第81話 事後処理で奴隷が手に入っちゃった♪
マロン達は馬車の中で助けた女性達から話を聞く事にした。
残念ながらマロン達には蘇生系の魔法やアイテムは現状有していない。
プレイヤーは死んでも登録してある拠点へ戻されるだけだが、NPCは一定時間以内に蘇生が出来なければ完全なる死がまっている。
それでも蘇生魔法やアイテムで生き返る事が出来るのだから、現実世界に比べればかなりマシである。
そして、蘇生が出来ないならどうすれば良いか。
「そうだ!冷凍保存すれば良いんだ!」
というマロンの叫びで、アクアの魔法でかっちんこっちんに遺体を凍らせた。
そして布でくるんで荷台に乗せた。
護衛と御者と。
ちなみに馬は逃げていってしまったので、今は別の生き物が馬車を引いている。
「ひぃっ。我がなぜこんなものを引いてるのじゃぁ!」
少し口調が変わったドラゴン幼女であるが、今では立派なマロンのテイム魔物、つまりペットとなっていた。
「へぇ、第六王女なんですね。ん?王女?」
「えぇ、フロル・ゼクス・エテルノ様は第三王妃との間に産まれた第六王女でございます。」
「そしてこちらは私の護衛騎士であり幼馴染でもあるノエル・ブッシュです。」
フロルが薄いピンク色をした髪で、残念ながら髪の毛はドリルを巻いていない。
一方、ノエルは護衛を務めるからか、赤く情熱的な色をしているが短くさっぱりとしている。
「ノエル受けだね。」
トリスがいらん事をマロンの耳元で囁く。
「いやいや、姫総受けでしょ。」
マロンがトリスの耳元で囁き返す。
忘れているかもしれないが、氷漬けになっている遺体の中にも女性騎士はいる。
その中にドエスや攻め担当がいるかもしれない。
全員で百合の園バラルかもしれないのである。
「そういえば二人共、見事な漏らしっぷりでしたね。」
「それは黙っててほしいのですっ。」
王女が赤面して激高していた。そしてもじもじと股間付近を足で挟んでいる。
「王家はドエムしかいないのかも知れませんね。」
アクアが二人の耳元で囁いた。テレトがドエムな事は、既にマロンから聞かされているが故の発言だった。
「そういえばテレトさんが21歳て事はフロル王女は……」
「22歳よ。なんか文句ある?独身で文句ある?」
「いえ別に。どう見ても15・6くらいにしか見えないから気になっただけです。」
馬車にてそのまま闘技場都市へと入る。
身分証明書(ギルドカード)を提示は要したが、王女の馬車に同乗している事にツッコミは一切なかった。
「とりあえず、冒険者ギルドに報告に行きたいんですが。」
マロンが王女に提案する。元は常設の魔物討伐依頼で少し遠出してみようツアーだったため、色々報告が必要であった。
魔物素材の提出、常設魔物討伐依頼報告、ドラゴンの報告、ドラゴンをテイムしちゃった報告、王女様を助けちゃった報告と、報告三昧である。
ちなみにマソキュイスタが城門を通る際にバレなかったのには理由がある。
大きさが変えられる事が土下座の時に分かっていたため、馬サイズになって貰った。
そして臆病な競走馬の頭に被せるメンコと、前が気になって仕方ない馬の鼻に取り付けるシャドーロールを取り付けたら誤魔化せたのである。
両方つけていてさらに強い競走馬というと……国内だけで15億を稼いだG1を7勝したあの牝馬だろうか。
JCを二回も買った女子中学生……いや違う女子中学生でJCと表記するのは適しているのだろうか。
JCを二度も勝利した伝説の牝馬3冠馬、砂の国でも勝利を収めてるあの牝馬。
門番の目がどうやって誤魔化されたのかは不明であるが、馬具を付けてるのだから馬だろうという認識なのか。
馬具がもうすでにバグではなかろうかと、トリスあたりは叫びそうである。
問題なく通過出来たのだから掘り下げても仕方がない。
冒険者ギルドに到着すると、マロンはひとまず常設依頼の報告と素材の件を済ませる。
出入り口付近に迷惑をかけないよう、馬車は駐車させてもらっている。
30分程で用件を済ませ、テレトに耳打ちする。
「言い辛い事を言うから聞いてください。」
何故か少し発情しているテレトの下半身は無視をする。
テーブル越しに見える上半身は普通なのに、見えない下半身の部分は少しおかしかった。
「街道を3時間くらい進んだ先でドラゴンに襲われた一団を2名救出しました。そしてそのドラゴンを倒しテイムしてしまいました。さらに救出した相手は第六王女でした。そして今それらは冒険者ギルドの外で待ってもらっています。」
「はい?」
「同じ内容をもう一度喋る尺はないのですよ。」
「とりあえず、ギルマスと話しますのでギルマスの部屋に彼女らも一緒に来てください。もうギルマスに丸投げしますので。」
「―――と言うわけで全員来てください。荷台は盗難防止ブザーでも付けておきますし、不用意に近付くと……落とし穴に落ちる仕掛けを作っておきます。アクアが。」
え?私が?という顔をするアクアだが、土魔法を持っている者が穴を開けた方が早いのは事実である。
木魔法と木材加工で、【荷台に近付くと落とし穴に落ちます。】というプラカードを数枚立てておく。
落とし穴に落ちると、闇魔法の
ポン・サクレック・カァルボ(46)は苦悩している。以降通称のポンサク。
ギルドマスターであるポンサクの正面に座しているのはEランク冒険者3人組、マロン・トリス・アクアと……
本体はドラゴンの幼体だというマソキュイスタ(人間換算で15歳)と、第六王女とその護衛騎士。(ノエルはフロン王女の後ろに立っている。)
受付嬢であり第七王女でもあるテレトは自分の隣に座っている。
お茶は別の職員が用意していた。
この面子……一体どういう組み合わせ?どうやったらドラゴンとか王女とかが出てくるの?誰か教えて?とポンサクは頭を抱えていた。
一つずつ片付けていくしかないと結論付け、まずはドラゴン討伐及びテイムについて。
300000000(3億)モエが支払れる事になる。
やや少ないと感じるのは、テイムしたが故と素材として売るモノがないからというものであった。
「じゃぁ鱗上げる。少しは足しにして欲しいのじゃ。」
10枚をギルドに売りつける。1枚当たり1億モエで買い取って貰える事になった。
合計13億モエになった。
そしてテイム問題。これはギルドでテイム魔物登録をするだけで良いという事なので職員が必要書類を持ってくる。
マロンは書類を受け取ると、規約を読んだ後にサインをする。
首輪を付けなければいけないという事なので、マロンはマソキュイスタの首に通した。
ドラゴンに戻っても、その大きさに合わせて大きさが変わる不思議形状をしているという事なので、気にしない事にしていた。
テイムに関しては要約すると全て自己責任、魔物がおこした全ての事はマスターのせいになるという事であった。
例えばテイム魔物が建物を壊したら、主人たるマスターが弁償をする。
例えばテイム魔物が食い逃げをしたら、主人たるマスターが支払いをする。
ここで一端ポンサクはお茶を啜る。
年に1回もない程の緊張感に当てられ、ポンサクは冷や汗が止まらない。
冷たいはずのお茶がとても温い。
手が震えた振動で温まった……というわけではないが。
そして王女達を救援した件、これは色々と利権が発生しない事もない案件だが、人を救出したという事で30000モエが支払われる。
「あ~なんとか片付いたぁ~。」
ポンサクが大きなため息を吐きながら、先程までのやり取りを振替……したら胃が痛くなってきていた。
報告の間、王女達は置物状態だった。
殆どがポンサクとマロン達3人で行われていた。
温かい紅茶を啜りながらマロンは考える。
(お金増えても減ってもあまりわからんわ。)
「テレトさん、王女達はどうすれば良いかな。」
「私が聞きたい。姉さま達の目的地はどこだったのさ。」
「東のレンレンに行く途中だったの。」
闘技場都市の東には街道沿いに進むと、途中の小さな村等を除けばレンレンという大都市に繋がっている。
もっとも小さな村は、街道から派生した村へ通じる道に抜けると辿り着く、街道本線のみを使えばレンレンに出る。
「でも暫くは迎えないわね。15名もの護衛が……」
「一応この都市の教会には、死者蘇生が使える神官がいるはずなので蘇生出来るかもしれませんよ、フロン姉さま。」
その代わりお布施と言う名の大金が必要ですが、という言葉はフロンの耳には届いていない。
冒険者ギルドでの用件が済むと、今度は命を落とした者達の弔い……ではなく。
可能であれば蘇生を試みるという事で、教会へと足を運ぶ。
テレトもフロン第六王女の後を着いて行く事となった。同行者+1となる。
ちなみに落とし穴には数人の男女が落ちており、全員ガクブルして震えていた。
一体どんだけのトラウマを抱えてるんだよ、とマロン達は思った。
王女の護衛達、死亡したのは女性騎士5人、男性10人であった。
何人かは15歳前後の者もいた。
一抹の不安を余所に、1人100000モエ(10万モエ)で蘇生が出来たのである。
教会は独立組織であるため、王家からでも遠慮なくお布施という名のお金を受諾する。
お金の力で何でもできるという事だった。
蘇生が使える人物は少ない。全ての教会に蘇生を使える司祭や神父・尼僧などがいるわけではない。
闘技場都市は戦う事がメインのようなところがあるので、蘇生や欠損修復が出来る人材が優先して置かれているのだ。
なお、プレイヤーが死ぬと登録した拠点地域でリプレイが可能となるが、その際強制的にお金が抜かれている。
平等を期すためと称し、実に半分をかっさらっていくのだ。
悪徳高利貸しよりも金に汚い組織なのである。
プレイヤーが都市の外に出られるようになり、身の丈に合っていない魔物との戦闘が行われるので、結構な人数のプレイヤーが死に戻りを経験している。
つまり教会がっぽがぽなのであった。
ちなみに蘇生代金はマロン達3人が平等に出していた。
15人もいたので一人頭5人分で50万モエ出している。
そして他人に蘇生をしてもらったという事は、お金を立て替えて貰ったという事になり彼ら彼女らはマロン達に10万モエずる返さなければならない。
しかし10万モエも持っていない騎士たちはというと……
「生き返って嬉しいはずなのに……奴隷になってるぅ。」
目覚めた遺体となっていた騎士達が、喜びと落胆を同居させている。
鑑定持ちの者がいたのだろう、目に入った者達のステータスを見たのだ。
「あ、なんか職種の変更可能の中に奴隷商人が増えてるよ。」
これはマロン達3人全員の事であった。
「奴隷なんていらないですよね。」
アクアの意見は尤もである。奴隷という事は、どんな時でも主人の後を着いてくるわけであり、結果として惑わしの森の小屋に連れて行かなければならないという事に繋がる。
「よし、フォルテさんに頼んで奴隷が住める家をどうにかしてもらおう。幸い嫁がそこに入る事だし!」
マロンはテレトの目を見て叫んだ。
マロンは奴隷を自らが持つ店の店員にしてしまおうという魂胆だった。
第六王女の護衛?知らんよ、と一蹴。
冷凍保存で綺麗な遺体を維持したのも、蘇生のためのお金を出したのも3人なのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます