第87話 職種を鍛えたら色々おかしくなった。

「ちがーう!もっと腕の力で落とせ!」


 ハンマーを腕の力で持ってしなるように振り下ろすマロン。


 これまでは称号のおかげで勝手に上がっていった腕力のおかげで、無理矢理叩いていた。


 しかしドドンガ・ドンの教えにより、肘から先だけで打つのではなく、腕全体で叩けと指導が入った。


「イエス!ボス!」


 マロンもドンの豪快さに合わせるように、軍曹と一般兵の関係のような返しをしている。


 

「腰が入ってない!」


 そう良いながら腰を押さえて捻るように僅かに動かした。


「ボス!指導は有難いけどセクハラっす!」


 腰から離す時についでに脇にも手を入れたからである。


「ないくせに文句を言うなっ!文句はぼいーんになってから言えっ!」



「失礼しましたっす。でもなくても胸は胸っす。後で髭引っ張るっす。」



 などというやり取りがありつつも日々修行は続き。



「うむ。現状で教える事はもうない。一人前を名乗って良し!」


 師匠であるドドンガ・ドンから修行の卒業を言い渡される。


 あくまで現状である。


【隠しクエスト、ドドンガ・ドンの修行①を終了しました。】というアナウンスが流れた。



 同様に【隠しクエスト、メイアー・ベゲッドの修行①を終了しました。】というアナウンスが続いて流れていた。



 一流職人の指導のおかげか、3日でレベル10に達する事が出来たマロンとアクア。


 初日から冒険者としてクエストに出ているトリスとは異なるが、着実にマスター職への道を駆け上がっていた。



「では今度は鍛冶と服飾を入れ替えますか。」


 裁縫師見習いをマスターすると上位職は第二職種である服飾師となる。


 つまりはマロンはアクアが学んだ事の更に上を教わるという事になる。



 この時点でまだゲーム開始18日である。


 そして4日かけてマロンは服飾師、アクアは鍛冶師見習いをマスターする。


 1日多く掛かったのは、マロンはアクアが3日掛けて学んだ見習いの部分を1日で復習という形で行ったためである。


 また、アクアはマロンよりも若干筋力が劣るため1日多く掛かってしまったのである。



 これまでスキルと現実での経験等から作製していた衣服であるが、一流ブランドでもあるベゲッドの教えもあって様々なものが作れるようになる。


 過去に製作したメイド服なども、今作れば2段階は上のものが作製出来る。


 マロンとアクアはそれぞれ4日前に終了しましたとアナウンスされた修行①を獲得していた。


 また、マロンは服飾師として修行したため、メイアー・ベゲッドの修行②も獲得している。


 ドンの修行①は筋力+10、ベゲッドの修行①が器用+10、修行②が+20となっている。



 そのためこの7日間で二人は二つの職種がマスターとなっていた。


 マロンは現在、第一職種:巫女見習い(4/10) 第二職種:薬師見習い(1/10)


 アクアが第一職種:木工師見習い(7/10) 第二職種:治癒士見習い(1/10)



 そしてこの7日間でトリスは……


【称号:ドラゴンキラーを入手しました。】

【称号:スナイパーを入手しました。】

【称号:女ったらしを入手しました。】


 そしてレベルが30に達していた。




 臨時で組んだCランクパーティと一緒に闘技場都市から北にある山脈調査に出掛けていた。


 山脈を超えた先には別の国がある。一つ目の山を越えた谷にドラゴンが住み着いているので調査をギルドが依頼を出していた。


 あくまで調査なのでCランク冒険者又はCランクパーティまで受諾が可能だった。


 タイミング良く受諾したパーティは5人だったが、もう1人か2人臨時で募集していた。


 最悪5人のまま向かっても良かったが、万一ドラゴンと戦闘になれば全員が生き残れる保証もなく、保険の意味を兼ねていたのである。


 ラノベ等にある、囮役のためではなく、純粋な戦力としての募集であった。


 トリスはそのパーティの元で臨時パーティを組んでドラゴン調査をしていたのである。


 称号が物語っている通り、谷に生息していたドラゴンを討伐したのだが……


 Cランクパーティは全員が死亡寸前、トリスが一人でドラゴンを討伐したのである。


 自前のマロン印のポーションで全員回復したわけだけれど、当然副作用の魅力は健在。


 全滅の危機を一人で救ったという英雄的出来事も相まって、トリスは全員を戴いてしまう事に。


 5人のCランクパーティとは全員が女性であり、トリスはふたなり化を使い美味しい所を戴いている。


 一度に5人もたらしこむ事となったため、称号である女ったらしを取得。


 スナイパーを得たのも、射手となっていたために魔法矢のみで射殺したために取得する事となった。


 トリスは鑑定でドラゴンの情報を視ていたのだが、はぐれドラゴンと表示されていたため、今後他のドラゴンからの報復がないだろうことは予想している。


 なお、ドラゴンと戦う前にレベルは30となっており、ドラゴンを倒した事で33にまでなっていた。


 ドラゴンを倒した際に射手と盗賊見習いのレベルはマスターとなっている。


 そして闘技場都市に戻ってきた時のトリスは、第一職種:詐欺師(3/20) 第二職種:盗賊(4/20)となっていた。




 トリスにとって誤算が二つだけあった。


 まずは一つ目、レベルが33となりMPが5000を超えた時に流れたアナウンス。


【魔王の因子を取得しました。】というモノ。


 この場合の魔王とは魔族の王という意味ではない。それは取得したトリスがステータスを確認する事で理解はしている。


 魔法を使う者の王という意味で略して魔王。


 紛らわしさは半端ないのだが、これがワールドアナウンスで流れたとしたら最悪であった。


 魔王の存在を認める事となり、人間と魔族の戦争に拍車をかけてしまう恐れがある。


 幸いにして取得したトリスのみのアナウンスであるため、大事には至らない。


 都市に着いて、臨時パーティを解散する際にアナウンスが響く。


【称号:初めての受胎を取得しました。】と流れていた。


 ワールドアナウンスを始め、称号やクエストを知らせるアナウンスはNPCに聞こえる事はない。


 そのためトリスにしか今のアナウンスは流れないのである。


 そしてこのアナウンスが意味する事は……新たなの幕開けでしかなかった。


 射手と盗賊見習いをマスターした事でトリスは、第一職種:詐欺師(1/20) 第二職種:盗賊(1/20)と職種を変更していた。



 こうしてゲーム開始から22日間の終了を迎える。

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