第56話 本戦トーナメント抽選
ラマン商会が後ろ盾になる。それは一足先に他のプレイヤーより先に職人デビュー、または商人デビューが出来るという事。
掻い摘んだ話は晩餐会の後という事で、後ほど商談室に集まることとなり一度お開きする事になった。
フォルテも聞きたい事があるようで、少し考えを纏めたいからという事だった。
それはマロンとしてもちょうど良かったところだ。
ラマン商会側が気になるのはポーションと仮面の事だろうという事は想像に易い。果たしてそこからどんな話に派生するのか。
マロン達はそれぞれ別の部屋を用意されている。
いくつも並んだ客間のうち3つ並びで当てがわれた。どの部屋も調度品やベッドなど、どれも微妙に差異こそあれ、どれも高価なものばかりである。
飾られた花も部屋によって違った。壺も微妙に違う、絵画も作者からして違うのだろう。
驚くべきことにベッドには天蓋がついている。マロン達としては、天蓋なんて少女漫画の中だけの話だと少し興奮気味だった。
最初はアーリンやプリュネが遊びに来るかと考えていたマロン達であったが、当てが外れたのかどちらも来訪してはこなかった。
食事も摂った後であるし、小さな子供という事もあってお眠の時間になったのかもしれない。そうであれば、年相応と言えるだろう。
今後どうしようかと、話し合うためマロンの部屋に集まっていた。
【本選出場の16名の皆様、組み合わせ抽選会を始めます。5分後に転移しますので、入浴の方、トイレの方は気を付けてください。】
「あ、組み合わせのアナウンス来た。」
顔を上げてマロンが叫ぶ。トリスやアクアもそれに続いた。
「ぱんつを穿こうとしてるところだったり、踏ん張ったりしてるところだと転移した時まずいね。」
トリスが問題発言を漏らす。
「トリス……女子なんだからもう少し言い方ぁ。」
トリスに浣腸してやろうか、もちろん両手でズボっとやる小学生的な物理の方と考えるマロンであった。
「転移にももう慣れたね。」
マロン達は3人固まっていたため、転移先でも一か所に固まっていた。
そこには続々と選手が集まり、30秒もしないうちに16人が集合した。
身長差があるため全てを見ることは出来ないが、様々な恰好の様々な種族が勝ち抜いたようである。
プレイヤー同士の雑談をするまもなく、突如現れたマイクを持った髭の男性が話し始めた。
「それでは、これから順番に名前を呼びます。呼ぶ順番は第二次予選のA1からの順となりますので、呼ばれましたら前に出てきていただいて、こちらの箱の中からボールを一つ取ってください。」
「引いた番号がトーナメント表の数字になります。全員が引き終わり、対戦表が完成するまでお待ちください。」
そしてA1の勝者がクジを引きに前に出る。ボールを引くとプレイヤーの名前がトーナメント表に記載されていく。
こうしてトーナメント表が埋まっていく様は、高校野球の組み合わせ抽選などを思い出す人も多いのではないだろうか。
わくわくドキドキが止まらないという人も中にはいるだろう。
「次はマロン選手……あ、届きませんね。誰か……」
進行役の男が言い終わる前に、マロンは両脇を抱えられ持ち上げられる。
前の順番で13番を引いた、予選開始前の段階で優勝候補筆頭と言われていた、高身長高ルックスを兼ね備えた聖戦士を目指している男。
名を
「セクハラ寸前ですからね、気を付けてください。」
進行役の男性は光陰を注意した。
マロンは特に気にしていなかったが、進行役はしっかり仕事をする。
光陰はニヒルなマスクで「申し訳ありません、以後気を付けます。」とクジを引いたマロンを下すと謝罪した。
「マロン選手、14番です。ここでもう既に対戦が決まりましたぁ。先ほど持ち上げた方と持ち上げられた方という面白い組み合わせです。」
身長差約70cmの戦いとなった。
その後も順調にクジは引かれていき、トリスは2番を引き対戦相手はエルトシャン・デスラヴィという名前のエルフ女性。
アクアは11番を引き対戦相手は、飲酒王子というドワーフに決定した。
クジはドンドン引かれていき、あと数人というところまで進んでいる。
するとマロン達から見ても異質なプレイヤーがそこには存在した。
顔は客観的に見て可愛い、それは良い。
しかし、衣装は巫女装束、装備は注射器や聴診器、頭にはねこみみ。
一言でいえば「見た目やべぇ奴。」であった。
組み合わせ抽選は数字の書いてあるボールを箱の中から一つ引く。残った数字は僅か。彼女が引いた番号は……
「みこぬこなーす選手、15番」
どうやらやべぇ奴は1回戦最終試合に決定した。
「お互いに1回戦勝てばマロンの2回戦の相手だね。」
トリスが肘をついてマロンに呟いた。
決定した本戦トーナメント表を眺める、本戦出場者達。
「なんだろう、この順当に勝ち上がれば私たちでワンツースリーフィニッシュになる組み合わせは。」
決定した組み合わせ抽選表を見てマロン達は、思い思い臥せっていた。
「それにしても……3人の中で一番正統派な私がいきなり試合だね。」
マロンとアクアがジト目でトリスを見る。視線に対し、何をバカなとトリスはため息をついた。
「正統派……どこら辺が?」
マロンがジト目を継続してトリスに突っ込む。トリスはやれやれ心外だなとさらにため息をついた。
「予選の動画見たけどさ、私が一番普通に敵を倒してたでしょうが。」
マロン達は自分の予選を思い出す。普通ではないなと思うが口には出さない。
死の女神で相手を握りつぶしたマロン、会場を水没させ相手を溺死させたアクア、魔法矢で死角からこめかみを貫いたトリス。
トドメの一撃方法を考えれば、トリスが一番普通のプレイであった。
「それでは、本戦出場の皆様。明日は午前10時試合開始となります。第一試合のお二方は9時~9時半までにはログインをお願いします。」
マロン達は進行役の男性の言葉を最後に、再びラマン邸の客室へと転移した。
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