第33話.ゴブリンランクとソースイの闇
オニ族の村からオオザの崖へは、踏み固められて出来た跡ではあるが道がある。ライの祠からオニ族の村を目指した時のように、何もない所を進むよりは断然楽な道のりになる。
これはドワーフが作った道で、ヒケンの森にはこのような道が幾つか存在する。素材収集の活動拠点は幾つかあり、そこに向かう為の道ではあるが、頻度は少なく年に数回使われる程度。
そして移動中の俺は、クオンのアドバイスを実践しながら、もっか探知魔法の練習中。
全ての物を把握するのではなく、一番探知したいものは何であるか! それが見えていなかった。知りたいのは草木や小動物・昆虫なんかじゃない。近付いてくる、魔物であったり、敵意をもった生き物。
特に今の場合は、対象はゴブリン。俺の魔力を小さな粒とするなら、その粒の中をゴブリンが動く事で、複雑な動きを見せる。武器の様な硬い金属に当たれば大きく跳ね返り、柔らかな所に当たれば跳ね返り難く、ゴブリンであれば跳ね返りは複雑な動きをする。
今は変化する魔力の動きでも、複雑な動きだけを意識するようにしている。
今は先頭を行くソースイの動きを捉える。目で捉えず、魔力のみで探知する。大きなヒーターシールドを持ったソースイは探知し易く、練習にはもってこい。
そう、ぼっちじゃ出来ない実践練習。目指すは上位魔法の魔力吸収であり、今はそれの通過点にしか過ぎない。目標は大きく持て! クオンも絶対に出来ると言ってくれたから大丈夫。クオンの絶対は無敵だ!
ちなみに、ソースイの訓練に付き合ってくれた、ブクマとパントラ、コーヒョウは、それぞれの森に帰っていった。クオンの話では、何時でも協力してくれるみたいだ。
「協力する、絶対」
のクオンの言葉に、何回も大きく頷いていた、パントラとコーヒョウ。クオンへの気持ちは分かるけど、父親としては認められない、絶対!
釣られて頷いたブクマも協力する事になってしまったが、一瞬だけ“エッ”て顔をしていたが、俺は見てない。
「見つけた」
クオンが見つけたゴブリンは30体。最初は少なくあって欲しいと思っていたせいか、思わず言葉か漏れる。
「多いな」
『もうジェネラルや100体の群れが出てるのよ。決して、多くはないわよ』
あれから、ムーアもアシスの世界や常識を教えてくれる。俺の副官みたいな存在になりつつある。
『30体のゴブリンが群れになってるなら、上位種が居る可能性が高いわね』
通常のゴブリンは、多くて2・3体程度で行動している。ゴブリンがポップアップするのも1・2体。
確かに30体まとまってゴブリンが発生するなら、もう少しポップアップの謎も解明されている。
ちなみにゴブリンの脅威度は、メイジ·キャプテン ·ジェネラル·ロード·キングの順で上がる。
脅威度が上がる度に、統率出来るゴブリンが増えていく。メイジで10体、キャプテンになると20体、ジェネラルになると100体と増えていく。
30体の集団なら、最低でもゴブリンキャプテンとメイジくらいは居るはず。
「ムーア、ブロッサを助けた時はキャプテンは居たと思うか?」
『鳥を使役する魔法を使っていたとしたら、魔法を使えるメイジかしら?キャプテンでも使えるかもしれないけど、そこまでの数は居ないと思うわよ』
「ホントに死体が消えてしまうのは厄介だな」
『次からだけど、クオンに魔石を回収してもらえば分かるんじゃない?』
「大丈夫」
クオンが影に潜り、袋を咥えて戻ってくる。
「ゴブリンの魔石」
袋の中から小さな魔石が出てくる。小さな粒の魔石ばかり。その中に1つだけ、一回り大きな魔石がある。
「これは、ブロッサを助けた時の魔石?」
「うん、ブロッサの時の」
小さな魔石の中に、少しだけ大きな魔石がある。
「これはメイジの魔石かな?それなら、ブロッサ救出の時は、キャプテンはいなかった事になる」
『その可能性は高いけど、そうだったらどうなの?』
「ブロッサを助けた時は、メイジ1人で15人は統率していた事になる。15人率いるメイジは、優秀なメイジだったのかって気にならないか?」
『ゴブリンにも、優秀なゴブリンと出来の悪いゴブリンが居るなんて、考えた事もないわよ。やっぱり、あなたは変わってるわ♪』
「優秀なキャプテンの率いる30体と、出来の悪いキャプテンの30体とじゃ違うだろ。それをさせてるジェネラルはどっちになる?」
『面白いわね、あなたと契約して正解だったわ』
「なるべく安全で楽したいだけ。一応俺は半分は人間だから、死んでしまう可能性もある。ソースイも増えたし責任あるからな」
『あら、あの顔が見えないの?興奮して、今にも特攻しそうな顔してるわよ』
ソースイの顔が少し紅潮し、早く戦いたくてウズウズしているのが伝わってくる。もしかして、あいつ戦闘狂なのか?殿にいるのも、好きでやってたの・・・かもしれない。
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