第2界 おっぱい魔女のグリムなスローライフ(3400文字)

 大学2年になって、ようやく彼女というものができ、童貞にさよならをした。

 バラ色の時代が幕開けかと思われたが、そうではない。


 彼女の名は乳草ちぐさチサというのだが、自ら「ミダラ姫」などと理解に苦しむ源氏名を名乗った。

 その時点で気がつくべきだった。


 チャットアプリのメッセージの未読が999件になってるのも頻繁だし、俺のPCにスマホの中身はチェックされたり……もうその面倒くささたるや、想像の斜め上を行っていた。

 

 夏場ならともかくリスカの痴女絵なんて脱いでみるまで判らないだろ!(貧乳だった)


 ……メンヘラでヤンデレ。


 そう、俺は見事に地雷を踏んでしまったのだ。


 つくづく疲れ果ててしまい、別れたかった。

 しかし、別れてくれない。

 ああ、どうしたらこの悪夢から抜け出せるのか……と、そんな中。


 俺の家に同年代くらいの女の子が訪ねて来た。

 少しばかり、会話を交わしたところで、チサがやって来ており、こちらを凝視していた事に気がついた。

 

 その直後だ。俺はチサに刺されていた。

 ……新興宗教の勧誘にすら嫉妬に狂うとか。



 俺はそのまま死んでしまい、だが、別の世界で生きて行く選択肢を与えられた。

 異世界転移とやらをしたのである。

 俺の肉体は修復され、異世界言語を話せるよう何やら脳内を調整され、ひとつだけ〝良いモノ〟を持たされて。


 剣と魔法の中世ヨーロッパ風の、この世界で第二の人生を。


 ――女として。


 結論から言おう。

 俺をここに転移させてくれた神から貰った〝良いモノ〟とは、チートが出来るようなシロモノではなかった。

 決っして…………。


 その後、夢の中に一度だけ現れた神は言った。

『おまえさん、好きじゃろう』

 まあ、端的に言って好きだが。それが?


『どんなに好きにしたって良いんじゃぞ!』

 はあ……。


『これからは、自給自足が出来るな』

 は?



 俺の胸には、今、立派な巨乳のオッパイがある。


 可愛い女の子に転生したというわけではない。

 男である俺の身体にオッパイがあるだけだ…………。

 確かに……立派なオッパイを付けてもらうのも悪くないなと言ったよ! でもそういう意味じゃ……ああ。


 神は、異世界に相応しい初期装備も付けてはくれていた。

 女もんのだが(……ブラは助かった)



 まぁ、くよくよしてもどうとなるわけじゃなし。

 何も無いよりは良い? 悪夢からも解放されたし、折角の第二の人生だ。

 まずは、冒険者ギルドとやらへ向かおう。


 俺としては、前衛職の魔法戦士とかが良かったのだが、なにせネカマだ……いや、この場合、リアカマと言うべきか。

 一人称も「俺」ではなく、「あたい」に改めるべきか……。いや、オネェ言葉なんて我ながらキモい。

 今後は「わし」としよう。


 目立たない方が良かろうな。

 後方から魔法を使う魔法使い……魔女として、ギルドに登録した。



 わしを入れてくれるというパーティーも直ぐ見つかり、クエストをこなす中、次第に魔法のコツも覚えていった。



 そこそこに活躍し、軍資金も充分貯まった。

 わしは、異世界で過ごすうち、男どもの居ない田舎の方で、第二の人生、スローライフを謳歌しようと考えるようになっていた。


 ……男どもに言い寄られたり、揉みしだかれたり、レイプされそうになったりしたけれど、

わしは元気です。



 わしは辺境の村に土地を買った。

 おとぎ話にでも出てきそうな、可愛い塔もある点が気に入った。

 そこで畑を耕しながら、静かにセクハラの傷を癒そう。

 野菜や果実、冒険者に必須の回復アイテムなどの素材を栽培するのだ。


 隣りには無精髭の旦那にやたら若い嫁の夫婦が住んでいた。

 この世界では中学生くらいでも嫁に行くのも珍しくないらしい。

 嫁の方は、水色のロングヘアに年齢の割にやたら発育が良い巨乳。

 わし好みだな。


 新生活が始まって直ぐ、その人妻が訪ねて来た。

 金を貸して欲しいとのことだった。

 何でも、旦那の方は働くでもなく、明るいうちから酒を飲みポーカー三昧だと言う。

 異世界におけるパチンカスみたいなもんか。


 それで、借金がかさんでるらしい。

 金は貸してやってもいいが――畑をやるのも人手が欲しかったところだ。

 うちで働いてももらうという事で承諾した。


 しかれども、膨れ上がる旦那の借金……。

 人妻には、畑を手伝ってもらっているが、このまま金を貸し続けていては、俺の蓄えも減ってゆく一方だ。


 もう金は貸せん。

 そうきっぱり言うと、人妻は、人妻最終奥義に打って出た。

「あたしと一緒に、湯浴みなどいかがかしら」

 中学生くらいにしか見えないと侮っていたが、そこは人妻だった。


 こ、これで金を貸すのは最後だ!


「魔女さまって、殿方だと気づいておりましたの。男の証だって……ほら、もうこんなにして」


 ……わしは、これまでの二倍……いや三倍は働くようになった。

 しばしば、NTRというものにも耽るようにも。

 なかなかに苛烈を極める、巨乳と巨乳のぶつかり合いだった。



 そうこうしているうち、一年が経とうとする頃には、苦労の甲斐もあり、畑も想像以上に良く実っていた。

 わしの種も実っていた。


 人妻は、わしの子を妊娠。そして、出産。托卵たくらん

 人妻に似て美形になりそうな女の子だった。

 

 しかし、驚くべきは、その子は生まれながらにDカップはあった。

 巨乳の母と巨乳のわしの血を引いたせいだろうか……。


 人妻は、貧しくとても育てられず、里子に出すと言うので、わしが引き取る事にした。


 その子は育つにつれ、産みの母より、やけにわしの方にべったりになっていった。


 2年もすると、早くも言葉らしい言葉を話すようになっていた。

 幼い割には流暢に話せるようになったななどと思っていると、

娘は驚愕の内容を話し出したのだ。


「私、この世界のこの肉体に転生した乳草チサ、ミダラ姫よ。発作で、王子ぃ、あなたを刺してしまった後、ミダラも後を追ったのぉ」


 ――マジか! 

 ……こんな所まで後を追うとか、ヤンデレ執念恐るべし! 


 娘……のような元カノ、チサは幼いと可愛いもんだが、おちおち人妻とイチャコラも……。


 よって、塔の最上階の一室に監禁しておくことにした。

「ミダラ、こーゆープレイ嫌いじゃないよ。王子の所有物にされてるみたいで嬉しいぃ」


 その塔の一室は、窓があるだけで出口がない。

 梯子はしごを掛けて、食事を運んだりと登り降り。

 トイレも水洗式に改造し、浴槽も設置した。



 チサが14になる頃には、オッパイがトンデモになっていた。


 チサの部屋へと出入りする方法も変わった。


「チサよチサ、オッパイを降ろしてくれ」

 そう声を掛けると、

チサはとんでもない大きさの進撃の爆乳を、


 ――ずどぉぉぉぉぉぉん!


 と、降ろしてくれる。

 それを梯子代わりによじ登るのである。



 ある日、そんな様子を見ていたらしい身なりの良いおっさんに声を掛けられた。


「あのような見事な胸の娘に、乳を貰いながら抱かれ安らぎたいものよのう」


 理解できん性癖だ。赤ちゃんプレイというものか?

 日本円にして、30分ほどで1万で手を打った。


 その話が、次第にクチコミで広まり始めたらしい。


「最後尾はこちらになりまーす!」

 人妻が看板を持って叫んでいた。

 塔の前には、ついに長蛇の列が出来てしまう迄に至った。


 わしとチサは大儲けだった。

 更には、この国、リュバッハの王子もお忍びでやって来ており、熱心なリピーターだったらしい。

 側室としてチサを迎え入れたいとの申し出があった。


 チサには、その申し出を受けるようにと必死こいて説得。

 わし離れしてもらう良い機会じゃないか。

 わしとは肉体的には親子であり、まさか結婚して子を儲けるわけにはいかないだろ。

 劣勢遺伝子が継がれるリスクってのをよ〜く言い聞かせた。


 チサは何とか、わしのことを諦め、卒業してくれたのだった。

 やはり、リアル王子という肩書きに惹かれたようだ。

 バンザーイ!


 わしとチサは、身分的にはさほどだが、貴族となり、隣りの人妻を囲うくらい余裕の、悠々自適の暮らしをするようになった!


 わしは、この世界では、ネカマならぬリアカマだが、遂に成功を収めたリア充カマなのだ!


 ……と思ったのも束の間。

 

 チサは何処で、そんなブツの製法を覚えたのか、王子を毒殺してしまったのである。


 ――とんでもないことをしてくれやがった!


「だってぇ〜。私以外の女にデレってなるなんて許せな〜い」


 だが、リュバッハ第三王子も赤ちゃんプレイ性癖だったらしく、その凶行を巧く揉み消してくれ、事なきを得た。

 わしは巨乳を撫で下ろす思いだった。


 チサは、今は第三王子の……側室だ。


 

 王子がどうにか生き延びるよう、ただただ願い、祈るばかりの地雷と共に生きる今日この頃だった。 



 〈おわり〉

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