第18話
「おっす悠弥、わざわざ来てもらって悪いな」
「呼んでおいて遅れるとはいい身分だな」
「そう言うなよ、俺とおまえの仲だろ?」
3月に入ったある日の昼下がり。
遅れたことに悪びれる様子もなく薄ら笑いを浮かべて来たのは
クラスメイトであり中学からの腐れ縁である香取理人(かとり りひと)
昨日の夜にLIMEで連絡が入り、重要な話があると言ってきた。
ここ最近、バイクを走らせてなかったため、それを兼ねて自分の住んでいるところから1時間かけて理人が指定してきたファミレスに来ていた。
ちなみに深愛姉は朝から出かけているようで
俺が起きた時には家にはいなかった。
「もう最悪だったぜ、おかげで休みの予定が狂いまくり!」
「テストで赤点なんか取る方が悪い」
「おいおいお前は俺の味方じゃなかったのかよ?」
「何でも肯定するのが味方じゃないんだよ」
俺と向かい合うように座った理人はメニューを開く。
茶髪のストレートヘアに白のシャツ姿の理人は
黙っていれば女子人気がある男なんだが
「で、休みのうちにどこまでレベルあがったよ?」
……だいたい話す内容がゲームのことばかりなので
クラスの女子から煙たがられている。
そんな本人曰く……
「ゲームの良さを知らない女に興味もなければ抱きたくもねーよ」
とのこと
「俺は決まったけど悠弥はどうする?」
「マルゲリータピザとドリンクバー」
「おまえホントそればっかだな」
理人はケラケラと笑いながらも呼び出しボタンを押して
スタッフに注文していく。
「で、話って何だ?」
ドリンクバーでとってきた飲み物を飲みながら理人に話を切り出した。
「オフ会やりたいんだけどさ」
「またか……」
普通の感覚でオフ会と言えば、ネット上で知り合った人が
リアル(現実)で会うことをさすが、こいつの言うオフ会とは
速い話が合コンなのである。
「聞いてくれよ、この前夜中にインした時に、たまたま居合わせた人とパーティ組んだんだけどさ」
「……どうせ中身が女だったって言うんだろ」
「そうだよ! ノリでビデオ通話したらしかもめちゃくちゃ美人!
そのくせキャラがガチムチキャラなんだぜ、マージでビックリしたぜ」
そもそも俺や理人がやっているゲームはライトな雰囲気があるため
女性ユーザーが多いと言われている。
なぜかこいつはネットゲームで女性プレイヤーと出くわすことが多いのである。
「しかも今、初心者救済キャンペーンやってるせいか初心者ユーザーが多いじゃん?」
「初心者とか復帰ユーザーと一緒にパーティ組むと報酬がもらえるっていうやつか」
ちなみに俺はパーティは組まず1人でプレイしているのでそのキャンペーンの恩恵はまったくと言っていいほどない。
「だから初心者ユーザー積極的に助けているんだけどさ、助けたのがほとんど女性ユーザーでいやあ、俺のモテ期到来か!」
「そりゃよかったことで」
「で、オフ会に話を戻すんだけど、もちろん悠弥も参加するよな?」
「何で参加すること前提で話してんだ?」
俺の返しに理人はわざとらしい驚きの声をあげていた。
「前はあんなに喜んで参加してくれてたのに……」
「1回だけだろ……」
毎回断っていたが、その時だけはコイツがどうしてもと
当時最強クラスにあった武器を格安で売ってくれたので
仕方なく参加したのである
ちなみにその武器は運営の調整が入り今では使い物になっていない
「ほら、俺ら高校2年になるだろ? そろそろ彼女とか欲しいじゃん」
「俺は欲しいとは思ってないが?」
「おーい心の友よ! そんなつれないこと言わないでくれよ」
理人はアニメにでてくるガキ大将が言ってきそうな台詞を言いながら
俺の目の前で手をあわせていた。
「この通り! 俺を! 男にしてくだせえ!」
どっかで聞いたことある任侠映画の登場人物のようなことを言い始めていた。
しかも大声で言うからなんか周りの視線を感じるんだが……
「どうしたんだ? いつもは平然としてるくせに」
「聞いてくれよ、俺の心の悲痛の叫びを」
こいつのことだ、どうせ下らない理由なんだろう
「ってことなんだよ、わかってくれたか!」
20分かけて理人の説明を聞いていたが、思った通りくだらなすぎて
共感するところなど微塵もなかった。
「つまり、女とは無縁だと思っていたクラスメイトに彼女がいた。
しかもそれが可愛いかった……って認識でいいか」
「さすがは心の友! 理解力が早くて助かるぜ」
俺は注文したピザを食べながら心底呆れていた。
「だからさ、オフ会やってお互いに彼女つくって、新学期からはスクールカーストの上位に立とうぜ!」
おまえ、今までスクールカーストとか全く気にしたことなかっただろ……
「俺は興味ないのでやりたければおまえ1人でやってくれ」
「マジかよー」
理人はガックリと肩を落としてテーブルの上に突っ伏していた。
「お待たせしました! ダブルチーズハンバーグライス大盛りセットです」
店のスタッフが注文した料理が運んできたが、理人が動く様子がなかった。
「このへんで大丈夫です」
仕方なく俺が料理の置く場所を指定することに
「さっさと食べないと冷めるぞ……」
「うえーい」
理人は拍子抜けした声を出しながら顔を上げて
注文した料理を自分の目の前に移動させた。
「ってかさぁ?」
「食べながら話すなよ……」
俺が注意すると理人はブツブツいいながらも口に入っていたものを
勢いよく飲み込んでいった。
「おまえ、オカンみたいって言われるだろ」
「……言ったのはお前だけだよ、しかも今」
「やった第一号だぜ!」
「おめでとう」
「ってこんなこと言いたいわけじゃないんだよ!」
理人は飲み物を飲むと俺の方をジッと見る。
「おまえもそろそろ新しい彼女作ってもいいんじゃね?」
理人の言葉に俺は盛大なため息をつく。
「……理人、飲み物どうする?」
「え? あー……果汁100%オレンジで!」
「わかった」
俺は自分のと理人のコップを持ってドリンクバーコーナーへ向かっていった。
「って、逃げやがった!」
悔しそうな理人の声が聞こえたが、聞こえないふりをして
ドリンクをコップに注いでいった。
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【あとがき】
▶当作はカクヨムコンに参加中です!!
お読みいただき誠にありがとうございます。
読者の皆様に作者から大切なお願いです。
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