第111話 ラーメン普及作戦です
お姉さんの名は、ラ・ランというらしい。
東方では名字が先に来るので、ランが名前だ。
出身は大陸東方の
ラーメンは
既に東方全土でラーメンは日常的に食べられている。
だがファルレオン王国を初めとする西方では全く知られていない。
現に、東方にルーツがあるオイセ村にすら伝わっていなかった。
そこでラ一族は、西方で一番の大国であるファルレオン王国の王都に店を構えることにした。
送り込まれたのは、一族で最も才能にあふれていると評判のラ・ラン。
ラ・ランは、自分の作るラーメンなら、ファルレオン王国人の舌を唸らせることができるだろうという自信を持っていた。
だが、長老たちから渡された資金は、さほど多くはなかった。
当たり前の話だが、
しかし、長老たちはファルレオン王国の通貨を持っていなかった。
そこで長老たちは宝石がつまった袋をランに渡した。
王都でそれを売り、ファルレオン王国の通貨にすればいいというわけだ。
実際、それは成功し、ランは宝石を金に換えることに成功した。
ただし、物価というのは地方によって違うのだ。
王都は土地の値段が西方でもトップクラスに高く、そして宝石がやや安い。
おかげでランは、繁華街から遠く離れた建物しか借りることができなかった。
この辺の人たちはあまり裕福ではないので、あまり外食をしない。
少なくとも、ラーメンなどという異国の怪しげな食べ物にお金を払う余裕はないらしい。
そこでランは、手書きのチラシを作って大通りで配った。
店の地図を書き、『ラーメン屋 ラン亭』をアピールした。
だが、それが飲食店のチラシだとなかなか理解してもらえなかった。
それどころか風俗店と間違われ、衛兵に連れて行かれそうになった。
「あのときは大変だったアルよ……皆からイヤらしい目で見られるし、通報されるし、衛兵には怒られるし……」
「まあ、凄くセクシーな衣装ですからね……」
こうして改めてみると、かなり際どいスリットだ。
しかもランはかなりの美人で、スタイルもいい。
羨ましいくらいの美脚。
道行く人が見とれるのも分かるし、風俗店だと思われるのは無理もない。
「チェイナドレスは
「ラーメン屋というのはエッチでありますな! エッチでありますな!」
ミサキは嬉しそうに耳と尻尾をばたつかせた。
「うーむ……ラーメンが美味しいのは間違いないので、きっかけさえあれば流行ると思います。なにかいい宣伝方法はないですかね?」
ローラは腕を組んで考え込む。
たとえば、ランのお色気で男性客を大量に誘導してくるというのはどうだろうか? いや、これではまた衛兵に通報されかねない。
ならば、その辺の人たちを片っ端から次元倉庫に入れ、強制的に連れてくる……これはただの犯罪だ。またエミリア先生に怒られてしまう。下手をすると学長先生や女王陛下にも怒られるかもしれない。
「ふふふ、わたくし、ナイスなアイデアを思いつきましたわ!」
するとシャーロットが自慢げな顔で声を上げる。
彼女が自慢げなときは、本当に有益なときか、根拠のない自信に満ちているかのどちらかなので、注意して聞かないといけない。
「どんなアイデアですか、シャーロットさん」
「簡単ですわ。ラーメンをアピールしたいなら、人が多い場所にラーメン屋を持っていけばいいのですわ!」
「……いや、しかし。資金がないから人通りのない場所に店を作ったんですよ?」
「別に店そのものを移動させる必要はありませんわ。屋台です。小さな屋台を作って、それでラーメンを売るのですわ。それで評判になれば、自然とこちらにも客が流れてくるというものですわ!」
「おお……シャーロットさん! それは本当にナイスなアイデアですよ!」
ローラは素直に感心する。
大通りに行けば、クレープとかフランクフルトとか、色々な物を売っている屋台がある。
食べ物に限らず、アクセサリーや怪しげな骨董品などを売っている屋台も沢山ある。
あれらに混じってラーメンを売っても、誰も文句を言わないだろう。
もしかしたらショバ代などを要求してくるチンピラがいるかもしれないが、そのときは正義の味方パジャレンジャーや、秘密結社カミブクロンの出番である。
「屋台……なるほど!
「そうと決まれば、さっそく屋台を作りましょう。材料は任せて下さい。ちょいちょいっと森の木を切ってきます!」
「でも組み立ては誰がやるの?」
アンナが疑問を口にする。
「屋台を作るお金くらいは残してあるアル。材料費が浮くなら、更に余裕アル」
これで希望が見えてきた。
善は急げと、ローラたちはランを連れて店を出た。
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