第90話 新商品は狙っている

  トリスは現在6人で臨時パーティを組んで、闘技場都市の北側街道付近のゴミ掃除と言う名の魔物退治の依頼を受けていた。


 店で店員として働いていない時は依頼を受けて、諸々レベルを上げようというトリスであった。


 冒険者ギルドで依頼を確認していたところ、例のドラゴンキラーを得る事になった時と同じ女性パーティ(全員性的に戴き済み。マロンが絡んでいないので非処女)と一緒にクエストを受注している。


 正確にはトリスがどれにしようかなと依頼表を見ているところに、5人組が声をかけてきたというわけだ。



「ゴブリンとオークは気付けば増えてますからね。定期的な間引きや駆除がギルドに依頼されてるんです。」


 所謂フィールドマップ上のモブ魔物、それは勝手に湧いて出るだろうなとトリスは思っていた。


「北門からは貴族が良く出入りするだろ?だから特に念入りに駆除依頼が出るってわけだ。」


 Dランクには美味しいがCランクには然程美味しくない依頼である。


 実際トリス一人がいれば充分に過剰戦力なのだが、彼女らはトリスセンサーを駆使して冒険者ギルドで張っていたのである。


 

「ゴブリンとかウルフとかオークとか大分狩ったなか。」


 トリスは第二職種に盗賊を設定しているおかげで、周囲の気配を察知するのが上手くなっている。


 索敵スキル程でなくとも、感と勘は働き魔物の気配に関しては敏感となっていた。


 そのトリスが何も感じなくなったという事は、既に駆除すべき対象はなくなったと見ても良い。


 

「都市に戻りますか。」


 ゴブリンとかウルフとかオークとは一言で表してはいるが、ゴブリンジェネラルやオークジェネラルを筆頭に一個師団程度の勢力は存在していた。


 魔物にも、人間でいうところの集落や村のような集まりが存在し、今回はその一つの塊を退治した事になる。


 都市に戻り、ギルドで魔石等の監禁の時に少々驚く受付嬢(テレトではない)だった。



 北門以降は貴族が主に利用するだけあって、街道もやや豪華に整備されている。


 魔物さえ現れなければその滑らかな街道で馬車の中が揺れる事は殆どない。


 このクエストの駆除対象は北側の街道であるが、出入口は東門を通らなければならない。


 東から出て、城壁沿いに北門へ移動し、そこから街道を北へ進み依頼を進めなければならないのである。


 その面倒な移動が必要なのも、平民は北側エリアへ行く事が出来ないため北門を使用出来ない不便さがあった。



 ギルドで報告と換金が終わるとトリスは5人と別れた。


 ご飯だけでも一緒にと粘る彼女らではあったが、トリスは丁重に断った。



 

「ゴブリンキラーとかの称号は得られないのか。」


 既に100体以上倒している感覚があるため、良くいる魔物にはキラー的な称号がないのか、まだまだ倒さなければならない数に達していないかのどちらかだとトリスは踏んでいる。


 レア種であればともかく、こうした雑魚的な魔物であればどんなプレイヤーにも取得出来るだろうとも考えていた。


 女ったらしのような別のキラー称号を得ているトリスであるが、中々RPGらしい称号はあまり取得出来てはいない。


 キラーによる効果でその種族に対する特攻や+効果が得られれば、先の冒険で随分と役に立つ事は様々なゲームで理解している。


 そのようなモノがなくとも、既に充分超強いのだが……


「マロンに買っていつかヒィヒィ言わせてみたい。」


 ボディコニアンは人間ではないので、ヒューマンキラーなんてのがあっても意味はない。


「戦争に参加すればヒューマンキラーとか鮮血の○○みたいなのが取得出来そう。」


 いつか戦争のようなイベントもあるだろうと、トリスは考えているが第一回イベントが闘技大会だったため少なくとも次は違うだろうなと考えている。


 恐らくはクラフト系だと睨んでいるトリスは、次のイベントは半ば捨てている。


 素材を集めるだけで良いのなら問題はないが、何かを作るとなると器用はそれなりにあるがノウハウがない。


 見習い職とはいえ、職種を得ているのと得ていないのとでは補正が違う。


 器用が高く多用な見習い職をマスターしつつあるマロンやアクアには、到底追いつく事は出来ない。



 こうしてマロンの店「ビルヘンニーニャ」がオープンして4日、トリスは午前中からクエスト、午後以降時間が余ったら店を手伝うのスタイルで過ごしていた。


 そのかいがあってか、第二職種盗賊をマスターする。


 現在レベルは35となり、第一職種:詐欺師(15/20) 第二職種:木工師見習い(1/10)となった。


 木工師見習いを選択したのは、物理的な弓矢を使う際に自分で整備をするのに木の知識などがあった方が良いという判断からだった。




「トリス、木工なら私が教えてあげるよ。」


 両肩をがっしりと掴まれてマロンにガクガクガクと身体を震わされてしまえば、トリスが断る事は出来なかった。


 その結果、二日でトリス作こけしが沢山出来上がる事になった。


 副産物として、【こけし師匠の弟子】という称号をトリスは得た。


 マロンは【こけし師匠】【初めての弟子】という称号を得ている。



 そしてゲーム開始32日目、開店してから7日目、ビルヘンニーニャに新しい武器?が店頭に並ぶ。



「モウモウバッファローの鞭」50000モエ  攻撃力+150

「アイアンゴーレムの鉄扇」47000モエ   攻撃力+120

「みるきーシルクのぱんつ」20000モエ   防御力+100(ただし股間付近に限る)


 さくらんぼくらぶ用と同じ用途用に……


「モウモウバッファローの鞭(SM用)」10000モエ

「アイアンゴーレムのラケット(SM用)」10000モエ

「みるきーシルクのぱんつ(SM用)」10000モエ


 それぞれきちんと前者3つは武器・防具のコーナーに、後者3つは娯楽コーナーに並べられていた。


 ぱんつがえらく高額であるが、みるきーシルクはマロンの小屋のある、惑わしの森に生えている乳綿という良くわからない綿花から取れる絹糸を使用している。

 

 つまりはほぼ材料費なのである。森以外では発見されていないため、高額設定となっている。


 なお、SM用の方は付随効果として、漏れ防止機能がついている。


 別名「おむつ」とも言えた。




 ある日、マロンの休養日(従業員は基本的に3日働いたら1日休めるようなシフトにしている。)に、フォルテに連れられマロンは空き地に来ていた。


 そこは何かの建設予定地のようで立て看板が掛けられていた。


「マロンさん、今日はこちらをお願いします。」


 巫女幼女がとある空き地で祈祷を行っていた。 


 巫女見習いマスターへの道として、開いている時間に祈祷や掃き掃除等で経験を積んでいたのである。

  

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