第64話 準決勝第一試合 もふもふのために
「準決勝第一試合。まずはエロフのトリス選手!予選では見えない障壁のようなもので圧倒。以降は得意の魔法の矢である魔法矢が急所を容赦なく貫きました。」
「一方、狐人のパンサーぴんく選手!狐人特有の幻炎で容赦なく相手を焼き尽くしてきましたー。そしてその尻尾のもふもふは私も埋まってみたいところです!」
審判であるサングラスの男が選手二人を簡単に紹介する。
態々言わなくても本戦の二試合を見ていれば、観客も運営が配信している大会の生中継を見ている者も理解していた。
マロン達の陰に隠れてインパクトは落ちてしまうのは否めないが、マロン達3人に敗れた者達やトリスの対戦相手であるパンサーぴんくも、本来はもっと注目されているのだ。
あまりにもマロン達が規格外なため、霞んで見えてしまうのだ。
みこぬこなーすの注射器を例に挙げればプレイヤーであれば理解出来る。
注射器なんて武器は存在しない。
少なくとも公式には発表されていないし、そういった物を作っているNPCの情報も今の所存在していない。
誰も突っ込まないので流されているが、彼女もまた色々な意味でトッププレイヤーなのであった。
「よろしくお願いします。」
狐人であるパンサーぴんくが丁寧にお辞儀で挨拶をする。頭を下げた時に揺れるもふもふのしっぽが揺れており、見る者を和ませる。
「やらしくおねがいします。」
パンサーに釣られて同じようにお辞儀をするトリスだが、一文字誤字を交えていた。
「まじかるしゅー」
試合開始と同時にトリスは水・風・木の魔法を纏った魔法矢を合計三本放つ。
「幻炎!」
狐人の種族固有スキルである幻魔法。その中でも長けているのが幻炎だった。
目に映る炎は幻なれど、それを喰らえば本当の炎魔法を浴びたかのようにダメージを負う。
それは脳に、神経に作用しあたかも本当に炎を喰らったと認識されるに他ならない。
嘘が真になるとでも言おうか、目で見た物が事象として成立する。
幻魔法とは幻覚魔法とも神経魔法とも言われていた。
そして幻炎は障壁となりトリスの放った魔法矢を受け止めた。
「私が勝ったら、そのしっぽのもふもふに
「……お断りしたいかな。」
トリスが放った魔法矢はもちろん手加減をしてある。
それでも防いだパンサーぴんくの幻炎もやや歪である。
「私が勝ったら、あの見えない攻撃の秘密を教えてくれるなら。」
トリスは一瞬視線を視えない控室の方に移す。
それをパンサーぴんくは見逃さない。
「……契約成立だねー。右手に水球、左手に火玉……混ぜるな危険!!」
トリスは射手でもあるが魔法も使える。中級は風と水だけだが、火・土・木と初級魔法も3種類使用出来る。
「そして風傷!」
トリスの叫んだ風傷は他のゲームやラノベ等ではウインドカッターと呼ばれている魔法だ。
風の刃で攻撃というありきたりなものであるが、そこはエロフとはいえエルフ。
魔法に長けた種族であるため、人種が使うものよりはランクが上となるのは必然である。
マロンドーピングがされているのだから猶更である。
さらにはマロン達のスタート地点である「惑わしの森」では、ある意味パワーレベリングであったため他プレイヤーよりもレベルは高い。
惑わしの森は他プレイヤーのスタート地点の魔物より圧倒的に強いのである。
つまりは経験値や閃きなどは全然違うのであった。
マロンに大事なものを潰された伊集院光陰でさえ、レベル10なのである。
ちなみにそのたまたまであるが、控室で悶死中の伊集院にマロンが再生を使って、二つ共無事復活していた。
伊集院光陰が変な性癖に目覚めたのはまた別の話。
風傷で幻炎を切り裂き、トリスの放った水球と火球がパンサーの目前で互いに着弾する。
決してメ……なんとかという魔法になるわけではないが、適度な火と水は互いに反応し合い爆発を起こす。
「なにっ」
爆発自体もさることながら、爆発の直後飛び出したナニカがパンサーの身体に突き刺さる。
爆発のダメージ、突き刺さったもののダメージでもれなくHPは全損する。
さっさと勝つ事に特化したトリスの攻撃は、とてもえげつない。
パンサーの身体前側には大量の木片が突き刺さっており、爆発により爛れていたりする。
試合前は可愛い美少女狐人だったのに今は見るも無残、とてもみせられないよとモザイク処理が掛けられていた。
「勝者ァトリス選手ゥ!」
火球の中には火に強い木が、水球の中には水に強い木がそれぞれ芯に使われており、爆発によってそられが弾かれパンサーぴんくを襲った。
単純に言えばそれだけの事であるが、球の中に魔法とはいえ木を芯に使えるのかという問題があるが。
そこはエルフが魔法に長けているという事とマロンドーピングによる賜物
マロンには告知していないが、トリスには【魔法合成】というスキルが生えていたのである。
これは魔法矢を使い続けてきたが故の産物である。魔法に火や水などの魔法を乗せる事で熟練値があがり派生したのであった。
「マロンと戦う前に二つも切り札を見せちゃったなー。」
トリスの中では決勝の相手はマロンと決まっていた。
アクアとは仲良くなり、大事な仲間・ゲーム中とはいえ友人ではあるが、それとこれは別である。
相性や性格もあるので絶対はありえないが、この大会でマロンは一つ二つ人外へと足を進めている。
そしてほぼ全員が忘れているかもしれないが、このニューワールドに置ける攻撃力は物理であれば筋力、魔法であれば知性と魔力が基本であるが、それだけではない。
種族や職種特有のステータスが攻撃力へと変換される。
槍士や盗賊等は敏捷が、盾士系は体力が、ボディコニアンは魅力が攻撃力に変換される。
忘れているかもしれないが、トリスが以前マロン達に説明したが攻略組のトッププレイヤーで漸く3桁に達した程度のステータスに於いて、マロンの魅力は千を超えている。単純な攻撃力という面では既にナンバーワンなのである。
もちろん当たらなければどうという事はない、という観点からもそれだけで実力がナンバーワンと決まるわけでもない。
故にトリスは闘技大会がイベントだと決まった時から対マロン戦を想定して切り札を用意していた。
所詮で見せた魔力を繋いだままの魔法矢や魔法球の中の別魔法というのもその一つだ。
おちゃらけているように見えて、トリスはそれなりにストイックである。ステータスに胡坐をかいたりはしないのである。
自分がこういう風になってるのだから、他にもいるかも知れないという考えは常に持っていた。
「さって、もっふもふ♪もっふもふ♪」
担架で運ばれたパンサーぴんく、医務室でベッドに寝かされるとトリスはマロンから貰った媚薬超極薄のポーションを振りかける。
すると、爆発や木っ端でとても見せられなかった外見は嘘のように消え去り、元の美少女狐人に戻っていた。
「約束通り、しっぽもふもふふあはあはうはううあなあ。」
布団の中に潜ってしっぽをもふもふしているトリスは、端から見ればただの変態そのものだった。
【称号:睡眠姦(攻)を取得しました。】というアナウンスがトリスの脳内に響いた。
【睡眠姦(攻)と行動の効果により、スキル:もふるを取得しました。】
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