第34話.奇襲と速攻と
ゴブリンの群れも、ドワーフの作った道に沿って進んでいる。大人1人が歩ける程度の幅しかなく、足場も悪い。しかし、すでに幾つかの道の存在は認知され、移動手段として使われている。
このまま行けば、正面からぶつかる。
「クオン、一旦森の中に入ってゴブリンの様子を見よう」
「分かった」
クオンが森の中を先導し、ソースイが後に続く。俺よりスムーズに森の中を進んでは行くが、体の大きさは目立つし、大きな音も出てしまう。
クオンは足跡や通った道の痕跡を気にしながら先導してくれる。隠れることが出来る障害物や、起伏のある場所を探して。
森の中にも草の少ない場所がある。大きな木が生い茂り、日の光を遮る場所は比較的に草は少ない。
クオンの探知は聴覚によるもので、音の発生源を元にして動く。全く動かないものに対しては、把握しにくい。俺の探知なら物を把握する事は出来るが、まただ範囲は狭い。ウィスプ達は暗い森の中では目立ちすぎる為、表に出ての行動は難しい。
イロイロと考えている内に、目の前に大きな倒木が現れる。最適な場所は、ゴブリン達を確認する事が出来て、そして俺が追いかけれる距離であること。
「来た」
ゴブリンの隊列が見えてくる。先行して索敵するゴブリンも見えない。ただ一列になって道を進んでいる。
見えてくるゴブリンは、今まで見たゴブリンと同じ。行動自体は、余裕があるというかダラダラしている感じがする。風や草木、鳥や動物の動く音にも反応しない。
中程に、身長は変わらないが、黒いゴブリンが見えてくる。他のゴブリンと比べると防具もしっかりしている。革だけでなく金属も使われて補強された防具を身に付けている。
「あれがゴブリンキャプテンだろ」
『そうみたいね』
「ここにオニ族はいないって分かってる、油断しきっている」
『ブロッサの時もそうだったけど、連絡を取る手段を持ってるわ。魔法か何かで動物を使役しているはずよ』
「動物を使役するのは、簡単なことなのか?」
『大きなブクマみたいな獣でなく、小さな小動物くらいなら簡単よ。難しい魔法ではないし使える者は多いわね』
「オニ族は使えないのか?」
『それがオニ族の残念なところよ。オニ族は四属性以外の魔法は使えないでしょ』
「そうだったな。だったらそれをゴブリンは分かってるのか?」
『それを判断するのは、まだ早いわよ』
ゴブリンの隊列が過ぎていく。そして最後尾にローブ姿で杖を持ったゴブリンが現れる。
「あれがゴブリンメイジか?」
『そうね、ゴブリンキャプテンとゴブリンメイジが揃ってるわね。どうするの?』
「メーン、ゴブリンメイジは狙えるか?」
明滅して“大丈夫”と答えるメーン。ゴブリン相手に気にしすぎかもしれないが、広範囲魔法を気にしてしまう。
「残りはゴブリンキャプテンを狙う。ルーク、カンテ、ソースイで突撃。俺とブロッサが援護」
『私は?』
「ムーアは、ここでゴブリンの動きを見てくれ。ゴブリンキャプテンが倒された後、統率されなくなったゴブリン達の動きがどうなるか見て欲しい」
『分かったわ』
俺はムーアに、土オニの短剣を差し出す。
「一応、渡しておくよ。何もないより何かあった方がイイだろ」
『まあ、これからの事を考えたら必要かもね』
「よし行くぞ、メーンの攻撃と同時に突撃!」
メーンの体の光が少しずつ明るくなる。二頭身の体だけど、しっかりと弓を引く姿が見える。
バチバチッと小さな音が聞こえ、メーンの体から閃光が走ると同時に、光の矢のようなビームが放たれる。
「突撃!」
ルークは地を這うように低空飛行し、カンテは1度木の上に出る。
ソースイも倒木から飛び出すが、ルークとカンテには遅れる。
閃光で異変に気付いた時には、メイジの頭が無くなり、体が消滅仕掛けている。
ルークがサンダーボルトを放つと、ゴブリンキャプテンの横のゴブリンが倒れる。
ここでようやく敵と認識し弓を構えるが、上からカンテのサンダーストームが降りかかり、ゴブリンキャプテンを中心に10体ほどのゴブリンが倒れる。
キャプテンはダメージは受けているが、まだ立っている。だが痺れて動けない。そこに雷を体に纏ったルークが突撃し、キャプテンは消えてなくなる。
ソースイがたどり着いた時には、残りは半分以下。キャプテンが居なくなった事で、混乱しているのか動けずに固まっている。
そして俺がたどり着く頃には、全てのゴブリンが魔石へと変わっていた。
出番の少なかったソースイが悔しそうにしている。盾の重さが邪魔してるとは思うが、今そこには触れない。
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