第72話 あの成人雑誌のようにっ!
「マロンさん、本日はよろしくお願いします。」
ラマン商会へ顔を出したマロン達は出迎えたフォルテ達と挨拶を交わす。
そして馬車に乗って商業ギルドへと向かった。
マロンが登録する商品はフォルテが用意した木箱へ詰めている。
「これは娼館で革命が起きると思います。独占するか使用権を得て他でも使用できるようにするかで将来大きくかわるでしょうね。」
暫くはラマン商会が経営しているさくらんぼくらぶでのみで使用する、とのことだが未来はどうするかわからない。
最低でも特許を取って名を残す……その必要はあるとフォルテに言われていた。
誰も彼もが類似品を作り始めると、そのうち質の悪いものが高値で売られたり出回ったりする。
その時に、特許を取りこの人が製作したものだという証があれば権利も主張出来れば防衛も出来る。
粗悪な類似品が出回った時、これはうちの製品ではありませんと言い切る事が出来るのである。
「商業ギルドへの登録ですね。ってラマン様。」
本来は紹介状を書くくらいであるが、今回は紹介する本人同席である。
それだけラマン商会が本気でこれから登録するマロンを推しているという表れともなるのである。
「彼女らの登録をお願いしたい。紹介は全て私、フォルテ・ラマン・アマンテである。」
「私は商業ギルド職員のマルテと申します。こう見えて人妻ですのでよろしくお願いします。」
人妻という自己紹介が必要かはさておき、仕事を進めようと用紙を取り出した。
ラマン商会会頭が人を連れてきた。それは新規登録に自分が立ち会うという事が見てとれたためである。
「それでは、こちらに名前と現在の職種を記載願います。職種は将来的に変わる事もあるので、年に一度くらいは更新に来てください。」
マロン達は渡された紙に必要事項を記入していく。
【マロン 第一職種:丁稚 第二職種:木工職人見習い】
【トリス 第一職種:詐欺師見習い 第二職種:魔法使い見習い】
【アクア 第一職種:精霊魔法使い 第二職種:丁稚】
「……この詐欺師見習いというのは……」
「この場ではちょっと……お姉さんはノーマルですか?それともアブノーマルですか?」
「……は?」
呆れた顔で返す受付嬢・マルテ。
「性癖がです。」
「変態的な事でもそれが普通になればノーマルだと思います。」
その瞬間トリスはこの受付がアブノーマルだと理解出来た。
「時間があるならば証拠というか証明しても良いのですが。」
何やらこしょこしょと耳打ちしながら話し合うトリスと受付嬢・マルテ。
余計な時間を費やしたものの、申請は滞りなく進めていく。
「これで商業ギルドの登録は完了となります。冒険者のようにランクがあり、Fから始まりAランクまでございます。」
Fランクは露店1店舗を出す事が可能となる。スペース的には闘技大会中に見た1テント分である。
売上とギルドへの貢献によってランクは上がる。具体的な数値は明らかにされていない。虚偽を防ぐためである。
なお、フォルテはAランクである。親の世代から手伝いを行っておりかなり若い時から登録を済ませていたためである。
値段設定は誰もが作れるものに関してはギルド推奨価格を、オンリーワン商品に関しては自由に決めて良いという事である。
基本的に自由ではあるが、あまりにも暴利な場合は誰も買わないので、商人側もそのあたりは重々に承知するのが一般的であった。
マロンは市場調査をした後に値段設定をする心算なので、ギルドの意見を参考にするつもりであった。
「それと、特許申請をいくつか行いたいのですが……ここではなんですので個室があればそちらでお願いしたいのですが。」
個室の提案に関してはフォルテが同席している事で、疑問や質問もなく許可される。
ただし、商業ギルドマスターも同席すると条件を付けくわえられたが、フォルテからすれば好都合であった。
個室に案内された一行は、マスターに指示され着席する。
ギルド側はマスターが真ん中、先程応対していた女性、マルテが横に着席する。
「私が当商業ギルドマスター、アベイルです。マスターの中では若輩ではありますがよろしく。」
マロンが鑑定を行うと、アベイルの年齢は36歳、マルテの年齢は24歳である。
本人が最初に自己紹介をしていた通り、マルテは既婚者である。同い年の旦那と8歳の娘と4歳の息子がいる。
アベイルは……件のセリフにより独身だという事が読み取れたマロン達。
「フォルテも一緒か。まぁ貴方が一緒だからとんでもなく上客というか品物なんだろうね。私という最上級品を捨てておいてまったく。」
フォルテとアベイルは同級生なのであるが、それは今関係ないため誰も触れようとはしない。
昔多分男女の関係があったのかなと匂わせる発言だけしておいてある意味無責任ではある。
「特許を申請するものはいくつかあるのですが、順に出していきます。」
マロンはまずポーション……もとい媚薬を取り出した。
「……は?ナニコレ。」
液体の入った瓶を手に取り鑑定を施したアベイルが漏らした。
横ではマルテも同じように鑑定を施していた。
「集団で寄ってたかって媚薬なんて……私に何かする心算ねっあの成人雑誌のようにっ!」
アベイルが何やら御乱心のようだった。
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