ほんの気まぐれ

シロリ/Sirori

第1話ほんの気まぐれ

引き金を引いた。昔はあんなにも重かったはずなのに、今では宙を舞う木の葉のように重さすら感じなくなってしまった。火薬の爆発によって推進力を経た弾丸は長い銃身を通り銃口を出て、狙撃手の描いたレールに従い敵の体に直撃した。スコープ越しに見える血しぶきが相手の苦痛に歪む表情が自分の行動の結果を物語っている。空を見上げてふと思う。(これで何度目だろうか。)なんて数えていてはキリのないほどに私はこの銃で人を殺めてきた。初めはとても怖かった、いつ迫撃砲が飛んできてもおかしくないような最前線で常に気を張り、銃を構え続けた。今やらなければ自分が、もしくは自分の仲間がやられていたかもしれなかった、これは仕方のないことなんだと自分に言い聞かせ生まれが違っただけの相手を射殺していく。仲間が1人、また1人と倒れようとも。敵を何人殺そうとも。戦いが終われば次の戦いへ、消えた仲間は補充され、何人殺そうとも無限に湧き出てくる敵の山をたま無慈悲に崩していく。そんなことを繰り返していく中で気づけば人を殺すことに躊躇いはなくなってしまっていた。殺すことに理由はなくなりただ命令されるままに敵を殺す。(思えば遠いところまで来てしまったな…。)そんなことを思いふとスコープを覗いてみる。すると先程吹き飛ばした敵が必死にもがき逃げようとするのが目に映った。完全に戦意を喪失し武装を捨て少しでも遠くに逃げようとしていた。(昔の自分ならきっと…。)そんなことをふと思った時には私の視界に動くものは何一つとしてなくなってしまっていた。

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ほんの気まぐれ シロリ/Sirori @sirori_oekaki

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