第267話 楽しい一年間でした!

 ローラとシャーロットとハクは、同時に目を覚ました。

 むくりと起き上がり、大きくあくびをする。


「むにゃむにゃ……おはようございます、シャーロットさん、ハク……」


「おはようございますローラさん……楽しかった夢もここまで……ってローラさん! 時計を見てくださいまし!」


「え? ええええええ!?」


 大賢者は『目覚める時間よ』なんて格好いいことを言って夢を中断させたが。

 いつもの時間を過ぎていた。

 今からだと遅刻するかしないかギリギリである。


 ローラとシャーロットはドタバタと制服に着替え、大急ぎで顔を洗って歯を磨く。


「そしてハクを装着!」


「ぴ!」


 ハクはローラの頭の上で元気に鳴いた。


「ローラさん、急ぐのですわ!」


 女子寮の玄関に行くと、アンナが足踏みしながら待っていた。


「おはよう。早く早く」


 本当にギリギリだが、それでもローラたちは教室ではなく学食に走った。

 腹が減っては授業を受けられない。

 まして夢の中とはいえ、あれだけの戦いを繰り広げたのだ。

 朝食くらい食べたいのだ。


「いやぁ、それにしても昨晩は楽しかったですね」


「本当ですわ。あと少しでわたくしが勝っていましたのに……惜しかったですわ」


「いや、全然惜しくなかったよ。私もシャーロットも惨敗だったよ。まあ、私はシャーロットよりちょっとだけ長く立ってたけど」


「な、何を仰いますのアンナさん! わたくしのほうが長かったですわ!」


「ねつ造はよくない」


「アンナさんこそ!」


 などと言い争いながら廊下を走る。

 ローラは「あはは」と笑いながら、昨晩の戦いを思い出した。

 いや、それだけでなく、入学してから今までのことを。


 シャーロットとアンナと出会って。

 保健室で寝ていた大賢者と出会って。

 エミリア先生に何度も叱られて。

 校内トーナメントをやって。

 実家に帰り、魔法学科に通うのだと父親を説得して。

 川でハクの卵を拾って。

 獣人の里オイセ村に行って。

 ハクの親と会って。

 ミサキが学食で働くようになって。

 アンナが育った孤児院の借金を返して。

 遠足でダイケンジャーと戦って。

 ラン亭のラーメンを売るのを手伝って。

 吸血鬼と戦って。

 ニーナがラン亭の店員になって。

 文化祭をやって。

 浮遊宝物庫でアンナの魔法剣を見つけて。

 認識阻害魔法で大ピンチになって。

 夢の世界でシャーロットとアンナが一騎打ちして。

 皆で魔法少女の衣装を着て。

 まるまる太ったハクのダイエットをして。

 素晴らしい十歳の誕生日パーティーを開いてもらって。

 古代文明のコタツと戦ったりして。

 最強のモンスター、パニッシャーが復活して。

 初代魔法少女アルピナと共に戦って。

 そして昨夜の三つ巴。


 思い返すと色々なことがあった。どれも楽しい思い出ばかりだ。

 もうすぐローラは二年生になる。

 きっとまた、素敵な一年間に違いない。

 だって、ローラの周りには素敵な人しかいないのだから。


「ところでローラさん。朝食は何を食べますの?」


「……それ、聞かなくても分かる気がするんだけど」


「ぴぃ」


「ふふふ……もちろんオムレツです!」

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