第18話 困惑
もう、頭ン中がフワフワするぅ……♡
目の前に人差し指を出されて、私はそれに軽くキスをして、ちゅるりと吸い付く。
気持ちよさとともに身体の奥底から訪れようといている快感に私は抗えないでいた。
「……ハァハァ……ちょ、ちょっとタナトスさん……!?」
「どうした? 美琴……?」
「……ど、どうして日々そんなお上手に……?」
「いや、上手になっているというより相性がより深まっている」
「―――――!?」
何それ!?
そんなこと急に言うのは止めてよね! 私の身体が本能的に、嬉しくなっちゃうんだから!
だ、ダメよ! 私の身体! これはあくまでも霊力を共有するための儀式なんだから!
「――――――!?」
私は大きく痙攣しながら身体を仰け反らせる。
タナトスの大きな身体が私を支えるように受け止める。
に、逃げれないよぉ………。
くそぉ……、何だか腹が立つ!
私は事を終えた後、タナトスの方に向き、
「ねぇ……私ってさぁ……タナトスと……セ―――」
「いや、してないが……」
「え? いや、あの展開はしちゃった展開なのでは……!?」
「いや、本当にしていない……。だって、美琴は記憶を失っていたんだが……」
そ、そうだったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
私はタナトスに絶頂させられた後、全く記憶がない。
そもそも本当にタナトスを受け入れたのかすら怪しい……。
だって、記憶がないのだから……。
ど、どうしよう……。わ、私はエッチすることなく、パワーアップを果たしたという何ともはしたないだけの女だったのかぁ~~~~!!!
思わず顔を隠したくなった。
そっか……やってないんだ……私……。
何だか、安心できたような違う意味で不安になって来ちゃったような……。
「とにかく、俺は嘘をついていない。お前とは……その、交尾のような行為はしていない……」
あー、こうまで言われたら絶対にやってないね。
さすがに嘘ついてないわ……。じゃあ、私のあの焦りの時間は何だったのか!?
返してくれよ! 私のモヤモヤの時間を―――!!
色んな意味で自己嫌悪に陥った瞬間だった。
私はエッチの反動で疲労感が出てしまったのと同時に、自己嫌悪でベッドに突っ伏している。
まあ、エロ死神のタナトスくんはサクッと賢者タイムを終えて、もう次の行動をしているところ。
ねえ、もう少し、余韻ってものはないのかねぇ……。
何だか、私が悲しくなっちゃうんだけれど……。
「神林に憑いている守護霊が怪しい動きをしていないかを確認して来る」
「あ、うん。分かった……。あんまり深入りしちゃダメだよ。あれがコピーなのか本体なのか分かっていないんだから……」
「もちろん、そのくらいのことは承知の上だ。放っておくのはマズいからな……」
「あ、うん。まあ、そう言われたらそうだよね……。友理奈にも被害がでないわけではないかもしれないからね……」
「じゃあ、行ってくる」
「はーい。いってらっしゃーい」
私は軽くお仕事に行く旦那さんを見送るような感覚でタナトスを見送った。
別に翔和のことを軽く見ていたわけではない。侮っていたなんてありえない。
だからこそ、お互い注意を確認し合ったのだから……。
だが、数時間後、私の前に戻ってきた彼は瀕死の状態だった……。
「……ちょ、ちょっと!? タナトス!? 何がどうなっているの!?」
「……………うぐぅ!?」
いつもの余裕の表情ではなく、以前よりも増してひどい傷を負っている。
前回は私が何とか引きずるような思いをして、彼を救い出した。
今回は、私がいなかったことから、偶然、監視の目に入ったことで、天界の人間によって連れてこられた。
連れてきた人物も重傷を負っていて、こちらはタナトスを私のもとに届け終わると煙のように姿そのものが消えてしまった。
今となっては亡くなったのか、どこかに移動したのかすら分からない。
私はタナトスを布団に横にすると、ボロボロになった上着を脱がしていく。
何かしらの異変が起こっているのであれば、救出のために行動を起こさないといけない。
以前のタナトスのことから、私の直感がそう告げていた。
上着を脱がしたところで、身体に斑の模様が浮き上がっていることに気が付く。
「何よ、この紋様は……!?」
「……夜蜘蛛につけられたものだ……」
「……ひぃっ!? 誰ですか!?」
「ああ、私の名前はプロミスと言います。私は普段、あなたたちの行動をチェックしている、まあ監視役みたいなものですね。あなたのような霊体と死神の関係などをチェックして入力しているものです」
「え……、あれはAIがやってるって……」
「まあ、AIがすべて出来れば問題ないのですが、時にはあなたのように死神を恋愛感情を持って接するものもいるので、その場合は、私が手作業で入力のし直しをします」
「私がタナトスとエッチなことしなきゃいけなくなった元凶はあんたかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「ちょ、ちょっと!? なんて、人聞きの悪いことを!? 私はあなたの脳内でこのタナトスのことをどう考えているか確認したうえで、入力し直したんですよ!」
「プライバシーの権利はないんかー!!」
「いや、そもそも死人にプライバシーとか笑わせないでくださいよ」
「そう言う意味じゃなくて、普通に私が恥ずかしいだけでしょうが!」
「あー、美琴様が実はすでにタナトスにメス堕ちして、本当はセックスをしまくりたい欲望があるということとかですか?」
「……な、何言ってるの!? わ、私がそんなこと思うわけないじゃない!!」
「じゃあ、脳内の映像を見てみますか? 再現VTRのようにくっきりと見ることが出来ますよ!」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? 何すんのよ!? この変態!!」
「なっ!? 変態ですって!! 失礼ですよ! 私の様な上級役人を相手に、よくもまあ、そんなこと言えますね!」
「私はただ単にタナトスを助けたいだけよ!」
「あ、そうでしたね。忘れてました。ついつい、我の強い女を見てしまうと相手にしてしまいたくなるもので」
いや、最悪じゃん、その性格。絶対に治した方が良いよ。
てか、本当に私はタナトスを助けたいだけなんだから!
プロミスは装いを整えると、
「で、この紋様は先程申し上げた通り、夜蜘蛛によって負わされたものと考えられます。どうやら、毒のようのも見えますね……」
「え!? 夜蜘蛛って毒もってるの!? この間、倒した時は捕まえられてもそんなのに汚染されることはなかったのに……」
「まあ、それは以前に倒されたのがコピーで、今の方が本体ということだからでしょうね」
「あー、やっぱりそうなんだ……。てことは、今の方が断然強いってことか……」
「ええ。それに以前のような倒し方はもう無理でしょうね。夜蜘蛛にも学習されたことでしょうから」
「うわ。万事休すかよ~」
「まあ、まだ可能性はあります。とにかく今はタナトス様を助けた方が良いのではありませんか?」
「そ、そうね! で、どうすれば助かるの? 前みたいに身体全体での直接的な接触と化すれば、何とかなるの?」
「まあ、それで回復も可能かとは思いますが、お互いのレベルアップも図った方が良いかもしれません」
そこで、プロミスは私を値踏みするようにジロジロと全身を眺めた後、ニヤリと私に笑みを浮かべ、
「もう、最後のアレをするしかないのでは……?」
「え……。いや、私にも覚悟ってものが……」
「いえいえ、以前にされたように錯覚されていたではありませんか……。そもそも手淫で記憶飛ばしただけですが……」
うわぁ!!! 言うな!!! 恥ずかしいから言わないでー!!!
「や、やっぱりしなきゃダメなのかな?」
「ええ、あなた方が『恋愛関係』で登録されているのですから、最終手段はもちろん、セックスしかないと思います」
私はまさかその言葉をこんなにも神妙な面持ちで聞かなければならない状況が来るとは、想像すらすることもできなかった……。
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