第2話
「君、大丈夫?」
「…あ、えっと…うん!」
へ?
「葵…さん?」
「そ、そうだよ?……たしか君は、北条くん、だよね」
「あ、うん」
まさか、名前を覚えてくれてるとは…。
「えと…ありがとね、助けてもらっちゃって」
「ああ、それは大丈夫だけど……葵さんはこんな時間にどうしたの?」
「前回の中間テストで、赤点スレスレの教科がちょっと多くなっちゃったから、期末にむけて先生に教えてもらいなさい、って親に言われちゃって…」
そういうことか。しかし、葵さんが勉強できないっていうのは意外だ。
「そっか…言いたくなかったらいいんだけど、家はどの辺にあるの?」
「えっと、星原町だよ」
星原町なら少し遠回りになるけど寄れるかな…。
「俺、その隣町の柏木に住んでるからさ…何回も言うけど、嫌じゃなければ送ろうか?」
「いいの!?正直少し怖かったから、送ってくれるなら嬉しいな」
そりゃそうだ。葵さんも普通の女の子。今は元気に取り繕っているが、怖いのは当たり前である。
「じゃあ行こっか」
「うん!」
♢♢♢♢♢♢♢
──帰り道、学校一の美少女と髪ボサボサのネクラ野郎が横並びになって歩いている。
だいぶ異端な光景ではあるが、蓋を開けて見てみると、以外にも会話が弾んでいた。
「…でも、葵さんが勉強できないのは意外だったなー」
「む?ちょっと馬鹿にしてるな??」
「はは…そんなことはないよ」
「でも、私は北条くんと話して少し拍子抜けだったかな。その……普段はちょっと暗めで、あんまり話さない印象だったからさ…」
グサッ…!何かが心に刺さった音がした。……うん。なかなか強烈な一撃だ。
「まあ、コンビニとか飲食店でアルバイトしてるし、会話は苦手ではない…と思う」
そう。会話が苦手、というわけではない。
……ただ、話しかけるタイミングを逃してしまったのだ。
あれ、これってコミュ症…?
「あ、ごめんね!別に馬鹿にしてるとか
じゃなくて……北条くん、わたしに話振ってくれるし、自分よがりじゃないし、テンションも高すぎないから、いい意味で気を使わなくていいから話しやすいもん!」
「そ、そっか。それは良かったよ」
素直に褒められてしまったので不覚にも照れてしまった。
「……えっと、じゃあ私ここだから!……今日はありがと…また明日、北条くん!」
「……っ!?う、うん。また明日…葵さん」
また明日…か。
うん、また明日会えるんだ!ちょっと寂しかった、とか思ってないからな!
──玄関の扉を閉める音が誰もいない家に鳴り響く。
ドアガラスからの光に照らされる葵の頬は暑さにやられたのか、真っ赤に染まっていた。
学校一の美少女に〇〇したい~主人公最強でした~ @kamuuuuuui
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