第63話 ベスト4出揃う。

「おぉっとぉ、もこもこくもこ選手の糸がトリス選手の魔法矢(火)によって破られたぁ!」


 そのまま魔法矢はアルケニーであるもこもこくもこの胴体部分に直撃し、身体が炎上する。


「あちっあちっあーちーちーって、これ酷くない?酷くない?」


 更に炎を纏った魔法矢はくもこの身体を延焼していく。


「あ、終わった。」


 そこにはとても見せられない蜘蛛の魔物(上半身は女性)、アルケニーであるもこもこくもこの焼死体が転がっていた。


「勝者ァトリス選手ゥ!」






「これは予選の再現かぁ。会場が水の牢で覆われ水没したぁ!」


 しかしこれは水の精霊アクアと、ハーフではあるが人魚を持つキョウカにとっては主戦場である。



「ただの水没ならお互いの主戦場ですけどね。」

 

 水棲の生き物同士だからか、アクアとキョウカは互いに言葉のやりとりが可能だった。


「どういうことかしら?」


 水の中だからか、キョウカの姿は人魚スタイルとなっていた。


「気付きませんか?」


 水棲の生き物だというのに、その泳ぎがぎこちない事に。


 普段は陸でしか活動していないからだろうか、キョウカが気付くのが送れるのも仕方がないのかもしれない。


 水牢と水没によって満たされた闘技場内は毒水で一杯だった。


 キョウチクトウの毒が水に溶けるかとか、無色なのかという事は問題ではない。


 ゲームの中だからという便利な免罪符でその辺りはどうとでもなるのだ。


 アクアは別に色が付いていようと、匂いが在ろうと気にする必要はなかった。


 バレていても、水で満たされたこの水闘技場を破壊されるとは思っていなかったからである。


「何か鈍いと思ったら……この場に入った時点で既にアドバンテージは取られていたという事ですか……」


 キョウカは鰭を動かしアクアに向かって突進する。


 玉砕覚悟でダイレクトアタックをしようというのか。


 右手には地の精霊ノームの力を利用て作成したのか、銛を取り出した。


 土の力で作成したものとはいえ、金属製の先端と遜色のない鋭利さだった。


 これがバケモノ予備軍のアクアでなければ大ダメージを受ける事になるだろう。


「水の精霊が、水中で……スク水という三種の神器を得た状態で負けるはずがありません。」


 アクアが持つもう一つの鞭、ツルニチソウの鞭を奮う。


 繁殖力においては加速度的に増殖するえげつない植物である。


「一回戦の時といい、かなりえげつない幼女様ね。」


 ツルニチソウの鞭がキョウカの身体巻き付け傷つけると、瞬間的に繁殖していく。


 身体中からキョウカの血を養分に爆発的にツルニチソウが繁殖し、身体を喰い破る。



 そしてキョウカのHPは全損し、試合は決着する。


 その瞬間水牢と水没による水は解除され、元の闘技場の姿に戻る。


 床にはツルニチソウに覆われた、キョウカだったものが転がっていた。


「勝者ァ!アクア選手ゥ!!これで幼女三姉妹のうち二人がベスト4へ進出が決まったぁ!」




 

「お注射好き?挿す方が好き?挿される方が好き?」


 闘技場で向き合うマロンとみこぬこナース。

 

 一回戦の時と違い、マロンはメイド服を装着していた。


「お往きなさい、御主人様ぁ!なんちゃって。」


 扇子で隠す口元が幼女なのに妖艶……かどうかは仮面のせいでわからない。



「ラウンドワンッファイッ!」


 審判も悪ノリしていた。ラウンドツーはないのだ。


「一回戦のようにはイかないよ。だって私にはツイてないんだもの。」


 放送ギリギリを喋るみこぬこなーす。


 巫女なのか、ねこ獣人なのか、ナースなのか統一感のないみこぬこなーす。



「注射は痛い。痛いから。」


 みこぬこナースの動きは早かった。開始の合図で彼女は一気にマロンの右側へ突進していた。


 マロンは視線を右側に移すと、そこには既に注射器を挿そうと構えたみこぬこナースの姿があった。


 みこぬこなーすの種族はランダム種族で選択したボルボ。遠縁にジャックフロストという氷の妖精がいる……という設定だ。


 ただし、猫獣人とのクォーターという設定も盛り込まれている。


 みこぬこなーすのねこみみは自前なのである。決して付け耳ではない。


「ひーほーっ」


 パンッと音がすると、それはマロンは扇子でみこぬこなーすの巨大注射器をはたき落とす音だった。


「駐車禁止……違う、注射禁止だよ。」 


 武器破壊というものは存在するが、これは単純にはたき落としただけ。単純に


「針は危ないから……」


 マロンは拾い上げた注射器から針を引き抜いた。そして注射器の中に液体を注ぎ込む。


 何を入れたのか聞いてはいけない液体である。


 そんな事が出来たのは、注射器を落としたショックでみこぬこなーすに隙が出来たからである。


「そんなにお注射が好きなら、自分でどうぞ。」


 マロンは決して高くはない敏捷のステータスであるが、みこぬこなーすの後ろに回り込むくらいには問題がなかった。


「へっ?あうっ。」


 ぶすっという効果音を付けたしたい絵面で、マロンはみこぬこなーすの尻に注射器をぶっ刺した。


 そして、液体を注ぎ込んでいく。


「はふんっ♪あ、そりぇ、色々な意味でらめぇぇえっぇぇぇぇっ」


 ぐるるるるるるっるるるるるるるるるる……


「負けっ、負けでいいからトイ……」


 グイッ


 マロンがみこぬこなーすの肩を掴んだ。


「勝負はこれからだよ。壊れたマリオネット……」


 マロンはそれから踊った。2000年頃流行った深夜アニメの主題歌を。


 同人ゲームから派生して作成されたキャラクターのキャラソンというものを。


 みこぬこなーすはマロンと同じ動きをとる。尻に力を入れて。


 2曲もこなした頃には、みこぬこなーすからは大量の脂汗が顔を流れていた。


 残酷なようだが、勝敗はHPの全損か「参った。」と言うかの二択である。


 みこぬこなーすは負けで良いからとは言ったが、参ったとは言っていない。

 

 だから審判は試合を止めないのである。


 それと、審判はちょっとだけ見て見たかった。可愛い女の子が色々我慢している姿を。


※審判は実は中の人がいて、それは運営だったりします。この審判をした運営は後に変態と社内で言われるようになる。



「お、おにぇがいぃ。と、といれに。イかせて。」


 足をぎゅっと閉じて尻に最大限の力を入れてもじもじとしているみこぬこなーす。


 マロンは思考する。


 イかせて。←恐らく18禁的事象が起こる。そして絵面がヤバくなり、二度とプレイ出来なくなってしまう程のトラウマを植え付ける。


 トイレ。←参ったと言うだけで良いじゃん。


「あの言葉を言うだけで良いんだよ。」


 ここで「参ったと言えば良いんだよ。」とマロンが言ってしまうと、言葉の綾というものでマロンが参ったと言ったと受け取られかねない。


 だからマロンはあの言葉と濁したのだ。


「一回戦が始まる前に、HPが全損するか、あの言葉を言う事が決着と言っていたよ。」


「ままあまあままま、まいまいまいりましたぁぁぁぁぁあぁぁぁ。」


「試合終了ゥ、勝者、マロン選手ッ!」


 ここで漸く試合を止める審判。マロンが鬼畜なら審判もまた鬼畜である。


 ぎこちない動きで闘技場を後にしようとするみこぬこなーす。


「ちょっとだけでちゃったかも……」


 みこぬこなーすは一目散にトイレへ……


 一回戦で見せたマロンが感じたサイコさは、結局出す事もなく試合を終えてしまっていた。


【称号:鬼畜女王を取得しました。】


※鬼畜女王:魅力+50。Mに特攻効果。M系の因子を持つ者とは相性が良くなる。



 マロンが注射器に込めた液体……


 決して魅了がついたポーションなどではなく、実験で色々作成していたポーションの亜種(失敗作とは言わない。)である。


「腸内洗浄のためのクリーン効果が付与された液体だったんだけどね。腸内を綺麗にした後、無駄なものを排出しようとしたんだね。」 


 一応これは闘技大会である。戦いなのである。


 戦った結果なのである。何と戦った……かは想像にお任せする。




「さてさて!これでベスト4が出そろったァ!ベスト4に残ったのはなんと全員女の子だァ!野郎どもーヒャッハーだー!」


 マロン達3人以外の準決勝進出者は、パンサーぴんくという名の狐獣人の女の子だった。

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