれるのかと思ったんだけど?」


訂正しよう。

雛鳥そのままだった。


「……そんなことしなくても食べれるだろ」

「やーだー! たべさせてー」


最近幼児退行が多くないかこの姉……


「わかったよ……」


目の前でため息をつきながらレンゲで適量のお粥を掬い

深愛姉の口の中に運んで行く。


「あふいへほ、おいひー」

「飲み込んでから喋ろうな……」

「ふぁーい」


すぐに口の中のお粥を飲み込んでいった。


「熱いけどおいしいー」

「そりゃよかった……」


小皿にある梅干しをお粥の上にのせ、レンゲを使って

梅肉をほぐしながら種をとっていく。


種をとったらお粥と梅肉を混ぜ合わせたものをレンゲで掬い

またもや口をあけて待っている深愛姉の元へ


「ううー!!」


口の中に運んだ途端に酸っぱそうな表情をしていた。


少しして口の中のものを飲み込むと目を開けて


「熱いし! 酸っぱいし! 涙がでちゃったよ!」


酸っぱいだけではなく色々あったようだ。



いつもの倍以上時間かかったが無事に完食。

風邪薬を飲ませて、部屋に戻ろうとするが、またもや裾を引っ張られた


「……一応聞くけどなに?」

「寝るまで一緒にいてほしいなあって」


さすがに風邪ひいてるから一緒に寝ろとは言わなかっただけマシか……


「色々済ませたらな……風呂にも入ってないし」

「うん! 早く済ませてね!」



残ったお粥を食べてから使った食器や鍋を洗い、その後は風呂に入って

洗濯機をつけて……残っていた家事を一通りやってから

今日で何度行ったかわからない姉の部屋へ。


「入るよ……」

「いいよー」


部屋の中に入ると深愛姉はベッドで横になっており

目がトロンとしていた。

……ってかそろそろ寝るんじゃないか?


「俺のことは気にしなくていいから眠くなったら寝なよ」

「悠弥といたいから頑張るー」

「頑張るな」


短くツッコミをいれると深愛姉は笑っていた。


「そういえば、もうすぐ新学期だね」

「……そうだな」


「あーあ……高校生活も終わっちゃうんだ」

「そっか3年か、卒業したらどうするんだ?」

「もちろん大学に行くよ! 附属大だからそのまま進学できちゃうし」

「そりゃ羨ましい限りで」

「うん! だから今年もいっぱい遊ぼうって思ってるの!」


今のは受験生のセリフじゃないよな……


来年の今頃俺はそれで悩まないといけないというのに

まあ、高レベルなど求めてないから推薦とかであっさり決まってくれれば嬉しいんだが……。


「悠弥は、2年生になったら何かしたいことあるの?」

「全然」


とりあえず何事もなく、平穏無事に過ごせればいいと思ってる


「2年生になればクラス替えもあるし、もしかしたら可愛い女の子がいるかもしれないじゃん!」


なぜか深愛姉は若干興奮気味になっていた。


「悠弥もその子のことが気になってー」

「ないわー」

「もう! すぐに否定しなくてもいいじゃん!」


あるわけもないし、自分から好き好んでそういうことに

持っていこうとも思っていない。


「琴葉も言っていたけど、悠弥は普通にしてたら絶対に女の子にモテると思うんだよねー」

「まったくまるでいつもは普通じゃないみたいな言い方だな」

「だって悠弥ってすぐ1人になろうとするし、女の子に全然優しくないじゃん!」


……普通ってなんだろうな


「そんじゃ俺が彼女できたらどうするんだ?」

「もちろん応援するよ! むしろ悠弥の彼女さんなら仲良くなれるかも!」


こう言ったが作る気など毛頭ない。


「いいのか? そうなったら今みたいに深愛姉に付きっきりになるなんてできなくなるぞ」

「えー! やだあ!」


仲良くなるんじゃないのか……


「うぅ……でも悠弥が幸せなら我慢するしかないのかな」


深愛姉は布団を頭からかぶって今にも泣きそうな声で呟いていた。


俺は思わず笑い出してしまう。


「……安心しろ、彼女など作る気なんかないから」


答えるも反応が返ってくることはなかった。


「深愛姉?」


少し布団を開けて見ると寝息を立てて寝てしまっていた。

先ほど飲んだ薬が効いてきたようだ。


「まったく……まあいいや」


立ち上がると足音を立てないようにして部屋の電気を消すと

深愛姉の部屋を後にした。


部屋に戻り、時計を見るともうすぐ日付が変わりそうな時間だった。


「……今日は寝るか」






「うぅーん! なんかきもちいいー!」


今日はやけに目覚めがよかった。

体を起こして腕を伸ばす。


「そっか、昨日ほとんど寝てたんだっけ」


ベッドから降りて、テーブルの上に置きっぱなしになっていた

銃のような形の体温計で体温を測ると36.0と表示された。


38度あった熱も平熱に下がっていた。


「そうだ、悠弥に報告しないと!」


念のため、パーカーを着て部屋をでて隣の部屋へ


「悠弥はいるよー」


返事はないけど大丈夫だろう。


部屋に入ると定位置である机に悠弥の姿はなく

ベッドでまだ寝ていた。


こんな時間だしね……


学校でもない限り、悠弥がこの時間に起きてることはほとんどない


そのほうがいいんだけどね……


ゆっくりと弟が眠るベッドに近づくとその場に座り


彼の頭を撫でていた。


「昨日はありがとう。 今日はゆっくり休んでね」


一言だけ告げて部屋からでた。


「さてと、今日はどうしようかなー」


一応病み上がりだから外出はしないほうがいいから


「うん、今日は悠弥とウイッチで遊ぼう!」


それじゃ悠弥が起きたらすぐに遊べるように朝ごはん作ってあげちゃおう!


「早く悠弥起きないかなー」



==================================


【あとがき】

▶当作はカクヨムコンに参加中です!!


お読みいただき誠にありがとうございます。


読者の皆様に作者から大切なお願いです。


「面白そう」

「続きが気になる」

「応援する」


などと少しでも思っていただけましたら、


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