第15話 仮説証明のためのH♥

 レベル。それはこの世界において、その生物における強さを示した基準。

 魔法を操る魔力。パワーやスピードなどあらゆる要素から算出された数値。

 そのレベルは誰にでも備わっている者であり、胸元の痣のような紋様がそれを示している。

 肉体の成長、修行、戦闘、日常生活の中で自然と鍛え上げられたものなど、様々な要因でレベルは上がる。



「で、一般的な男はレベル5……女は4ってのが平均的って国の調査が出ていたかな。そして、レベル10以上あれば魔法学校とか、騎士養成学校とかに進学できたり、20以上もあればそれこそ色んな働き口が……って、こんな常識知らないってことは、あんたたち本当に異世界から来たってこと?」


「なるほどね……んで、俺は20で、刹華が19と」


「ふむふむ……レベルが公開制というのは面白いですね……つまり戦闘などで相手が自分よりもレベルが上か下かが見ただけで分かるということですね」



 部屋でカミラの話を聞いた英成と刹華はシーツを纏った状態のまま頷いた。

 二人とも、シーツの下は裸のまま。

 

「って、だから服着なさいよぉ!」

「うるせぇ、良い所で中断したお前が悪い! 俺ァまだ臨戦態勢中だってのに、責任取れこらァ!」

「おやめなさい、英成くん! オルタがいます……というか、カミラさんはあなたよりレベルが上ですよ!?」

「ひゃっ、ちょ、隠しなさ……わ……う、うわ……」

「お~、おとーさんすご~い」


 昨晩は結局三人とも疲れてしまい、話をする前に寝てしまった。

 だが、本来ならば話すべきこと、聞くべきことが山ほどあった。

 英成もようやく認めた、この世界が異世界であるということ。

 なら、この世界はどういう世界なのか。元の世界へは帰れるのか。自分たちはこれからどうすればよいのか。

 色々と考えることは山積みだったのだが、最初の話はこの世界の住民であるカミラが疑問を抱いている、英成と刹華のレベルについてであった。



「で、なんであんたたちのレベルが上がってんのよ……私は隣の部屋で寝てたけど、その間に何かあったの? 成長期? でも、二人同時に寝るだけで上がるなんて……そもそも成長によって自然に上がるレベルは5まで。そこから先は経験をつまないと上がらないもんなのよ?」


「いやあ~、俺も爆睡していたし……寝る子は育つってことか?」



 そう、何故朝起きたら二人のレベルが上がっていたのか。すると、話を聞いていた刹華があることを思いだした。


「そういえば、英成くん。私たちがこの世界に来た時……私たちのレベルはあなたが8で、私が7でしたよね?」

「ん? あ~そういえば……でも、その後あの変なクスリを飲んで、気づいたら13と12になっていたよな?」

「え!? ちょ、うそでしょ!? じゃあ、一日でレベルが10以上も!? どうしてそんなこと!? っていうか、クスリ? レベルが上がるクスリなんて聞いたことないわよ!」


 そう、二人ともこの世界に来た直後のレベルは一桁であった。しかしその後レベルが増えた。そして今も。

 盗賊やゴーレムたちを倒したときにレベル上がった時とその二つとの違い。そして共通点。

 それは……


「あ……ま、ま、まさか……」

「刹華?」


 そのとき、刹華はある仮説が頭の中に思い浮かんだ。


「い、いえ、いえいえ、し、しかしそんなこと……い、異世界転移の特典でそんなことは……い、いえ、し、しかし……」


 急に顔を真っ赤にしてブツブツと呟いて頭を抱える刹華。

 その様子にカミラと英成も訳が分からなかった。

 しかし、しばらくそうしていた刹華はグッと唇を噛みしめ……


「カミラさん、オルタと一緒に少し部屋の外で待っていてください」

「え? は? なんで?」

「いいですから! 少々確認したいことがありまして……」


 何やら気まずそうな顔で目が泳ぐ刹華。明らかに普通ではない。

 しかしその圧力に押され、更にはオルタを押し付けられたカミラは訳が分からず部屋の外へ。

 そして……


「い、一体なんだってのよ……」

「ね~、おとーさんと、セツカママどうしたの?」

「さぁ……」


 部屋の外へ出された二人。そして中からは……


「おい、刹華一体……うおっ!?」

「ほら、ヤ、ヤリますよ?」

「うお、随分積極的だな……まっ、俺は全然いいけどな!」


 急に中から聞こえてきた刹華の艶のある声。


「え? ちょ、え? セツカ? え? え、えええ?」


 妙な液体や、何かを舐めたり擦りつけたりする音が部屋の中から聞こえてくる。

 そして……


「ちょおぉおおおおおおお!? あ、あんたたち、な、なにを!?」

「?」

「お、オルタ、耳を塞いでなさい! ってか、ええええ!? 私も大概メチャクチャやって人を驚かせるほうだけど、えええええ!?」


 中を見なくても、「経験のない」カミラでも中で何が起こっているのかが分かる。

 そう、男女の営みが唐突に始まっているのだ。


「う、うそでしょ? こ、こんな朝から……わ、ぁ……」


 ペタンと廊下に座り込んでしまうカミラ。心臓のどきどきが止まらず、体も熱くなり、自然と下半身が熱くなってモジモジしてしまう。



「あっ、鍵穴から中を見れる……ふぁっ!? な、なに、あんなにキスして抱き合って……わ、あんなに激しく……え? ……セツカ……幸せそう……」


「カミラ~、おとーさんとセッカママどうしたの? オルタにも見せて~」


「だ、だめだめだめ! ぜ、絶対に見ちゃダメ! オルタには早いから!」


「え~! 見たい見たい~!」


「あ~~もう、どうなってんだっつーのぉ!」



 自分でも肌を露出する大胆でセクシーな格好を常にしているという自負はカミラにもあった。

 しかし実はそういう経験もない。

 そんな自分が自分よりも年下の男女の交わりに腰を抜かしてしまうとは思わなかった。

 だが、それでもカミラはオルタを押さえながらも目を離せなかった。

 


「あれって……そんなに気持ちいいのかな……?」

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