第21話

 「やっぱり家の中にいる」

「だーめ!」


深愛姉に連れられて外にでるとそこは極寒の地だった。

辺りは一面真っ白に雪化粧をされており。

さらにまだ上塗りをするかの如く雪が降り続いていた。


しかも何か風も吹いてるし、マジで寒い……


「いや無理、凍死するだろこれ」


我慢できなくなったので家の中に入ろうとすると


「悠弥こっちむいてー」


何も考えずに素直に振り向くと……


クシャッと音と一緒に俺の顔全体が何かを覆っていた。


手で顔に触れると白い粉状のものがくっついていた。


どうみても雪だ。どっから来たものかというと


奥の方でボールを投げ切ったポーズをしている

深愛姉からである。


「やったね!」


その時、俺の中でスイッチが切り替わっていた。


こっそりと雪をかき集めると早足で深愛姉に近づく


「ちょっと悠弥こわいー!」


逃げようとするが雪に足をとられてうまく動くことができないようで

すぐに俺に追いつかれてしまう。


「ちょ……! 悠弥がものすごく悪い顔してるー!」

「深愛姉わかってるよな……?」


そういうと俺は先ほどかき集めた雪玉を深愛姉の顔に押し付けた。


「わぷっ……!」


必死に両手を使って顔についた雪を払う深愛姉


「やられたら倍返しが佐倉家のモットーだ!」


もちろんそんなものはない。とりあえず思いついたことを言っただけだ。


「へえ・・・それは初めて聞いたなあ」


顔についた雪を払い終わると深愛姉はしゃがみこみ

雪玉を作っていく。


「それなら私は2乗倍返しー!!!!」


雪玉を作っては投げ、作っては投げてを繰り返していた。


「言ってることがめちゃくちゃだろ……」




突如始まった雪合戦は互いの疲労によって終焉を迎えた。


俺は雪の上に座り、体を休めていたが……


「うん! 下はこれぐらいでいいかな!」


深愛姉は大きな雪玉を作っていた。


あれだけはしゃぎ回っていたのにまだ元気が残ってるのかよ


さらにもうひとつの雪玉を作り、先ほど作った雪玉の上に乗せる


「佐倉家の雪だるまの完成ー!」


深愛姉は一人で喜んでいた。


「……ずいぶん寂しい雪だるまだな」


目もなければ鼻もない、そもそも前なのか後ろなのかさえも

わからなかった。


「のっぺらぼうの雪だるまとかどう?」

「……うちに妖怪なんか置かないでくれ」

「もう、悠弥はわがままなんだからー!」


そう言って深愛姉は上の雪玉に指で何かを描き出した。


「うん、これなら可愛いでしょ?」


雪玉に描かれたのは・・・ハートの目に分厚い唇だった

頬には星が描かれていた。


「……地球外生物?」

「ちゃんとした地球製だよ!」


深愛姉は頬を膨らませて怒っていた。


「そうだ! せっかくだから写メ撮ろうよ」


ウェアのポケットからスマホを取り出していた。


「この雪だるまちゃんが真ん中で両脇に立って!」


言われるがままに雪だるまを挟む形で立つ


「それじゃいくよー! はいチーズ!」


深愛姉のスマホからカシャっと音が鳴ると同時に


画面に写真が映し出される。


深愛姉は相変わらずのギャル特有のポーズで俺は無表情そのままだった。


「うん、よく撮れてるよー」

「……そうなのか?」


何回か撮られているが何がいいのか俺にはさっぱり理解できなかった。


「楽しかったー!」

「……俺はもうごめん被りたい」

「とか言って、悠弥はしゃいでたじゃん」


地球外雪だるまを作った後も、壮絶な雪合戦が幕を開けたり

流れでもう一体雪だるまを作ったり(深愛姉は雪だる男と命名)していたが

流石に汗による体が冷えてきたので、家の中に退散することに


外にいるときもリビングのエアコンをつけっぱなしにしていたせいか

リビングは心地よい暖かさに包まれていた。


俺はコーヒーメーカーで淹れたコーヒー

深愛姉はTパックの紅茶を淹れてダイニングテーブルでくつろいでいた。


「やっぱり部屋が一番……」

「もう、悠弥は家にいることしか……くしゅん!」


話している途中で深愛姉はくしゃみを繰り返していた。


「まさか風邪ひいた?」

「そんなことないよー」


そう言いつつもくしゃみを繰り返す深愛姉


「風呂沸かすから、入って体暖めなよ」


すぐにお湯張りのスイッチを押し……


「あと首元これで暖めなよ」


つけていたネックウォーマーをとり、深愛姉に被せる。


「ありがとう! あったかーい……」



20分ほどしてお湯張りが終わったことを深愛姉に知らせると

すぐに洗面所に向かっていた。


「あ、一緒に入る?」

「……くだらないこと言ってないでさっさと入れ」

「はーい!」


洗面所のドアが閉まる音が聞こえると俺は自然とため息がでていた。

……無防備にもほどがあるだろ。




「さっぱりしたー」


リビングで遅めの昼食を作っていると深愛姉が戻ってきていた。

白のパーカーに下は黒のジャージと、今まで見た中で一番地味な格好だった。


「何作ってるの?」


横から顔をヒョコッとだして鍋の中を除く深愛姉

……シャンプーの匂いが鼻の中を心地よくすり抜けていった。


「ワンタンスープ」

「……そういえばこの前安かったからワンタン買ったの忘れてたよ」


それに合わせてスープの元も買っていた。

冷蔵庫にあった野菜を適当に切って鍋の中に入れていった。


スープの元を使ってるからダークマターはできないだろ

……たぶん。


「そうだ、これ返すよー」


深愛姉はネックウォーマーを被せてきた。

よく見たら、俺のものだった。

何かかすかにいい匂いがしていた。



「よし、できた」

「それじゃスープボウルだすねー」

「いいよ、座ってなよ」

「だってどこにあるか知らないでしょ?」


……たしかに言われてみればそうだ。


深愛姉が持ってきたスープボウルにワンタンスープを装い

食べていく。


「そういえば前から思ってたんだけどさ」

「……なに?」

「悠弥って料理上手だよね」

「……そう?」

「うん、この前の焼きそばも美味しかったし」


いや、あれ普通に市販のやつを焼いただけなんだけど?


「いいなあ、悠弥の彼女になる人が羨ましいなあ」


今まで言われることがなかったので俺はむせかえっていた。


「ど、どうしたの?」


俺は慌ててウォーターサーバーから水を汲んで

一気に飲み干す。


「深愛姉が変なこと言うからだ」

「変なことじゃないよ! 思った通りのことを言ったんだよー」


勘弁してくれ……



「ごちそうさまでしたー」


2人揃ってワンタンスープを完食

ってか深愛姉が全部食べるなんて珍しいな

珍しく体動かしたから腹が減っていたのだろうか……


使った食器と鍋を洗っていくが……

外が冷え冷えとしているせいか、水道から流れてくる水が氷のように

冷たかった。


お湯に切り替えるために給湯器のスイッチを入れ

ふと、後ろを向くと深愛姉がテーブルの上に突っ伏して寝ていた。


「深愛姉、寝るならベッドで……」


だが、よく見ると呼吸が荒く聞こえた。


「深愛姉?」


「……うん?」


「ちょっとごめん……」


自分の手を深愛姉の額にあてると熱いような気がした。


「大丈夫?」

「なんか頭がぐわんぐわんするー」


どうやら風邪ひいたようだ。

さきほどのくしゃみは前兆だったようだ。


「完璧な風邪だな……まったく」


とりあえず部屋で休ませないと……


「部屋でゆっくり寝てなよ」


「だっこー」


と、魔の抜けた声で俺に全体重を預けてきた。


「……マジかよ」


ってか軽く寝てるし


「しょうがない……」


両手で深愛姉の体を抱き抱えてゆっくりと部屋まで

送り届けることに。


……何で2日連日でお姫様だっこしているんだ

義理とはいえ、姉に。


==================================


【あとがき】

▶当作はカクヨムコンに参加中です!!


お読みいただき誠にありがとうございます。


読者の皆様に作者から大切なお願いです。


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「続きが気になる」

「応援する」


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