第3界 異世界でも無職だったりしたけれど俺のキノコは元気だす(3400文字)

 無職職歴なし、彼女居ない歴30歳。

 とっくに人生終わってる小太りブサメン、ナイスガイ――風の男が、

俺の住んでるマンションに住んでいた。

 

 もっとも、俺も似たようなものだが。

 違うと言えば、俺はまだギリ魔法使いではない29歳だ。


 人のこと言えた義理ではないが、以前から、気味の悪い魔法使いが住んでるなとは思っていた。

 全く挨拶もないしな(俺もしないが)


 ――何か暑いな。臭いな。なんだこれ? と思ってたところ……。


 俺は死んだ。


 気味の悪い魔法使いが、エクスプロージョン! とばかりに、マンションにガソリンを大量に撒いて火を放ち、俺までとばっちり受けたという。


 ――そう神から聞いた。


「最近、異世界転生やらが、もういい加減にしろ的に廃れてきておってな、どうじゃ、ひとつ乗ってみんかの? 盛り上げてくれるなら、良いモノ付けるぞ〜い」


 まさか、俺にもこんな日がこようとはな……。


 ここで、とんちの効いたモノ――例えばオッパイなんぞ付けてもらうと、後々、苦労する事になるかもな……。

 ここは無難にかつ慎重に……。


「……どう考えてもイケメンになってみたい一択しかない?」


「イケメンなら、良いモノはそれで終わりじゃ。その姿のままなら伝説級の武器をひとつといったところか」


「で、でで伝説級の武器とは?」


「僧侶の魔法をMP消費せず全て使い放題のカドゥケウスの杖とかな」


「ほ、ほ他には?」


「そうじゃな、1/12スケールの無限太陽エネルギー供給式ハイパービームサーベルがあったのう」


「両方よこせ!」

「ひっ?」

「それと、異世界言語も解るようにしてな」


「そ、そ、そこまでとは、このごうつくばりめ!」


「だってよ、転生でなく転移だろ? お、俺は、世にも不幸ぉぉぉな小太りブサメンナイスガイ、無職職歴なし、彼女居ない歴あと6時間で魔法……」


 *


 身長3メートルほどのゴツい、ミノタウロスと戦ってる冒険者パーティーを目撃した。


 うむ、確かに俺は今、剣と魔法の中世ヨーロッパ風世界に立っていた。


 俺の手には、今、カドゥケウスの杖と1/12ビームサーベルがあった。


 早速、行くところは冒険者ギルドだろ! と向かった。



「な、なん……だと!?」

 ……冒険者ギルドの受付け嬢の話によると、この世界には、冒険者職が〈戦士〉〈僧侶〉〈魔法使い〉〈忍者〉しかないという。


 マジか! ファミコンか! ドラ◯エIIIより少ないじゃないか! この世界は8ビットか!


 くっ、むう……。そんな少ない職業の中からどれを選ぶべきぃぃぃか!

 更に、各職業の詳細を尋ねてみた結果も結果……。


 何故かこの世界では、戦士になると杖が装備出来ないと言う……。

 僧侶、魔法使いでは、ビームサーベルが。

 忍者にいたっては、どちらも……。


 いずれの職業、どれかに決めないことには、冒険者として認められず、クエストすら受注出来ないというのだ……。

 しかも、一旦職を決めると後から変更出来ず、ジョブチェンジという概念すらなかった…………。


 戦士か僧侶か? 

 どちらでも、それなりに活躍出来そうだが、折角、神から貰った伝説級の武器だ。

 両方使って活躍したいだろ!


 

 俺は、無職のまま、途方に暮れつつ、街をぶらついていた。

 

 民家の窓から、咳き込む声が聞こえた。

 目をやると、窓の中の薄暗い部屋に、女がベッドに伏せってるのが見えた。

 何やら、病気で辛そうだ。

 ――あ、俺、このカドゥケウスの杖で治せるんじゃないのか? 伝説級だし、おそらくひと振りで。


「あの、もし。病気で辛そうな様子なので、よろしければ治療しましょうか」


「お医者さまなのですか? ゴホコホ」


「そのような者です」

 シレっとそう言うと、よく見ると思いのほか若かった10代半ばくらいの少女に、どうぞと、中へ入って診察する許可を得た。


 結構、可愛い子だった!

 おそらく、この杖なら一瞬で治せてしまえそうだが、一応、脱いでもらうおうか。

 全部な。


 更に、丹念にからだの隅々までよおく見て、触診してるうち、生まれて初めて触れる素晴らしい女体に、思いのほか早く辛抱たまらなくなってしまい、最終的に杖ひと振りして完治させた。

 謝礼を受け取ると感謝を聞くのも早々に、人目に付かぬ馬小屋の中へとしけこんだ。おぅふ!



 その後、病気や怪我で困っていた街の住人たちを治してまわっては、謝礼を受け取り、それなりに小金持ちになっていた。


 可愛い子だけは、それはもう穴のあくほど丁寧に診て触診したが、男にジジババなどは杖ひと振りで。


 俺はもう、この世界では医者になるううう! とまで思ったのだが、そこにも問題が。


 街の住人の話によると、医師になるのもそっち系のギルドに登録し、資格ライセンスを得る必要があった。


 資格……。

 中学2年で不登校になったという、俺の学歴からして、何時間も、あるいは何年も講義を受けることになるのだろうなと思うと、クラクラと思いっきり目眩がした。

 アホな俺には、ムリムリムぅリい〜ッ!


 この街には刑務所もあった。

 鈍い銀色の甲冑を装備し、槍を持った威圧感パネェ門番が二人……。


 うわあああ! ご、ごめんなさい!!

 もうしません!

 医者でもないのに、調子こきましたぁぁぁ!



 翌日、宿を後にした俺は、半ば途方に暮れながら、街を出て魔物の姿を探していた。

 カドゥケウスの杖の力は試したが、ビームサーベルはまだだったな、と。


 森に入ると、ワイバーンと戦っていた3人の冒険者パーティーを見かけた。

 3人共ボロボロで全滅寸前!

 ビームサーベルを使う俺の出番だ!

 俺はそこへ颯爽と入って、杖で3人を回復させつつ戦った。

 戦闘終了後、話を聞いた。


 手強い魔物と遭遇し、1名死亡したという。

 戦士をはじめ全員のHPは回復させが、僧侶と魔法使いのMPは回復手段がなかった。


 俺は、彼らを街まで送り届けることにした。

 魔物と遭遇エンカウントしたら俺が前衛で戦おう。


 途中、ワータイガーと5回遭遇した。

 戦闘は全て、ビームサーベルひと振りで終了だった。


「あたしたちでもかなり苦戦する相手を、い、一瞬で消し炭に…………」


 ようやく、街が見えてきたところで、美しき斧戦士が切り出した。

「あたしの名はカーミィ。我々は3人パーティーとなってしまった。あんたは、相当な戦力になりそうだ。良かったらうちに入ってくれると助かるのだが」


 黒髪妖艶の魔法使いの子も可愛いかったし、中でも最も幼く中学生くらいの、水色ロングヘアの弓僧侶の子が特に好みだったので二つ返事でオーケーした。


 ところが、問題発生。

 冒険者でない者は、パーティーに加えてはいけないという規則があるとか!


 しかし、俺は戦士になると、僧侶の力を失ってしまうし、僧侶になると戦士の力を失うのだ。

「今この、無職状態が一番最強なのだ! それを伝説の勇者と言う!」


「うっ、確かに、戦士か僧侶か、いずれかにしてしまうには実に惜しい…………」


 3人は、どうしたものかと、頭を3日は抱えていた。



 俺は、依然、無職のままだった。

 テキトーな家を借りて、そこを根城とした。


 カーミィたちは、表向きは1名失ったのに4人パーティーを装っており、

ギルドでクエストを受注すると、

街を出たところで落ち合って、俺も加わり冒険するということとなった。

 

「クエストの報酬は、4等分ということいいぞー」


「本気か!」「マジ?」「本当にですか?」

 えっ、そんなに驚くことなのか?


 カーミィは、更に言う。

「報酬の半分は持っていってくれても! そのくらいの活躍してくれてるんだ。あたしたちも随分助けられてる」


「あー、いいって、いいって」

 なんせ、ブサメン無職だ。そんな俺を仲間にしてくれるだけでもありがたい。

 しかも、いい匂いでたまらんハーレムンムンパーティーじゃないか。


 ……じゃ、まあ、ちょっとだけと簡単な条件を出すことにした。


 1 恋愛は禁止。女子は、時々ユニコーンに乗ってもらいチェックする。

(全員乗れた!)


 2 冒険時、専用ユニフォーム着用の事。


 専用ユニフォームとは、俺が仕立て屋に特注した、女子の体操着だ。

 下は、勿論ブルマである。


 この世界の住人には馴染みのない装備なのだ。変に思われることもなかった。


「そんな、条件でほんとに良いんですか? あなた、良い人ですね!」



 冒険に出る折り、3人は俺ん家に来て、専用ユニフォームに着替える。

 冒険から帰って来ると、俺ん家で専用ユニフォームを脱いでゆく。


 ユニフォームは、俺が責任を持って管理。

 ほころびを繕ったり、洗濯もせねばな。


「いつも、良い匂いですぅ。それにとても動き易いですし」

 と喜ばれてる。


 うむ、俺もキノコが、ムクムク非常に喜んでいるな。


 

 こうして、俺は無職でも本気出している。


 

 〈おわり〉

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