第149話.ブロッサの進化

 スケルトンは物理的攻撃には強いが、魔力を含んだ攻撃にはめっぽう弱い。


 スケルトンの骨は、魔力で出来た細い1本の糸が通っているように繋ぎ止められている。どれだけ物理的攻撃を与えて骨を崩そうが、骨を破壊してバラバラにしようが、その魔力の糸が切れない限りは再び元の姿に戻ってしまう。

 しかし魔力による攻撃を与えると、その糸は簡単に切れてしまう。1本の糸で繋がっている為、1ヶ所でも糸が切れてしまうと、全身の骨を繋ぎ止める事が出来ずに体が崩れ始め、崩れ落ちると直ぐに消滅が始まる。


 今は光の影響でスケルトンが弱体化しているせいかもしれないが、魔法が通用すれば簡単に倒せる相手になるし、魔法が使えなければ倒すのは難しい。

 しかし、この数のスケルトンを相手にすれば、いくら魔力量の多いエルフ族であっても魔力切れとなり、苦戦していたのも分かる気がする。


 俺達の中では、魔力量も少なく攻撃魔法が使えないソースイが一番苦戦している。スケルトン達をどんなに倒しても、一時的に骨の山が出来上がるだけで消滅させる事は出来ていない。


 ソースイが苦戦していると、そこに栗色のボブの女性が現れる。年齢的は俺と同じくらいだろうが見覚えはない。しかし、その魔力は良く知っている。

 そして、両手にはソースイのツーハンデッドソードを持っている。


「エンチャント・ポイズン」


 ツーハンデッドソードが赤く光を帯びる。


「ソースイ、コレを使って。光が薄くなったら、もう1度掛けなおすから気を付けて!」


「もしかして、ブロッサなのか?」


「そうヨ、何とか間に合ったネ。エンチャントも出来るから任せて!」


 ブロッサは、カエルからヒト型へと進化を選び、活動的な女性の姿を望んだようだ。そしてブロッサが使うエンチャント魔法の効果は大きい。エンチャント魔法があれば、ソースイのように保有魔力量が小さかったり攻撃魔法が不得意な者でも、魔法の恩恵が受けられる。

 ソースイがブロッサからツーハンデッドソードを受けとると、スケルトンをなぎ払う。エンチャント・ポイズンは剣全体に付加され、それに触れたスケルトンはすぐに消滅を始める。


 そして、ブロッサ自身はポイズンミストを放ち、スケルトン達が侵入出来ない壁を作り数的不利をカバーしてくれる。


 ブロッサが現れた事で完全に流れが変わり始め、数に物を言わせてジリジリと距離を詰めてくるスケルトンの動きが少しずつ鈍くなり、そして完全に動きが止まってしまう。


「ブロッサの毒はチートだよ。相性の良い悪いはあるだろうけど、ブロッサの毒を完全に無効化出来る存在は少ないだろ。精神や魔力の流れでさえも狂わせるから、スケルトンにも有効みたいだな」


『引きこもりだったけど、古株の中位精霊が本気を出したら怖いって事よ♪あなたと契約していれば魔力の消費なんて考えなくてイイから、スケルトンだけなら後は時間の問題ね』


「気になるのはスケルトンは元々は何かの魔物なのか?最初からスケルトンっていう魔物が存在するのか、それとも他の魔物の骨なのか?見た感じはゴブリンっぽいような気がするけど、消滅すれば骨は残らないだろ」


『そうね、詳しくは分からないけど、スケルトンにも大きい小さいがあるのは確かよ。まあ、ゴブリンロードが怒って出てきたら、ゴブリンって事なんじゃないかしら♪』


 まだまだ分からないわ事だらけで推測しか出来ないが、怒ったゴブリンロードが現れる姿が想像出来て背中に嫌な汗がにじむ。


「少しかは力の差は埋まってるかな?」


『ゴブリンロードが強くなってなければね♪』


「聞いた俺が間違いだったよ」


 そんな話の間にも、完全に均衡が崩れてスケルトン達が後退を始める。そして逃げようとするスケルトンと、後ろから前進するスケルトンがぶつかり合うことで混乱が生じ、それが全体へと伝播する。


「スケルトンでも普通に感情はあるんだな。光に怯え、状況が不利だと感じると逃げ出す」


『確かにそうね。誰かが操っているにしては数が多すぎるわ』


「そうであってくれるなら戦いやすくなるかもな」


 精霊樹の杖をかざし、無数の火の玉をイメージする。


「ファイヤーボム」


 精霊樹の杖から放たれ無数の火の玉は、スケルトン達の上で弾けて降り注ぐ。効率良く倒すのではなく、混乱を煽るために暗闇で一番目立つ火属性の魔法を放つ。

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