第52話 美幼女戦隊・仮面美幼女カルテット
「ここで連れ去られたの?」
アクアがプリュネに訊ねるとコクリと首を縦に振った。
何かの戦闘跡かと間違うような光景が広がっている。
潰れたドラム缶や、ひしゃげたドア、割れたガラス等が飛散していた。
「これは……」
マロンが何かを拾った。
「サロン・キティ?」
名刺のようなものを拾得したマロン。そこに書いてある名前は店の名前だろうか。
「あ~多分だけどね。それ娼館だよ。」
トリスが頭をぽりぽり掻きながら言い辛そうに呟いた。
「よし、じゃぁいっちょいってみっか。」
マロンが、七つ集めると願いの叶う漫画の主人公が、ゲーム版で喋った時のセリフと同じニュアンスで提案する。
ちなみにそのゲームのセリフは「いっちょやってみっか。」である。
「そんな軽い気持ちで……」
「でもプリュネちゃんのためなら、私行きます。」
アクアが珍しくやる気であった。
「プリュネちゃん、今からお母さんを助けに行くけど、これつけて。」
それはマロン達とお揃いのお面……仮面だった。
マロンが作った仮面の中で防御面(物理と魔法と精神)に重きを置いて製作したものであった。
「これを被ってるとね、お姉ちゃん達とお揃いであるのと同時にプリュネちゃんを守ってくれるんだよ。」
マロンがそれっぽく説明する。
「わたった。おにぇがいしましゅ。」
ところどころ微妙に舌ったらずなプリュネの口調はマロン達を和ませる。
「伊達に前日に色々製作してないってばよ。」
「マロン、あんたキャラブレまくりだけど。」
「気にしたらそこで試合終了だよ。」
「まぁいいけど。」
マロンがストレージから取り出した方位磁石に似たアイテムだった。
「プリュネちゃん、お母さんの持ち物ってある?または貰ったものとか。」
「それをこれに入れると、お母さんのところまでコレが導いてくれる……はず。」
自分のもの以外で試した事がないため、はずとしか言えないマロンだった。
これも色々作っていた時の副作用というか副産物で出来上がったものである。
時計を作っていたら、ドラ〇ンレーダーみたいなものが出来上がっちゃったのである。
「これでぇいい?」
プリュネが取り出したのは円形に太く縁取られ、真ん中に薄い膜が張ってあった。
「うん、これどう見ても近藤さんだよね。」
「ハンカチとかそういうのを想像してたけど、まさかのイチモツだね。」
マロンが近藤さんをセットすると、レーダーが光り始めた。
「おぉ、これが現在地でこれが持ち主?」
レーダーのセンターがぽちぽち点滅を繰り返している。
そして同じように点滅を繰り返している個所がある。
元の持ち主が母親で、プレゼントされたのがプリュネのため二ヶ所が点滅しているのは当然でもある。
「じゃぁ、この点滅が中心にくるように移動しよう。そこにプリュネちゃんのお母さんはいるはずだよ。」
「と、いうわけで到着しました。恐らくこの建物の中にプリュネちゃんのお母さんがいるはずだよ。」
5階建てのホテルのような建物の前に到着したマロン達。
入り口の前にはスーツのようにビシっと着こなした怪しげな男が二人。
そしてそれよりももっと怪しい仮面の幼女4人組。
「おっと、ここはお嬢ちゃん達のようなちびっこがくるようなところじゃないよ。」
男がマロン達に気付き声を掛けてくる。
怪しい男が怪しい幼女に話しかける様は、外野からするとどんな光景に映っているだろうか。
「連れ去られたこの子のお母さんを取り戻しに来ました。邪魔をするならズドンだよ。」
「そうか。お嬢ちゃんはボスの女になる人を奪いにきた悪い子なんだね。」
男がマロンを捕まえようと手を伸ばすが、マロンは華麗にそれをバックして交わした。
そしてマロンには男の言ってる意味がわからない。マロンはストレージからある物を取り出した。
「なんだそれは!?」
「パ・チンコだよ。」
「言い方……」
マロンがパチンコにセットした道端の小石を摘まんで放つ。
「がはっ」
「なんだとっ」
パチンコを喰らった男は身体に穴を空けそのまま地面に倒れる。
横にいた男は驚愕に身体を震わせどうしたらいいか困惑していた。
「お兄さんはどうする?案内する?それとも冥府の女神様とお見合いする?」
ちなみに身体に穴を空けた男は死んではいない。
傷口はアクアが瞬時に水魔法で凍らせた。直ぐに病院なり協会なり回復魔法なりを掛ければ、特段命に別状はない。
「わ、わかった。だが、玄関の中までだ。」
シュンッ
トリスの魔法矢が男のこめかみの横を掠めた。
「脳に打ち込んでも良いんだよ。」
やべぇ幼女に絡まれたと思った男は、仕方なく案内をする。
この世界がスキルや魔法が年齢を凌駕する事は男も理解している。
幼女だと思って舐めて掛かるとボスに消されるか、幼女に消されるかの二択の道になってしまう事を男は理解していた。
第三の選択肢、無事に足抜けするというのが今一番選びたい選択肢だった。
「お兄さん。きちんと案内してくれたら私達は何もしないよ。」
男はマロン達を案内した。
専用の通路を通ったので他の従業員という名の構成員とは出くわさない。
「サブロー、テメーこの通路に知らねぇガキ連れ込んでんじゃねぇ。」
ボスの部屋と思われる扉の前にも二人の男が仁王立ちしていた。
その片方が、マロン達を案内した男
「誰だっ。これからいいとこだ……って誰だテメェら。」
幼女に対してもテメェ呼ばわり、悪党決定の瞬間である。
「こんないたいけな幼女に向かって随分な口の利き方だね。」
トリスが冷静に漏らす。そして周囲に視線を向けるとボスと思われる男が、後ろ手に両手を縛られた女性は恐らくプリュネの母親である事がマロン達にも理解が出来る。
そしてボスは悔しそうに我慢している表情の、その女性の胸を鷲掴みにしていた。
さらに少し離れたところには、側近と思わしき男が二人護衛のように立っていた。
「私、スイッチ入ったよ。トリス、アクア、私のノリについて来てね。今こそ私達の中二魂を見せる時だよっ!仮面してるんだし大丈夫だよねっ」
右手に扇子を装着したマロンが、なにやら動き出しポーズを取る。
90年代の自称美少女戦士等の変身ヒロインモノを見ている人ならば、なんとなく想像の出来る動きであった。
「幼女を泣かせるなんて赦せない、やられたらやり返せ、やられる前にヤレ、死と復讐の美幼女仮面……クリ!」
マロンが目線を流してトリスを促す。自分に続けと言う事である。この恥ずかしい中二セリフに。
「くっ……エロスの風は
トリスは拳で殴りあったりする、巨大なロボット的なスーツものの主人公の流派のようなセリフのように叫んだ。
「「二人合わせて……」」
「美幼女仮面『クリとリス!』幼女の涙に変わって……
超ノリノリである。仮面で素顔が見えないから恥ずかしさが天元突破していても大丈夫であった。
「そして……」
アクアがそれに続く。
「仲良き
HollyなのかHurryなのか微妙なアクアの活舌である。
桜吹雪のあの人と赤ずきんなまじかるぷりんせすさんを足して、繋げたようなセリフをアクアは言い放った。
もちろん、敵?であるボスも、ボスの側近達も、両手を縛られてない乳を揉まれている母親も、ナニが行われているのかわからないと言った感じで唖然とし口を開けている。
「ママをかえちぇー!」
もう一人の仮面の幼女……プリュネがボスに向かって指を差した。
「「「「四人揃って(ちぇ)~」」」」
「「「「美幼女戦隊!仮面幼女カルテット(ちょぉ)!」」」」(仮)
いつ練習したんだというくらい綺麗なハモりで、誘拐犯達を圧倒していた。
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