第4話 事後に混乱
文句を言いながら英成を責める刹華だが、何だかんだで英成との絡みつきや接触を中断したりせず、学び舎の中だということも関係なく、二人は交わった。
「……あっ、そろそろ戻りませんと……」
「ん?」
「ふふふ、こうして甘えん坊なあなたをイイ子イイ子している時間も名残……って、べ、別に私はあなたに事後に赤ちゃんのように甘えられることが心地よいとかそういうことはありませんからね!」
「おお」
生徒会長室の椅子に座っていた英成に跨っていた刹華は、自分の胸の中で休んでいた英成の頭を撫でていた手を止めた。
「でも、少し前までと比べると、やはりあなたも喧嘩の数が少なくなりましたね」
「あん?」
「だって、少し前までは喧嘩の数とエッチの数が同じくらいでしたけど、最近のあなたはエッチの回数の方が多いのではないですか?」
一通りの事を終え、脱ぎ散らかした下着を穿き直し、体をウェットティッシュで拭いて消臭スプレーを浴びながら、刹華は不意にそう口にした。
そして、そのことに英成は否定できずに押し黙った。
「去年までは街でアレだけギラギラして、最強だの無敵だの子供のようにはしゃいでいたのに、今のあなたは大人しいただのヤリチンのクズですからね」
「ん、んだよ……そのクズと嬉しそうにヤルお前は何だよ。ムッツリビッチめ」
「ふふ……それもそうですね。私も……もう随分と両親や周囲の期待を裏切る不良娘ということですね。でも……それはあなたに堕とされたという理由がありますしね。そうなるとあなたの場合……」
英成の嫌味な返しにも揺らぐことなく余裕で流し、その上で刹華はジッと英成を見つめ……
「やはり……他の四王者と呼ばれた人たちが消えたからですか? あの人たちこそがあなたの生きがいでしたし、あなたがやる気をなくしたのはそれからですよね?」
「……」
その問いに、英成は何も言い返せなかった。それは図星だったからだ。
「そういえば、何で四王者の三人は居なくなってしまったのです?」
「さーな。行方不明だってよ。三人ともこの街どころか家にも帰ってねーらしい。ただ、あの三人が帰らないのは日常茶飯事で、連中の家族も真剣に心配してねーし、警察も動く気ねーってよ」
「そうですか……」
そのとき、寂しそうな迷子の子供のような表情で英成は答えた。
不貞腐れて投げやりに。
「ん」
「ん……」
その表情が、刹華にはたまらなく、もう一度だけ英成にキスをした。
「ふふふ、あなたもそういう顔をするのですね。エッチの時はオラオラ系なのに、賢者タイムになると子供のようになる。そういうところを見せるから卑怯なのですよ」
「お前……」
「まっ、まぁ、安心してください! しばらく寂しい思いだけはさせませんので! あなたのようなエッチなヤンキーの被害となる女性を少しでも減らすため、私が体を張ってあげますので!」
「おーおー、ありがと、幸せ幸せ」
「ふ、ふん、そんな淡白な返事をしたって無駄です! 賢者タイム中に私の胸に赤ちゃんみたいに甘えるくせに!」
「っ、う、うるせーよ。クセなんだよ……」
「とにかく、今日はハレンチパーティーよりも、アニメ鑑賞が優先ですからね!」
互いにどこか歪んだ想いを持った同士の奇妙な関係性の二人。
恋人同士ではなく、セフレのような関係。
そんな関係を表向きは優秀で品行方正で真面目な生徒会長である刹華は受け入れ、一方で英成も他の多数の女生徒関係を持つものの刹華に関しては少し特別な想いはあった。
「ん……スマホにメッセージ……あ」
そのとき、英成のスマホに通知音がする。
刹華も自然とそれをのぞき込むと……
『いえ~~い! 放課後まで暇だからオッパイ送ってみた♥』
と、ビッチギャルたちとのグループメッセージで、三人のギャルが上半身裸の写真が送られてきた。
それを覗き見た刹華は、にっこり微笑んで英成からスマホを取り上げ、カメラの機能を使って、英成の頬にキスする自撮りをして送りかえした。
『今日の昼食は美味しかったです♥』
と。
してやったりな表情の刹華に苦笑する英成。
すると一斉にリプライがあり……
『は?』
『ちょっ、セッちんずりーし! ペナルティーだし!』
『マジそれ。同じ学校ならヤリ放題不公平~』
『今日、セツカもくんの? でも本番禁止だから』
『おあずけ。ステイだから』
『一人でアニメ見てろ』
しかし、それを勝ち誇った笑みで最後まで読まずに刹華は英成にスマホを返した。
「さて、そろそろ教室に戻りますよ。あなたも出るのです。留年は許しません」
「へっ……バレたら退学同然のことをしている不順異性交遊生徒会長のくせに」
「なっ、そ、それは、あなたの所為です! いつも気持ちよく……ではなくぅ!」
「カカカカカカカ!」
そんな話をしながら生徒会長室の鍵を開けて廊下に出る二人。
すると、
「あら? なんでしょう?」
「ん?」
教室に近づくにつれてやけに騒がしく、人だかりができていることに気づいた。
「あの、すみません。ちょっと通してください」
「おら、どけよ。何をたむろってん……」
二人が来たことで左右に道を開ける人垣。
そしてその奥には……
「うう……ひっぐ、おとーさん、どこぉ? おとーさん……イジワルしないででてきてよぉ~」
「……えっ!?」
そこには泣きじゃくる幼女。その姿を見て顔を青ざめさせる英成。
「え? 迷子? なんです? あっ、すごいかわいい……ですけど……」
「あ、アレは……な、なんで?」
汗がダラダラ止まらない英成。その泣いている幼女は紛れもなく……
「あっ!」
そして幼女は英成の姿を見つけた瞬間、パァと花が咲くように笑顔を見せて……
「おとーさんっ!!」
「「「「「ッッッッ!!!!????」」」」」
英成の胸の中に飛び込んだ。
その衝撃に口開けて固まる刹華や生徒たちは数秒の静寂の後……
「「「「「ええええええええええええええっっ!!!???」」」」」
学校中に響き渡る声を上げた。
「俺は、おとーさんじゃないっちゅーに!」
「やー……やー! おとーさん、オルタいいこになるよー……だから……だから」
どうしていいのか分からずに、怒鳴りながらアタフタする英成。
あまりの事態に他の生徒たちも対応に困っている。
そして、未だに泣き止まぬ幼女のオルタ。
「なんでオメーは校舎をうろついてたんだ! 俺がここに居るって何で分かった!」
「ひっぐ……らって……おどーざんのにおい……」
「におい? 臭いってことか! どっちにしろ、一体どういうことだってんだ!」
英成もオルタも、最早互いに会話できる状態ではなかった。
少し両者を落ち着けなければならない。
そう思って動いたのが、刹華だった。
「す、少し落ち着くのです、英成くん。えっと……オルタちゃん……でしたね?」
優しく微笑みながらオルタをあやすように頭を撫でる刹華。
するとオルタは涙を擦りながら刹華を見た瞬間……
「あー、セツカママだぁ!」
「へ!?」
「セツカママ~ぎゅう!」
「え、え……ええええ!?」
なんと、オルタは刹華のことを「ママ」と呼んで刹華に飛びついたのだった。
「「「「「ええええええええええっっ!!!???」」」」」
これには更に衝撃を受ける英成とクラスメートたち。むろん、刹華本人もだ。
「ちょっ、刹華! お、おまえ、いつの間に俺の知らないところでガキを!?」
「そ、そんな、え? そんなはずはないでしょう! 私は産んでません! というより、あなたをおとーさんと呼んだのはどういうことですか!?」
あまりの衝撃の事実に英成も刹華に詰め寄るも、刹華はまったく心当たりが無いと全否定。
しかし、こうもオルタがハッキリと言っている以上は、嘘とは思えなかった。
「うるせえ~、お前いつの間に……しかもこれぐらいの大きさ……おい、オルタ! お前、いくつだ!」
「ふぇ? えっと……よんさいだよぉ?」
親指だけを曲げて、指を四本見せるオルタ。
「四歳……俺らが16だから、テメエ小学生か中学生の頃に? その頃に!? しかもそのときは俺たち出会ってねーし……どこの男との子供だ!」
「ふ……ふざけないでください! 私はあなたとしかエッチしてませんし、しません! それに私が去年あなたでロストヴァージンしたのはあなたが良く知っているでしょう! それに私は常にちゃんとピルを飲んでいます!」
「「「「「え………」」」」」
「あ……しま、あ、あああ、皆さん、ち、違うのです、その、わ、私と彼はですねぇ……」
「「「「「ええええ、二人ってそういう関係だったのぉ!!??」」」」」
ドサクサ紛れで思わぬことがバレてしまった。刹華は顔を真っ赤にして誤魔化そうとするが、もう遅かった。
「そ、そんな……こ、近衛が……」
「あ、寝虎くん……ちょ、待ってください! 違うんです! たしかに英成くんとはたくさんエッチはしてますけど、本当に私の子供じゃないんです!」
「た、たくさ……ん」
「あ、たくさんではありません! 語弊です! 彼の家に泊まるのだって週3ぐらいに控えているんですから!」
「あ……が……う、うそだ……ああああああ、うわああああああああああああああ!」
で、いつの間にか失恋した空手部の男が走って逃げだした。
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