第96話 第二回イベントは創作系イベント

「そういえば、第二回イベントはクラフト系みたいだね。」


 マロン、トリス、アクア、クマモトの4人が集まっているマロンハウスの外。


 庭を駆け巡っているイノブタ達を余所に、4人のプレイヤー達は先日発表されたばかりのイベントについて語り始めた。



 

「生産職以外には楽しめるかは微妙だよね。」


「前回の闘技場イベントは戦闘系以外には微妙でしたけど。」



「優勝したマロンは戦闘職ではないんだよね、これが。」


 マロン、アクア、トリスと続いて話す。


 実際トリス以外は戦闘職ではない。メイン職としてはマロンは一応回復職、アクアも生産職である。


 現在は職種を次々と入れ替える事で、多少は変化があるものの、戦闘をメインにはしていない。


 マロンの作ったものが少しおかしいため、序盤では通常太刀打ちできないはずの惑わしの森や闘技場都市周辺の魔物でも成果を出せている。



「そういえば、クマモトさんの称号って物凄く卑猥だよね。」


 クマモトらぷたはこれまでの行動等から【称号:マーラ様】【称号:イソノカツオ】を取得している。


 マーラ様はとあるRPGをプレイしていれば簡単に想像もつくのだが。


 イタリア語でいぉその、かっつぉ(io sono cazzo)とは、私は男性器ですという意味である。


 つまりはプレイヤーである中の人は女性だが、アバターは男根としか形容のしようもないのである。



「本当にこれでモザイクとかないのが不思議。」


「そうですね。運営も思い切った表現をしてますね。」


 件のマーラ様を使用しているゲームも見た目はそのままであるため、ギリギリセーフなのだろう。


 




「そういえば、イベントでは何を作るとかって決まってるのかな。」



「それは当日のお楽しみみたい。でも素材を集めるのに採取したり討伐したりもあるので、生産職以外にも貢献できるみたいですよ。」


 マロンが訊ねると、説明を読んだアクアが返答する。


「生産職の制作物の方が貢献度は高いですが、素材提供部門というのもあるみたいなので、戦闘職も恩恵があるので完全無視というわけでもないようです。」


 姿からは想像も出来ないが、丁寧な言葉でクマモトがアクアの説明に追加する。


 蟠りがなくなったせいか、和気藹々としている4人であった。

 


「しかしまたマロンが何かやらかしそうな気がするのは……杞憂ではないだろうなぁ。」


 トリスがしみじみと漏らしていた。


「とりあえず、序盤は現状の素材で適当に作ったモノを試しに献上してみるよ。」


 そのとりあえずが怖いんだって、と思うトリスとアクアと、どういう事?と感じているクマモトであった。



 第二回のイベントの概要は以下の通りである。


「世にも珍しい品を第一王妃に献上せよ。」


 普通の贈り物では少々飽きが来ているのが王族。


 珍しいものと一言で言えどもこの世界で贈られるものには、少々ご満足を得られないご様子。


 我こそはモノ作りの匠であると自負する諸君らの腕と想像力の見せどころ!


 諸君らの製作物で王妃を唸らせてみよ!


 という、王からのお触れが出されたのである。


 若干尻に敷かれてそうな王のお触れであった。


 


 そして数日後にイベントが始まるのだが、初日から全プレイヤー達が泣いた。



 日々その日(24時集計)の貢献度順位がゲーム内で発表される事になっているのだが。



 献上品部門、素材提供部門の一位にマロンの名前が掲載されていたのである。



 献上品部門二位のポイントが75に対して、マロンの貢献度は1050なのである。


 初日でブッチ切りの一位を叩き出されたら泣いてしまうのも無理はない。



 素材提供に関してはゲーム内で自動計算されるため王族は特に関与していない。


 あくまでゲーム機能の一環であるため、強い魔物を倒したりレアな素材を収集して生産職に渡して何かしらが作製されてばその時点でポイントとなる。


 製作物を献上という名目があるため、素材も提出したり採取しただけではポイントとはならないのがミソである。


 取得するだけで良いなら、強い魔物や珍しい魔物を倒せる生産職だけが有利になってしまうためである。



 そのため、自身で得た素材をきちんと製品に出来る生産職と手を組むのも一つの戦略と言えた。




 そして献上品に関しては、王城に出向き王妃に直接確認してもらうアクション(エフェクト)がある。



 プレイヤー達はそこで王妃の表情や態度によってどのくらい満足して貰えたのかが窺える。


 初日にマロンがいくつか説明しながら献上したところ、両手を握られ上下に思いっきりぶんぶんと振って大喜びしていたと言う。


 その場を見ていた他のプレイヤーやNPC達がぽかーんと口を開けてその様子を見ていた。



「これで夜の生活が楽しみですわっ。来年にはあの子達に年の離れた弟か妹が出来るかも知れないわっ。」


 と、王妃が大声で漏らしていたという。



 その様子を見ていたプレイヤー達からマロンは、大人のおもちゃ屋のマロンと二つ名を勝手に付けられ、掲示板等で勝手に呼ばれていた。



 そして何故かそのまま【称号:大人のおもちゃ屋】が追加されていたマロンである。


 称号の効果は魅力+30であった。

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