第80話 ドラゴン退治はやはりここを攻撃するよね。

【緊急クエスト:エンチャント魅力ドラゴンから姫を守り切れ】


 

「姫って後ろにいるいかにもって感じの人だよね。」


 マロンがちらっと後ろを見やると女の子座りをして……ぶるぶる震えている姿を確認すると、その傍らの何やら地面が濡れているのは見なかった事にする。


 その手前で庇うように立っている女性騎士は足こそ震えているものの、お漏らしの兆候は見られなかった。


「た、倒さないといけないのかな。」


 アクアが不安そうに近寄って来る。


 マロンは既に一回聖絶を使用している。クールタイムがあけるまでの時間戦闘を長引かせられるとは限らない。


 

「水杭!」


 アクアが両手を翳すと幾つもの水で出来た杭が上空から降り注ぐ。

 

 聖絶で弾かれた事で一瞬同様している事で、杭に対する反応が遅れドラゴンの足の一本を地面に縫い付けた。


 トリスが魔法矢でドラゴンの視線を誘導していたという事も相まった。


「ドラゴンのドロップアイテムの相場と言えば、爪、尻尾、血、逆鱗、鱗、牙かな。」


「トリス、魔物を素材で見るのは良くないよ。」



「あわわわ、二人共ドラゴンを前にしてるのに緊張感が……」


「好きな人に告白するよりは勇気いらないよ。」


「カミングアウトする方が勇気必要だったよ。」


 マロンとトリスがぶっちゃける。


「せ、せめてそこは所詮はデカいトカゲだろとか言うのかと思ってました。」


 

 

「さぁ、姫さんを守るよ~。」


「攻撃は最大の防御ってね~。」


 マロンが壊れたマリオネットを使うため糸を放つ。


「死の女神様~手だけ出して。」


(しょうがないのぅ。うんまいぼう10本ね。)


 駄菓子10個で召喚に応じる死の女神様ことキノトグリス。


(あ、後ろの二人から香しい液体が……)


 普通の人にはキノトグリスは死の信仰。


 自死を選択してしまうものである。


 姫と女性騎士は耐えきれずお漏らしをしてしまうが。


 

「ひぃっ。な、なんじゃその禍々しくも病みつきになりそうな死気は。」


 怯んでくれればマロンとしては儲けもの、確実に壊れたマリオネットで操るには隙を作る事は必要なのである。



「氷牢!」


 水の大精霊になった事で水の威力や温度等まで操れるようになったアクア。


 杭で打ち付けた後ろ右足と左後ろ足を氷で固定する。



「らいとにんぐ~ヴぉるとぉっ!」


 トリスの雷を喰らって四つん這いになるドラゴン。


 すかさずアクアが氷牢で前足二本も地面に固定する。


 ドラゴンは四つん這いで色々丸出し状態となった。



 マロンはてくてくと駆けて行き、ドラゴンの後方へ移動する。



「マロン、18禁フィルターがギリ仕事する範囲内なら赦すっ」


 トリスはマロンが何をしようとしているかわかっているようだった。



 これがラヴァーズならではのツーカーというやつだろうか。



「ドラゴンに対してはコレ一択でしょー!」


 ストレージから取り出したのは、ゆぐゆぐの木を加工した只の大きな木材。


 告白が成功すると名高い伝説の樹故に、その絆?の堅さは鉄をも凌ぐ。


 ポーションの瓶を多数取り出し、まずは叩き割ってポーションを先端を中心に濡らす。


目標角材センターお尻に入れてスイッチ……」




「スーパードリルあたーっくGS!」

 

※GSはドラゴンボールGTと同じ解釈です。ごめんなさい●●先生。


 大層な名前を叫んでいるが、実際は大きな角材で尻穴に回転特攻である。

 

「ひぎゃぁぁぁあっぁぁぁっぁあぁぁあっぁん♪」


 ドラゴンが絶叫?嬌声?を上げる。


 巨大なアンカーが適当に塗ったローションと相まってスムーズに進入していく。

 

「ぬおおぉぉぉ、ぬ、抜いてぇ、抜いてぇ。い、いひゃい。あっ、れも、いたきもちいぃ。」


 攻撃を見守っている4人は唖然として見ているだけだった。


「かーらーのージャイロ回転~。」


 壊れたマリオネットの応用で、自らのささやかな腕力と糸を利用してゆぐゆぐの角材を回転させていく。


「あぁあっぁぁぁあっあふっ、ぐ、ぐりぐりしにゃいでぇ~~~~。」



「さぁ、もうこの姫さん達を攻撃しない?それと謝る?」


 こくこくとドラゴンは首を縦に振る。


「じゃぁ抜いてあげる。」


 抜く時は逆回転しながら一気に引き抜いた。



「あぁああぁぁぁああっぁっ、……んんっ、はふん♪」


 びちゃびちゃっ


 大量の液体が周囲に降り注ぐ。それがナニなのかは考えない事にすうるトリスとアクアの二人。


 ドラゴンといえども、オスであればアレとかアレが然るべき場所に付いている。


 このドラゴンにはついていない、そしてキーの高い声。このドラゴンはメスである。


 メス豚ならぬメスどらなのである。



【称号:ドラゴンキラーを取得しました。】



 

「あぁっ、にゃんかでりゅぅ。」



「既に股から大量に出てるけどねー。」


「ひぎゃぅ、う、後ろから……」



「うわっえんがちょ。」


 トリスの煽りが辛辣なツッコミとなっていた。

 

 アクアは口元に当てた手で「うわ~」となっていた。



「聖水のお漏らしはセーフだけどそっちのお漏らしはアウトだよ。トイレまで我慢して。」


「ひゃいっ。」



 先程まで角材が入り込んでいた尻に力を入れるドラゴン。



「じゃぁそのまま謝って。」



「ごめんなのじゃぁ。もうしないから赦しておくれぇ。」


 ドラゴン土下座を見たのは初めてのマロン達であるが、段々ドラゴンの姿が小さくなっていく。


 やがて人型になっていき……最終的には全裸幼女が土下座している図になっていた。






「で、あんたはなんでこの人達を襲ったの。」


 土下座をしたまま元ドラゴン、現土下座幼女のは答える。


「目が覚めたら凄くお腹が空いてて、エサを取ろうと谷から出てきたところで突然攻撃を受けた。」


「攻撃されたので反撃した。」




「だ、そうだよ。喧嘩両成敗って事で良いかな。」


 人間側からすればドラゴンに襲われると思って攻撃を仕掛けたのだろう。


 先に仕掛けたのが人間側であれば、ドラゴンは降りかかる火の粉を払ったに他ならない。


 マロンはしれっというが、この姫の護衛などは一人を除き全員死亡している。


 命が重いかどうかはさておき、随分と軽いやりとりである。




「ご主人様……」


 身体がプルプルしている。多分色々我慢しているのだろう。


 それよりもドラゴンのマロンを呼ぶ時の呼称がご主人様となっていた。



「ドラゴンは自分を負かした相手に仕えるっていうからねー。」




【称号:ドラアナキラーを取得しました。】



 

【魅力が2000を超えました。称号:初・超越者(魅)を取得しました。】


 マロンの脳に新たな称号アナウンスが流れた。


 負けを認めた時点でマロン達には経験値が大量に入っている。


 その時点でマロンはレベルが5上がり25になっていた。



「あ、私のレベルが4上がってる。」


「私も4上がってます。」


 トリスのレベルが25に、アクアが24になった。


 尚、各ステータスの値が2000に達した最初の者にそれぞれ超越者の称号が贈られる。


 そして初めての取得者に対しては初・超越者の称号が贈られる。


 そのため少し前にトリスはMPが2000に達しているので初・超越者(MP)を取得している。


 初が付くと只の超越者よりボーナスが倍も付与される。


 さらにアクアもレベルが24になった事でMPが2000を超え超越者(MP)を取得した。




「私はマロン、良いランク冒険者だよ。」


「マロン……その発音はおかしい。私はトリス、好いランク冒険者だよ。」


「と、トリスさん。それも発音が……わ、私はアクアです。同じくEランク冒険者です。」


 三人の自己紹介に呆気に取られている姫と女性騎士。


 

「わ、私はマソキュイスタ。エンチャント魅力ドラゴンの幼体……」


 土下座幼女からの自己紹介だった。



 マロンがトリスに耳打ちする。


(マソキュイスタってスペイン語だけどマゾヒストの事だよね。)


(キュイだったりキィだったりケだったりするけどね。)

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