第7話

 「悠弥いるー?」


勢いよく俺の部屋のドアをあけたのはもちろん深愛だ

頼むからノックぐらいしてほしいんだが……


「人の部屋に入る時はノックぐらいしてくれ」


朝からゲームをぶっ続けてしていて目が疲れたので

少し寝ようとベッドに突っ伏したところだった


相手をしないとうるさくなるので不機嫌な顔をしつつ

体を起こす。


「じゃーん! 買っちゃった!」


そう言って深愛が勢いよく見せてきたのは据え置きにも

ポータブルタイプにもなるゲーム機『セイテンドーウイッチ』

しかも最近になってリニューアルしたバージョンのものだった


そういえば父親が古いバージョンを買って

忙しくて遊んでる暇がないとかで貰ったことを思い出した。

……ほとんど起動してないけど。


「あっそ、よかったね」

「うん!」


適当に流してベッドに倒れ込もうとしたが……


「それでさ、セットアップがよくわからないから手伝ってくれない?」


「説明書みればわかるだろ……」

「さっき見たけどよくわからなかったの!」


俺はため息をつきながら深愛からウイッチを受け取り

電源をつけるとセットアップ画面が起動した。

さっさと終わらせて部屋から出て行ってもらおう。


「自分の名前登録できるけどなんて入れる?」

「ひらがなで『みお』でいいよ」


次はアイコンの選択画面へ


「この中から好きなアイコンを選んで」


ウイッチを深愛に返す。


「どれにしようかなー……。 あ!この子CMで見たやつだ! この子にしよう!」


深愛が勢いよくボタンを押す。


「なんかwifiのパスワード入力してくれだって」


「入れるから貸して」


再びウイッチが手渡される。


自分のスマホのメモアプリを見ながら無線LANのパスワードを入力していく


接続テストが始まり、無事に繋がることができると

ホーム画面に移動した。


設定画面で本体の更新を行ってからウイッチを深愛に返した。


「更新終わったら再起動してホーム画面にいくから、あとはご自由に」

「うん、ありがとう!」


深愛はニコニコしながらウイッチの画面をみていた。


俺は再びベッドに倒れ込み目を瞑ると

目を酷使していたためかすぐに夢の世界に旅立った。



聞き覚えのある音楽が部屋に鳴り響いていた。

それに反応して目を覚ます。


スマホのアラームで設定したBGMだった。

寝ぼけながらもスマホをタップしてアラームを解除して

ゆっくりと体を起こす。


「夕方前か……」

1人で呟きながらベッドから降りる。


喉が乾いていたため階段を降りてリビングに行くと

ソファで体育座りをしている深愛がウイッチの画面を食いつくようにみていた。


画面にはプレイヤーらしきキャラクターがスコップを持って

走っている姿が見えた。

CMでも見かける島開拓ゲームのようだった。


「あれ、悠弥起きてたんだ?」


飲み物をとってそのままリビングから出ようと思ったが

気づかれてしまう。


「そういえばさっき、ママとカズさんにウイッチ買ったこと話したら

『悠弥も持ってるから一緒に遊んだらどうだ?』ってカズさんが言ってたよ」


何で余計なことを言うんだあの父親は……


「だから?」


この後のセリフも容易に想像できるが念のため聞くことに


「一緒に遊ぼ?」


想像通りのセリフが返ってきた。

もちろん俺は……


「忙しいから無理」


そう言うと飲み物をとって部屋に戻っていった。

後ろから「いいじゃーん!」とか「むぅ〜!」とか聞こえた気がするが

聞こえなかったフリをしたのは言うまでもない。



部屋に戻りゲームを起動させると……

ゲームのキャラが謝っている画面が表示されていた。


テキストには……

『不具合が見つかったため緊急メンテを行います』

と書かれていた。


「……マジかよ」


いつもなら終了予定時刻が掲載されているが

今回に限っては未定と書かれていた。


これまでの経験上、未定と書かれた時は

1時間や2時間で終わることがない。


おそらく今日は起動することができないだろう……


ため息をつきながら俺はPCをシャットダウンさせた。


今日は寝るまでゲームをやってようと思っていたので

急に暇になってしまった。


不貞寝しようにもさっきまで寝ていたので

寝ることもできず、見たい漫画があるわけでもなかった。


「どうするかな……」


暇潰しの物を探していると、目についたのは机の上で

無造作に置かれていたウイッチ。


手にとって電源をつけると充電は数パーセント残っており

ホーム画面には深愛がやっていたゲームが表示されていた。


「……暇潰しにはちょうどいいか」


深いため息をつきながらウイッチ本体を持ってリビングに向かうことにした。

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