第19話 覚醒
まずは以前のことから言うと、お互いが素肌を接触させることで、傷は癒えるはず……。
そう思っていた。
しかし、顔色は良くなりつつあったが、夜蜘蛛にやられた傷……毒素の黒い紋様は、相変わらず小さくなる気配がない。
「どうすれば、毒素が抜けるの?」
私は依然として状況が改善されない今に、焦りを感じていた。
そもそもこの毒素は何なのだろうか……。
「これって吸い出したりできないんだろうか……」
私は毒蛇にやられた時に噛まれたところを吸い出す方法を思い出した。
とはいえ、あれは毒蛇だから何とかなるものの、今回のは使役霊でそう簡単に吸い出せるか分からない……。
それに自分にはそんな力はないんだけれど……。
「あ、そういえば、私は翔和に乗り移ったときのようにその逆もまたできるかもしれない!」
つまり、私は以前、翔和の身体を乗っ取ったように、私の霊体を何でもいいから、血の吸い出せるような
プロミスは私とタナトスの恥ずかしい情事を遠くから見守ってくれているはず(あー、恥ずかしい!)だから、お願いすれば何とかなるかも……。
私は祈るような思いで、
「プロミスさん、私の霊体を何か血を吸い出せるような
返事などあるわけもない。
が、瞬時に私は恐怖を背中に感じる。
大いなる存在が私の背後にいる……。
「何じゃ……、妾を読んだのはお前か?」
「……ひぃ……」
私は恐怖のあまり、小さく悲鳴を上げて、背後をそっと見てみる。
そこには、淫靡な今にも胸が零れ落ちそうなエナメル衣装……。そうだ! これSMのお嬢様みたいな恰好だ!
腰まで伸びるピンク色のロングヘアーに頭には両サイドに伸びるように角が生えている。
下腹部には淫紋が描かれ、後ろからは尻尾が覗いている。
「サキュバス!?」
「これこれ、妾をそのような低俗なものと一緒にするではない。妾は
中途半端なおっぱいですって!?
私だって小さくなりたくてこうなったんじゃないもの!
そりゃ、友理奈みたいに大きいおっぱいのほうが母性本能が溢れていて、いいかもしれないけれど、こんなおっぱいでも、タ、タナトスは喜んでくれてるんだもん!
「で? おやおや、ここにいるのはタナトスではないか……。なるほど、天界で話題になっている奴隷関係を結んだというのはお前のことか?」
は? ど、奴隷関係ですって!?
私とタナトスはそう言う関係ではないんだから!
「妾の身体を貸してやっても良いぞ。その代わり、お前の身体を使って、タナトスと交配をさせてもらうがな」
「こ、交配!?」
「当り前じゃ。何かをしてもらいたければ、それなりの対価が必要になろうて……。だから、妾は不本意ではあるが、その出来損ないの身体を借りて、タナトスからエネルギーを頂戴したいと言っておるのじゃ」
「た、単に性欲をみたいとかじゃないのね?」
「んふふ♡ そうじゃな……。元カレのタナトスを抱けるとあらば、それはそれでありじゃな……」
「も、元カレ!?」
「なんじゃ、コイツから何も聞いておらぬのか?
私はコクリと頷く。
すると、美夢はニヤリと意地悪な笑みを浮かべながら、
「キス、エロかったじゃろ? それに指使いも? お前など瞬間に夢見心地で意識が飛んでしもうたのではないか?」
私はそこで同意はしたくなかったが、思い出してしまい顔を真っ赤にしてしまう。
美夢に頬をぷにぷにと指されて、
「そうであろう……。此奴の前戯は妾ですら虜にするようなものであったからなぁ……。で、もう交配はし終えたのか?」
「……そ、そんなのあなたに関係ないじゃないですか!!」
「関係ないことはないであろう。だって、このあと、妾がしてしもうたら、お前の身体のタナトスとの初体験は妾が味わってしまうのじゃぞ?」
「あー、別に私、ヴァージンじゃないんで!」
「いや、そういう言う問題ではないんじゃがな……。まあ、良いわ……。久々に此奴のもので貫かれるのも良いな……。妾の能力を貸してやろうぞ」
ちょ、ちょっと!? 何か、さっき凄いこと言わなかった!?
突然、私の中に流れ込んでくるサキュバスの力……!
私の身体は黒い霧に包まれるようになりながら、美夢が一つとなった。
『ほ、ほう……。これが霊体というものか……。かなり脆いものじゃのう……』
「入って来て早々なかなかいいますね……」
『まあ、妾は自由気ままが取り柄なんでな! さてと、ではさっそく毒素を抜くとするかの……』
「何をすればいいの? 胸の傷口に吸い付くとか?」
『何を言っておるか……。妾はサキュバスじゃぞ? ヌくといえば――』
美夢は私の霊体を操り、右手の人差し指を私の口を指し、
『吸い取るに決まっておろう』
「……え゛……」
私は絶句するしかなかった。
ああ、どうして吸血鬼を寄越してくれなかったんだ……プロミス!
絶対に恨んでやる! 絶対に遊んでるとしか思えない!
私の気持ちとは裏腹に、霊体に憑依した美夢の心は喜んでいるのであった。
結論から申し上げますと、できればこれは今後、コンドームを付けた状態でさせていただきたい……。
どうして私の口でこんなことをさせられたというのだろうか……。
しかも、このエロサキュバスはその毒素を飲み込みやがったのだ。
別に憑依されているからと言って、感覚は私にも伝わってくるし、そもそも私の身体なんだよ!
けれども、憑依している者が自由に身体や霊体を扱うことが出来るのだ。
つまり、今、私に身体を操作する主導権はない。
だからってやっぱり嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……。
『うーん。美味ね!』
「トイレに行かせて~~~~~~!!!」
『あなた、本当にタナトスのお世話してあげてなかったんでしょ……。ちょっと濃すぎるわよ……』
「もう言わないで……。悲しみと恥ずかしさで死にたい……」
『大丈夫。もう、死んでるから……』
と、お決まりの一言を言われた私なのであった。
『でも、かなり良くはなったみたいね……。ホラ、紋様が薄くなってる』
「あ、ホントですね!」
『あと、もう一回すれば治りそうね』
「……え……。い、いや……、止めて欲しいんですけれど、あのヌメヌメした感覚は……」
『私は元カレのだからだ~い好き! てことで、やるわよ!』
「い、嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
私たちのアジトであるラブホテルの一室に私たちにしか聞こえない叫び声が木魂したのであった。
そして、その『作業』はすぐに終わることとなる。
さすがにサキュバスだ。技術が凄い……。
て、勉強していたわけじゃないんだからね!
私はそもそもこういうのはしたくはないんだから!
『では、お礼と言ってはなんだけれど、久々にさせてもらうわね』
「あ、やっぱりされるんですね……」
『当然じゃない! だって、こんなたくましいものを持っているのよ! これを見せられて疼かないサキュバスはいないって!』
いや、そんな宣言されても、私はそもそもサキュバスじゃないので、「うわー、あれ、私に入ってくんのかー」としか思えない。
『じゃあ、いただきま~~~~す♡』
「ひぐぅ!?!?!?」
経験値の低い私とタナトスはついに―――!!
痛みと同時に身体の奥底からの感覚が走って、私は思わず意識が飛びそうになってしまった。
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