『おまけつき』 下


せりにん


 『さあ、どうする。みなさん、どうにもならないか。なさそうかな。では、』



ポプリス


 『一万億超ドリミ。』



せりにん


 『きたあ。一万億超ドリミです。さあ、どうしますか。』



会場


 『…………………………』



せりにん


 『では、はい、落札しました。落札者は、あなた。お支払は、どのように?』



ポプリス


 『すでに、振り込まれたはずです。』




せりにん


 『ちょっとお待ちを。』 




謎の女性


 『ふふふん。くだらないなあ。』



せりにん


 『はい、確認できました。地球の所有権は、今の時点から、あなたに移ります。月も、同様です。』



ポプリス


 『ありがとう。さて、みなさん。あたくしとしては、いや、ド・カイヤ集団としては、地球との、正常な商売がしたい。そのほうが、もうかるからね。そのための政策を、このさき、実行したいと思います。』



会衆


 『がやがや、どやどや、ひそひそ。』




  ・・・・・▲▲▲▲▲・・・・・



 前独裁者は、偽の迎えのリムジンに乗せられ、異世界に運ばれた。



前地球独裁者


 『ここは、どこ? 美しい町だが。』




ヘレナリア


 『ここは、惑星ヘレナリア。あなた方の宇宙とは、存在の根拠が違う宇宙にあり、その宇宙唯一の太陽を周回する惑星です。つまり、この宇宙には、あの、母なる太陽と、ここしかありません。』



前独裁者以下、繰り返し


 『んな、ばかな。』



ヘレナリア


 『ここは、地球でも、最近はほとんど信用されていない、定常宇宙にあたります。ここでは、あらゆる財を、だれもが、自由に使えます。費用も、維持費も必要ありません。すべては、宇宙空間から供給され、宇宙空間に還ります。ここには、貨幣はなく、会社も、役所もありません。地位もありません。あるとすれば、そうした、あらゆるニーズに対応するのが、あたくしヘレナリアです。』



前独裁者


 『ばかな、使い古しの、ユートピア論みたいなバカ話だ。そのようなことは、現実には不可能だ。』



ヘレナリア


 『もちろん、あなたが、そう考えるのも自由ですが、それでも、あなたは、利益を与えたり、得たり、は、しません。ただ、たとえば、お友だちに、プレゼントしたりは、できますよ。そこでは、なにかの、財が、ただ、動くだけです。』



前独裁者


 『生産するのに、計画から、材料の確保、加工、包装、輸送、人件費、たっぷりかかる。』



ヘレナリア


 『いえ、すべては、《ヘレナリアの家》で自動的に作られます。一個から、多数まで。この惑星には、政府はありません。ヘレナリアがいるのみです。もし、退屈だから、なにか作りたいという方には、安全な生産場を提供します。

賃金はありません。現物支給と言えば、あなたには、わかりやすいでしょう。研究したいことがあれば、援助いたします。芸術活動も。』



前独裁者


 『ありえない。だれが、資金を提供しているんだ?』



ヘレナリア


 『だれも。ここでは、ヘレナリアの意思において、すべてが提供されます。


 また、廃棄物は、すべて、再利用するか、宇宙に返します。


 あなたは、永遠に、ここで静かに生きることができます。


 禁止されているのは、あらゆる暴力です。


 また、この惑星では、武器や、武器になるものは、原則、提供できませんし、作っても使えません。刃物類は、必要がありません。あなたは、自由に生きられます。誰にも頼らずに。ただし、ヘレナリアに頼ることは、恥ずかしくはありません。万が一、あなたが、妻が必要なら、用意します。それに、どうしても、お金を使いたいなら、そのように取り計らいましょう。あなたの財産は、ヘレナリアにおいて、コピーされました。あなただけの為に、価格を付けてもいいですよ。あなただけのための、高級クラブも、作れます。あなただけのために、財産に利子を付けましょう。』



 独裁者は、考えてみれば、結婚はしていなかったのだ。


 妻という存在に、わざわざ、ぜいたくさせてやるような、ばかなことは、したくないと、思っていたからだ。


 それは、多少は、父譲りかもしれない。


 父は、自分の子供が独裁者になるなんて、許せないと言った。


 たがら、逮捕しようとしたが、勘が鋭い父親だから、逃げられてしまった。


 



 ▲●●●●●●●●●●●●●●●●▲ 




 《ポプリスと、宇宙海賊が、場末の、ちょっとは、キレイな酒場で話をしている。》


 

 

宇宙海賊


 『まてまて、じゃ、これは、すべて、はかりごと、なのか?』

 


ポプリス


 『あたりまえさあ。あんた、王女さまから、なんて、言われてきた。』



宇宙海賊


 『なにもするな。入札するな。睨みを効かせていなさいな。だ。』




ポプリス


 『だから、テロリストは、諦めたんだ。あんたは、実際以上に、恐ろしいやつ、て、ことになっている。しかも、いまは、合法だから。』



宇宙海賊


 『そんなやつが、あそこにいたのか?』




ポプリス


 『ああ、昔から、どんな独裁者も大嫌いな、『青い絆』のメンバーがいた。しかも、大物だ。タルレジャ王国の王女も狙ってる。しかし、連中は、慎重だ。やたらに爆破はしない。今回も、たぶん、王女か、新しい独裁者あたりを狙っていたんだろう。しかし、落札したのが、あたしだったからね。あとが、怖いからね。海賊も、ド・カイヤ集団も。』



宇宙海賊


 『ああ、それで、ちょっとは、わかった。しかし、たしか、『青い絆』は、味方だった時期もある。』



ポプリス


 『まあ、だいたい、そんなもんさ。昨日の友は、今日の敵さ。今日の敵はあすの友。』



 《そこに、タルレジャ王国の第1王女、ヘレナあらわる。》



ヘレナ


 『まあ、悪者二人が、秘密会議ですの?』




ポプリス


 『来たか。王女さまが、こんな場所にいたら、危ないよ。』



ヘレナ


 『まあ、ほら、地味な格好に、してきたから。』




ポプリス


 『ほとんど、何も着てないくらいだけど。すっごく目立つわ。』




ヘレナ


 『あら、民族衣装よ、普段着。ね、首領さん。』



宇宙海賊


 『いやあ、お嬢、いや、王女さま、あんたは、す、すばりらしい。』




ポプリス


 『舌、からまってるよ。で、これで、いいんだろ。たんまり、分け前、頼むな。』




ヘレナ


 『はいはい。わかってます。あの、孤独な独裁者さんは、異世界に封印した。ヘレナリアの惑星に。』



ポプリス


 『むかし、金星人は脱出したろ。ダイジョブかいな。』



ヘレナ


 『まあ、むかしのことよ。もう、ああしたことは、やらないわ。あ、しゃべっちゃった。まあ、よそのお話だから、いいか。』




ポプリス


 『金星のビューナスさんが聞いたら、激怒するでしょう。みんな、あなたの手の上で踊らされていた。いまでも。いままでも。』




ヘレナ


 『地球人に、チャンスを与えたのよ。きちんと、仲良く、正しく分けあって生きなさい、と。しかも、チャンスは、始めてではないわ。まあ、あたくしは、神様じゃないから、全知全能ではありませんし。人類にお任せはしたのよ。でも、どにもならないから、妹二人が、苦労して地球統一し、核兵器も廃絶し、富の再分配もかなり達成したのに、簡単に、壊されちゃった。あいつ、あれでも、最初はまともな地球大統領だったのに。なんで、ああなったのか。』




ポプリス


 『あなたを、見習ったんでしょ。』




ヘレナ


 『まあ、失礼な。タルレジャ王国は、長く、地球からは、離脱しておりましたのよ。最近は、まあ、ちょっとは、介入したけど。』




宇宙海賊


 『だから、だめだったのです、お嬢。し、失礼ながら、目付役がないと、地球人はだめなのだ。進化の限界だと、うちの科学士官は言っています。地球人には、平和という概念は、理解は不能なのだ、と。』



ポプリス


 『デラベラリ先生か。独裁者が、自分の子孫だったのは、皮肉だね。』




ヘレナ


 『まあ、たしかに、妹の、つまり、地球皇帝陛下の、夫の子供だから。やはり、指導者は、きちんと、市民の方から、選ばなきゃだめかな。どうしても、名門とか、政治が家業の方になりやすい。ポプリスちゃん、つぎは、ちゃんと、選挙させなさいね。だいぶ、お値段、吊り上げたんだから。』



ポプリス


 『ちゃん、は、やめろ、って、いつも言ってるだろ。』




宇宙海賊


 『お嬢、それは、談合ではないか?』




ヘレナ


 『公共事業ではありません。』




ポプリス


 『ふん。あの、わけのわからん女は、誰なんだい。』



ヘレナ


 『だから、あれは、ビューナスさんの子孫。両性を持つ、金星のプリンセス。あたしの、地球での、弟よ。いまは、地球から離脱したから、地球人ではないわ。』




ポプリス


 『結局、あんたの、一人芝居かい。ばからしい。』




ヘレナ


 『あら、あなたたち、転売で、大儲けできた。あなたもね、大宇宙海賊、マオ・ドクさま。地球は、ころころ、転がって、僅か、数時間の間に、第9惑星の支配者、あの、光人間の彼女の手に落ちた。彼女は、いい人よ。絶対に、戦争なんかさせない。不正はしない。公明正大な方よ。姿は、見えなくてもね。まあ、いずれ、時を見て、あたくしの手元に還ってくるけどね。』




ポプリス


 『やはり、あんたが、一番の悪ね。』




ヘレナ


 『まあ、ありがとう。そういうふうに、言われるの大好き。あたしは、お父さんの方のデラベラリさまによれば、悪魔の分類だから。でもね、あいつ、やはり、さすがに、ほっとけなかったんだなあ。自分の利益を確保するために、地球を売りに出すなんて。だいたい、人のものを、売りに出したらだめよね。地球の本来の所有者は、誰なの? だから、異世界に封印したんだしさ。で、あの、インチキ競り人を、うちの、コピーロボットにすり替えた。ずっと、ましになった。独裁者さまの代理の、あのすっごい美人さんを、ビューナスの子孫さまである、我が弟にすり替えた。変身は得意だしね。』




ポプリス


 『あんたは、宇宙最大の金持ちだもんな。お宅は、と、いうべきかな。王女さま。いえ、もと、火星の、女王さま。そうして、地球の本来の、所有者さま。』




ヘレナ


 『まあ、残念ながらね。でも、まだ、地球人は、あたくしの所有権は認めてくれないわけよ。むかしの、火星と金星政府の、公式証書を認めてもらえないとね。ちゃんと、王室に保管してます。まあ、地球人が、正当に評価できるようになるのは、まだまだ、先ね。でも、むしろ、そんなもの、必要なくなれば、いいんだけどね。それでも、悪い使い方ではなかったでしょ。でも、実は、月はね、あるときから、あたくしの所有物ではなかったの。あれはね。リリカナンバー2さまに差し上げたから。火星の首相だったリリカさまの、不滅のコピーさん。太陽系だって、いろいろ、地球人は知らない戦争とか、あったわけでしょ。でも、今回は、なんと、おまけで、月も、付いてきたわけよ。びっくりね。リリカさんに、断りをいれなきゃね。』




   ・・・・・・・・・・・







 



 

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『おまけつき』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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