第114話.本当の姿
「これ、ペガサスだろ!違うのか?迷い人の俺でも分かるぞ!」
『どこからどう見ても、立派なペガサスよね』
「他ニハナイ、綺麗ナ翼ヨ」
皆の視線が、他称ユニコーンに向けられるが、下を向いて何の反応も返ってこない。
「そっ、そっ、そんな筈はない。こいつは、我らと一緒に誕生したのだぞ!」
「たまたま一緒なところで産まれたんじゃないのか?」
「こいつは、我らと一緒に行動しているぞ!」
『ぼっちは寂しいのよ。それに集団で居た方が身を護れるわ』
「こいつは、長い時の中でも何も言わなかったぞ」
「話シタクナイダケ」
そしてムーアが他称ユニコーンに近付くと、ゆっくりと話しかける。
『流石は知性を司る精霊よね。綺麗な眼をしているわ。どう、私達と一緒に来ない?』
「ムーア、無理に勧誘しちゃダメだぞ」
『ええ、分かってるわ。だけど、こんなに賢い精霊なら分かるはずよ』
「ココハ居心地悪イヨ」
ユニコーン達を無視してペガサスを中心に会話が進む。俺の嗅覚が、この森に隠れている精霊達を感じ取る。この森の精霊達もペガサスの事を見ている。
ガツッ、ガツッ、ガツッ
ユニコーンの1体が足を踏み鳴らして、苛立ちの表情を表してくる。そして、角をこちらに向けて威嚇し攻撃姿勢をとる。俺もブロッサの横に並び、ユニコーンとペガサスの間に割って入るが、威嚇されても気にもしない俺の態度は、さらにユニコーンを苛立たせる。
「逃げ出した蛙と、その仲間が何言ってるんだ。こいつも最初は、翼なんて無かったぞ!」
俺がペガサスの方を見ると、気まずそうにして少し後退りする。
「こいつら、プライドが高そうだからな?気を遣い過ぎも良くないんだぞ。隠さない方がイイ事もある」
『そうよ、遠慮しなくてイイのよ!知らないのは可哀想よ。この先の事を考えてご覧なさい。遅くなれば遅くなる程、この森には居られなくなるわ』
「無知ハ罪ネ」
そこまで言われて初めてペガサスは、自信なさげにさげていた頭を上げる。そして1歩また1歩と前へ進み、俺の前まで来ると翼を広げる。
明らかにユニコーンのものとは違い、二回りは大きく、そして美しい。
『これが、本当の姿なのね。カショウはこの姿が分かってたの?』
「俺にもリズとリタの翼があるからな。何となく、力を抑えてるような違和感を感じただけだよ」
「コレカラ、ドウスルノ?」
ダンッと、地面を踏みつける音がして、1体のユニコーンが叫ぶ。
「うるさいっ!」
我慢できなくなったユニコーンの1体が俺目掛けて突進してくるが、ハーピーロード相手にした後だと全てが物足りなく感じる。
「遅いな」
皆に大丈夫だと伝える為に、わざと呟く。わざわざ攻撃する事を教えてくれたのだから、さらに対処する余裕がある。マジックシールドを操作してユニコーンの突進する方向を少しだけ逸らす・・・つもりだった。
ミュラーが、俺のマジックシールドに合わせて金属盾をつくりだす。ユニコーンの横顔に軽く当てるつもりが、かなりの重量を持った マジックシールドが横顔を弾き飛ばす。
そして、そこに待ち受けるソースイが追い討ちをかける。
「グラビティ」
弾き飛ばされている上に重力操作の影響で、顔面から地面へと落ちる。そして、ダークの操るマジックソードがユニコーンの角を切り落としてしまう。
「あっ・・・」
俺が止める間もなく、ユニコーンがユニコーンで在るための唯一の物が無くなってしまう。
『これじゃあ、出来損ないのペガサスね』
「ソレハ、ペガサス二失礼」
「精霊だから、またすぐに角は生えてくるんだろ」
『そうね、何百年後には元通りになってると思うわ』
「そんなに時間がかかるのか?存在の消えかかったリズやリタだって、そんなに時間がかからないだろ?」
『それは、あなたと契約して膨大な魔力を吸収しているからよ。普通の自然界なら、そこまで魔力を吸収出来ないわ。それに失ったのは、ユニコーンの象徴とも言うべきの角よ』
恐る恐るとユニコーンの方を見ると、少しずつ後退りしている。このままでは、この森で精霊と戦ったヒト族になってしまい、良くない気がする。慌てて手を上げて、ユニコーンを静止しようとしたが、攻撃と勘違いして一目散に逃げてしまう。
「この森の精霊を敵にした事にはならないよな?」
『まだ、ここにはペガサスが残ってるわよ』
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