第38話 ふしだらな未来
「オルタ知ってるも~ん。おかーさんは、セツカママとアクメルと同じで、おとーさんのこと、だいだいだいだいだ~~~いすきだもん!」
「な、ん、ですって……?」
それは、今のマキナの話ではない。あくまでオルタが未来から来た英成とマキナの子供であるという仮説が真実であった場合の話である。
しかし、本来ならそのあり得ない仮説も、今この場に居る者たちは「絶対にありえないデタラメ」と断言できない。
その上でのこのオルタの発言には、マキナも激しく狼狽えて後ずさりする。
さらにオルタは無自覚に無垢に……
「この間もね……『ねぇ、あなた~、おはよーのチュウは~♥ してくれないと、寂しいわ~♥ プリンセスマキナちゃんのラブラブハートで愛しのあなたにずっきゅんしちゃうわよ♥』……にひ~、オルタ見たもん!」
「な、そそそそ、そんなわけないよあわあああぁああああ!?」
それは、マキナというお姫様のキャラ的にはまるで想像もできない所業。
どこか冷たくツンツンしているお姫様が、そんな猫なで声で男に媚びて甘えるようなことをするものか?
張本人であるマキナは「自分がそんなことをするはずがない!」と言いたそうだが、オルタが嘘をついているようには見えない。
「ほんとだよー! でもね、おとーさんのベッドに~、裸のアクメルがおとーさんと、えっと、合体? したまま寝てて、おかーさん怒っちゃった」
「?!」
「はうわぁ?!」
しかも、それはまさかアクメルまでに飛び火した。
「あ、アクメルゥ?」
「ちょ、姫様、ちち、違います! たた、確かに、わ、私はエイセイとエッチしましたし、らら、ラブラブになれたと思いますが、も、もう、エイセイが姫様にまで手を出して穢すような男だと分かりましたので、今後、こんな男とそのようなエッチなことを……し、しないですよ?」
「なぜどもるのよぉ!?」
それは未来の話。自分たちはそんなことをするはずがない……と、アクメルに関しては強く否定できなかった。
たとえ口では英成を「最低のクズ」と罵ろうとも、もうアクメルの肉体は既に英成の手に落ちて、離れることが出来ぬように完堕ちさせられているのである。
「……ふむ……ところで、オルタ。私はどうなっているのです?」
「ふぇ? セツカママ?」
「ええ。あなたのおかーさんやアクメルさんが、おとーさんとチュッチュイチャイチャしているとき、私はどうしているか、ちゃんと見ているのですか?」
と、そのとき、色々と不機嫌だと分かるニコニコな表情の刹華はオルタに尋ねる。
牢屋の中にいる英成はその笑顔のプレッシャーに思わず身震いする。
すると、オルタは……
「うん、オルタはセツカママのことも分かってるよ~。セツカママもおとーさんと、チューはいっぱいしてるの見てるもん」
「……ほう……チュウ『は』……ですか?」
「うん。おとーさんはさいきん、アクメルとおかーさんとばっか一緒のベッドで寝てるけど、セツカママは一緒じゃない」
「……ほほ~う」
刹華の笑みが更に鋭く、そして禍々しいオーラが背中から溢れ出す。
同じベッドで一緒に寝ていない……アクメルとマキナとは一緒に寝ているのに?
その話から導き出されるのは……
「あらあら、英成くん。未来のあなたはもう私の身体に飽きたようですねぇ~」
「せ、刹華! そ、そんなわけが……」
「そして、私に飽きて、私を抱かず、他の女を抱く……ふふふ、これは……約束が違いますねぇ」
今でこそ、英成は刹華の身体にドハマりして、たとえ他の女に手を出すことがあっても、刹華だけは絶対に手放さないと豪語する。
刹華も、英成が数多くの女に手を出そうとも、自分の身体が一番であり続けるという約束の元で英成に抱かれ続けている。
しかし、未来の英成は……
「あのね、でも仕方ないんだって。セツカママは、お腹に赤ちゃんいるから、ちょっとの間はおとーさんと一緒のベッドはダメなんだって!」
「………………ふぁ?」
「「…………………」」
すると、オルタの口から、刹華も予想していなかった未来の姿を言われてしまった。
「それでね、おとーさんはセツカママとチュッチュできないとダメになっちゃうしガマンできないから、セツカママとチュッチュできない間は色んな女の人といっぱいチュッチュしてガマンする~ってお城飛び出しちゃうから、おかーさんが『おとーさんが誰とチュッチュするか教えて』って、おかーさんからの宿題ぃ~」
と、怒涛の勢いで不確かではあるが未来の情報をボロボロと話していくオルタ。
「あれ? でも……そうだよぉ! セツカママお腹がおっきくない! それに……おとーさんと同じベッドでチュッチュしてたぁ! なんで? もう、オルタの弟か妹、産まれたの!?」
そして、オルタも急に「ハッ」として思い出したかのように慌てだした。
どうやら、オルタの知っている未来の刹華は既に妊婦でお腹も膨れている様子。
そんなオルタに刹華は、先ほどとは打って変わった微笑みで……
「大丈夫ですよ~、オルタ。すぐにまた……ママのお腹は大きくなりますから♥」
「ほんと~? オルタの弟か妹はいつなのぉ?」
「さあ、分かりませんけど、頑張ります。……ここで、オルタに姉か兄がいるかを聞くのは色々と歴史上まずいでしょうか? 現時点の私と英成くんはアフピルと避妊が前提ですし……それもいつ解禁になるのか……そもそも未来の私は何歳で孕んでいるのでしょうね? ……ふふふ、とはいえ、素晴らしい未来のようですね♪」
暗黒面から急に聖母の微笑み。
その一瞬で空気の変わった刹華だが、他の者たちにはそれどころではなかった。
「ちょ、う、うそでしょ……こ、子供までできているのに、それでもさらに色んな女性と、ひ、卑猥なことをするような男と……ほ、本当に私は結婚を?」
「そ、そして、わ、我も、完全に……そんな、あ、愛人のような関係で……」
もはや震えてその場に立ち尽くすしかないマキナとアクメル。
一方で、刹華は……
「それにしても、なるほどなるほど……そういうことですか……私は妊娠中……英成くんとの……えへ♥ ん、んん……そ、それに、未来でも、英成くんは私の身体を……妊娠中でエッチできない私への欲求不満禁断症状をこじらせて、色んな女性に手を出して自分を慰めるしかないと……うふふふふ、英成くんは未来でもそんなに私に夢中なのですねぇ♥」
先ほどまで、英成を殺してしまいそうなほど病んでいた刹華が、聖母に変わり、そして今では大和撫子の面影ないほどデレデレのご機嫌になってしまった。
とりあえず、助かったようだと、英成も牢屋の中で安堵した。
――あとがき――
お世話になっております。
前々からお話ししておりますが、本作はカクヨムコンテストに参加させていただいております!
現在、【読者投票期間】中です。
読者選考は☆やフォロー数で争われますので、何卒フォローとご評価をお願い申し上げます。
下記の【☆☆☆】を押して【★★★】にしていただけると嬉しいです。
何卒ぉおおおおお_(꒪ཀ꒪」∠)
今後の執筆のモチベーションが高まりますので、ぜひ応援よろしくお願いします!
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