第42話 ピロトーク♥

 カミラティ・シルファン。


 その名を捨て、『青い風のカミラ』と名乗り、世界で名を上げ始めていた。

 地位を捨てて世界へ飛び出す。

 カミラは風のように自由に生きたかった。

 誰にも縛られることなく、ただ己の思うがままに生き、そして階段組織という今のこの世の全てにおいて最も分かりやすい自分の価値を示す争いに身を投じ、その頂点を目指した。


 王族も貴族も平民も関係ない。


 誰でも這い上がることができ、誰だろうと蹴落とすことができる、まさに自分自身が試される争い。

 その争いに身を投じれば、姫だとか王族だとか関係なく、誰でもない自分自身になれると思ったのだ。

 そして、そんな人生を共に歩む仲間を欲した。

 ただの戦力としてではなく、一緒にバカをやり、群雄割拠の階段組織時代において最上階を目指すという馬鹿な野望を共に歩める仲間を。


 そして、カミラはそんな仲間を見つけた。


 で、エッチした。



「はぁ~~~、すっご……やばいね~、エッチって♪ エイセイもセツカもこういうのを毎日してたんだ~」



 全身運動を終えた全裸のカミラがベッドから体を起こす。



「ったた……まだ入ってる感じ……ってか、妊娠したらほんとどうしよ……刹華が避妊薬持ってるから大丈夫とは言ってたけど……」



 身体に変化はある。

 痛みや疲れ切ったはずの身体。しかし、心はやけに満たされイキイキとしている不思議な感覚だった。

 興奮と熱っぽいからだにはまだ余韻が残っている。

 随分と自分も乱れたものだと苦笑しながら、カミラはベッド脇の窓を開けてみた。



「ん~……なんか窓を開けると空気がウマい! 空もなんだかいつもと違って見える!」



 ここは宮殿内にある軍宿舎でもあるアクメルの部屋。

 騎士団の団長ということもあって特注の広々としたベッドルーム。

 セクシーな紐の下着などを脱ぎ散らかし、床には絶頂して痙攣したまま這い蹲っている女騎士のレーズ、ビアンがいた。

 カミラが英成に食われる直前に先に英成に食べられた二人だった。

 そして……



「か~~~~く~~~~」


「ふふふ~ん……生意気そうだけど寝てると少し可愛いけど~起きろぉ、もぐぞぉ!」


「んおぉおおおおおおっ!?」



 ベッドの上で大の字になって眠る英成の体の一部をギュッとカミラが握ると、英成はすぐに飛び起きた。


「っつ、か、カミラぁ……」

「おっす!」

「…………」

「へへ、お目覚めかい? 坊や」

「ぬぐっ……」


 ニヤニヤしているカミラに、どこか悔しそうな英成。

 そう、英成は……


「くそ……処女相手にまさか俺が先にくたびれちまうとは……」


 カミラと交わって、先にバタンと力尽きてしまったのだった。

 英成のテクニックを受けて、カミラも非常にそれを気に入りはしたものの、先に倒れたのは英成だった。



「でも、仕方ないじゃん。だってあんたは、朝に刹華、宿屋の姉妹、アクメル、でレーズ、ビアンの二人……その後に私でしょ?! あんたドンだけエッチ……って、レベルがすごいことになってるわよ! レベル35!」


「それって、まあまあすごいか?」


「すごいわよ! まっ、私はあんたと1回ヤッて念願のレベル50だけどね~♪ あんだけ気持ちいいことして強くなるとか卑怯だねぇ、私たち」


「ぬぐっ、ぬう……」



 英成は悔しかった。

 確かにエッチのテクニックでカミラに気に入ってもらえたし、体の相性もよかったし、英成もカミラの身体は気に入った。

 しかし、カミラを堕とすことができなかったのだ。


 レミとファソラ、アクメル、そして這い蹲っているレーズ、ビアンは既に英成のテクニックで自分の虜にすることができたのだ。


 だが、カミラは「気持ちよかった~!」と満足はしたものの、虜にはできなかった。

 それが英成には悔しかった。


「なーに? あんたも気持ちよかったでしょぉ? 私の身体をメチャクチャ好きにしてくれたし~」


 と言いながら、美しい胸の谷間を英成に見せつけたり、くるっと一回転してお尻を振ってからかうカミラ。

 英成が先ほど自由にさせてもらったセクシーボディ。


「ああ……まあ……気に入ったけどよ……」

「でしょ? 私もエッチ気に入ったし、これからの旅であんたは刹華と毎日するんだろうけど、たまには私にもしてね~♪」


 カミラもエッチは好きになったが溺れない。

 というより、何だか向こうに主導権を取られたような気がしてならない。

 英成はそんな気分だった。

 

「……今日の俺は全力じゃねえし……」

「ん?」

「い、いつもはもっとスゲーし。お前の言う通り事前にヤリまくってたから力尽きただけだし……」

「ぷっ、あははは、そーなの? それは恐ろしーなぁ~」


 これで勝ったと思うな……と、英成なりの負け惜しみであった。

 とはいえ、カミラはその言葉を受けて、ただおかしくなって笑い……


「んちゅっ♥」

「んむぅ?!」


 英成の頭を撫でながら顎クイからのキスをした。

 本来なら、たいていの事後で英成の方から女にするようなことを、つい先ほどまで処女でキスすらこれまでしたことのないカミラの方から英成の唇を奪った。


「にひひひ~、んじゃあ、回復したら最高の状態で私を頑張って堕としてね♪」

「むぅ、ぬっ、あー、やったろうじゃねえかよ、クソぉ!」


 そんな二人のピロトークであった。

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