第82話 増えた……色々と

「王女……申し訳ございません。」


 蘇生した15名が頭を垂れる。それは見事なまでに揃っていた。


「良い。皆が生き返っただけで充分。一端帰還すれば買い戻す資金もどうにかなります。」


 王族といっても教会絡みであれば借金やツケというわけにはいかない。


 教会としても、マロン達が即金でお布施をしている事を目の前で見ているのだ。


 ここで後で払うからと、勝手な事をすればそれは教会を侮辱するにも等しい行為。


 町で買う飲食物等とは違うのである。


 現状フロン王女は、正確には数人分であれば買い戻せるだけの資金は持ち歩いている。


 しかしその場合、誰を……ということになる。


 フロンにとっては今回同行している16人に優劣はない。


 強いて言えば幼馴染でもあるノエルは特別かもしれないが。


 

「提案があるだけど聞きます?」



 王女達がマロン達の方を向く。



「しばらくしたら私、闘技場都市にお店を開く予定なんだけど……」


 規模はまだ悩んでいたが、この人数ならいきなり小さな店舗を持っても良いかと判断していた。


「従業員をどうしようか悩んでたんだよね、募集しても集まらなかったら、フォルテさんに言ってラマン商会から人を借りようかと思ってたんだけど。」



「この15人を従業員として雇うというのはどうかな?もちろん働いた分の対価としてお給料は支払う。」

 

 給料が入れば買い戻すための資金に充てる事も可能。


 正式な奴隷証明書は奴隷斡旋ギルドに行って登録をしなければならないが。


 時給なのか日給なのかなどは要相談とする。



「それとも女性の方々は、ラマン商会が経営しているさくらんぼくらぶという娼館で働きます?多分給料は一番良いと思いますが。」


 自分も今丁稚のレベル上げで受付をやっていると付け足した。


 しかし身体を売るのには抵抗があるようだった。



「そうですか。あと、これは個人的な事なので意見を聞きたいだけなのですが……」




「女性用の娼館ってあったら利用したいですか?」


 女性陣が一斉に真っ赤になる。これは一体どういう意味なのだろうかとマロンとアクアは悩む。


 トリスは微妙な表情をしていた。



「それは我々男性陣が娼婦と同じことを女性に提供する……という事でしょうか。」


 

「端的に言うとそうですね。後は、同性が好きな人もいますし、女性同士や男性同士なんてのも……どうです?」



「そ、それは王女がもし働いていたら私が客として利用しても良いって事でしょうか!?」


 手を挙げて意見を言ったのはフロン王女の幼馴染にして側近でもあるノエルだった。



「わ、私は働きませんっ。」


 しかし顔を真っ赤にしているフロン王女だった。


 

「おほんっ、先程の娼館云々の件ですが、娼婦としてでなく受付とか清掃要員として働くのもありですよ。」


 もっとも他人の情事後の清掃とか嫌だとは思うが、一つの案としてどうだろうと思うマロンだけど流石に手は上がらなかった。



「それなら近いうちに出店する私の店で働くか、町の食堂等で働くかですね。」



 他の選択肢として、王女が一度王城へ戻り自分自身のお金を持ってくるというものがあるのだが。


 護衛がいなければ戻る事が出来ない。下手な冒険者を護衛に付けるのはそれこそかなりの冒険なのである。


 自身の護衛をマロン達から借用という選択はなかったのである。


 マロンは護衛の相場を知らないため、今なら安く出来たかもしれないが、それも思考からは外れていた。





 今後の予定として……ラマン商会会頭、フォルテに相談をしいくつか店舗に使える物件、または土地を確認する。


 15人に関しては奴隷斡旋ギルドで正式にマロン達の奴隷として登録する。


 借金に関しては現実世界のような利子などは存在しない。純粋に一人10万モエの返済が始まる。


 どういうシステムなのかは考えたら負けなのであるが、ステータス画面に残金が表示されるようになっている。


 残金がゼロになった時、再び奴隷斡旋ギルドで処理をすれば自由の身となる。


 それまでは可哀想ではあるが、首輪が全員に取り付けられる。


 主人を害そうとした時には、きつく締まるように出来ている不思議魔道具である。



「ねぇマロン、一気に人が増えちゃったけどどうするのさ。というか暫く森に戻らない気?」


「それね。悩んでるんだよね。店舗候補が見つからなければ皆には食堂とかで働いててもらおうと思うけど。」


「とりあえず、丁稚があとレベル2でカンストだから、私もそれまで受付とかしてレベル上げだよ。」




 王女達はその身分の関係上貴族御用達の高級宿屋に部屋を取り、拠点とする事にしていた。


 外野から見ると余計な出費であるが、護衛等の観点からやむを得ない出費だた。


 領主の所で厄介になるのが妥当なところではあるが、唐突にこの人数で何日も滞在するのはどうかという事で高級宿屋に決まった。


 つまりは北部の貴族街にある高級宿屋という事である。




 そして帰る前にラマン商会へ寄ったマロンは、経緯をフォルテに話した。



「それでしたらいくつか候補を見繕いましょう。工房と倉庫は必須で炉があればなお良しって事ですね。」


 そして二日後、3件の候補が見つかりましたと連絡を受け、内覧をする約束を取った。


 その二日の間に森に戻ったりもしたのだが、マロン達は驚く事になる。



「主……家族が増えました。」


 イノブタのイノ吉が開口一番報告してくると、イノ子のおっぱいにちゅっちゅする3匹の赤ん坊イノブタがいた。


「おとーとといもーとがふえたのー。」


 イノ乃が無邪気にはしゃいでいた。 

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