第50話 一方その頃運営は……
「山城君、ちょっとおもしろい事になりすぎてるじゃない。」
イベント進行を監視する名目で数人のスタッフがニューワールド内を巡回している。
ログの確認をするスタッフ以外にもある人物は実況に、ある人物は審判に、ある人物は主催者になりすまして。
予選のログを確認していた
「そうっすね。以前目に止めたボディコニアンのプレイヤーヤバイっすね。ゲームをかなり進めた状態でならまだわかるんすけど。」
「1週間で女神4人も篭絡してるって流石に頭おかしいわね。」
「おかしいのはプレイヤーの頭じゃないですけどね。ダメですよ、お金払って買って下さってるユーザーに頭おかしいなんて言っちゃ。」
見た目のチャラさとは違い、人間としての性格は良い方な山城。
「私実況解説で目の前で見てましたけど……なんかすごかったです。」
山城の隣の席でモニターとにらめっこしていた二宮四葉(24歳)、学生時代は二四が八ではっちゃんという渾名で呼ばれていたが、会社では四葉の方から「よっちゃん」と呼ばれる事が多い女子社員が、モニターを見ながら呟いた。
ただし、よっちゃんと呼ぶのは常磐をはじめ、一部の女子社員達だけではある。
男性社員が呼ぶと、「それセクハラです。」と返される。
実際はどうなのかはわからないが、受け取り方でハラスメントの許容定義は変わるので、四葉が嫌な気持ちになるのであれば、それはセクハラとなる可能性は大である。
「よっちゃん、語彙力!」
常磐が返すと四葉は頭に手をやり「てへっ」と舌を出していた。
「そもそもうちのスタッフもおかしいですよ。色々な神話混ぜすぎですし。それぞれの神話のガチファンがいたら怒られますよ。苦情モンですよ。」
それについては、似て非なるものですと返す事で対応可能と社内では解決した話である。
そのため、検索サイトで引っかかるような内容と違う効果や役割りだったとしても、似て非なるものなので問題はないと。
「復讐と死が味方についちゃったけど、ダーク路線にでも行くんですかね。」
山城の言葉は至極当たり前っぽい路線だった。
「いや、この子ボディコニアンでしょ。踊ってなんぼでしょ。というか……他人のステータスを覗けたらプレイヤー全員卒倒するでしょうね。」
運営である常磐達はマロン達のステータスなどは把握する事が可能である。
不用意に見たりするわけではないが、他ユーザーからの問い合わせや、プログラム上おかしいなと疑問に感じた時には、ログ共々確認する事がある。
そのため、マロンのステータスは一応運営には筒抜けであった。
「いまのとここの子がラスボスでしょ。つーかこれ俺達製作者がボスを作る必要ないんじゃないかと思うくらいっす。」
「一応、小ボスは各地に点在してるんだけどね。流石にまだそんなに踏破されてないだけで。」
攻略組のユーザーが小ボスと位置付けられる敵は、何体か倒していたりはする。
そのため、この第一回闘技イベントではそうしたプレイヤーは一歩二歩抜きん出ていたりする。
トリスやアクアが第二次予選で倒した二つ名持ちのプレイヤー等がそうしたユーザーである。
当然、マロンが瞬殺したあの闇炎の人もその一人だった。
そのため、そうしたプレイヤーが優勝候補として名前が挙がるのは必然でもあったのだが。
これまで名前が知られていないマロン達が、あっさりこうしたプレイヤーを倒した事は大注目なのである。
ストーカーやファンクラブが出来てしまうくらいには。
※ストーカー:筆頭候補として挙がるのは、触手トレントである。
「でも、一応プログラムのミスとか不正とか一切ないんですよね。キチガイみたいな魅力のせいって言っても過言ではないっす。」
「死を振りまく復讐の幼女、踊る葬送パレード扇動者、魅惑の殲滅美幼女が舞い踊る、闇夜に変わって
セーラー服の自称微少女戦士や、それをピンチに現れる自称イケメソなタキシードを着た仮面の恋人みたいな、とても痛いセリフ。
1991年から1995年くらいに中高生だった人ならば一度は考えたであろう、自分の登場シーンのセリフ。
二宮四葉は世代ではないが、学生時代中二病を拗らせて
「よっちゃん……そんな中途半端な中二セリフどうしたの。」
「彼女の決めセリフですよ。こうしたオンリーワンなキャラには必要です。」
「二宮、若いのにネタは結構古いの持ってくるよな。」
「それは私がおばさんくさいって言いたいんですか?いいでしょう、受けて立ちましょう!」
「んだとう!この爆弾料理人がっ!」
※爆弾料理人:Wight Angelという2000年に発売された18禁ゲームの登場キャラ、野々原いちごの代名詞。
決して本編とは関係ない設定なれど、ユーザーがシナリオを書くアナザーストーリー(AS)において
本編作者によって命名された。当時のAS仲間くらいしか知らない。
絵師は神絵師の一人である。以降やべぇ料理を作る者を爆弾料理人と揶揄する事が多い。
「なにおう、このロリメイドスキー!」
「うっせーこのひんにゅっ……」
「煩いバカップル!」
恨みの籠った呪いの一喝が、上司でもある常磐里桜奈(3〇歳)より下される。
ちなみに山城と二宮は社員公認で付き合っている。会社では公私混同を、出来るだけ避けるために苗字呼びをしていた。
なお、常盤里緒菜(3〇歳)は独身、彼氏なしである。
ただし、常盤里緒菜(3〇歳)は製作スタッフ随一の美女でもあった。
さらに、山城と二宮の二人は付き合ってるくせに、大昔の中学生みたいな清い交際中である。
理由は……四葉の性的思考の性……せいである。
常磐達から少し離れた並んだ席では二人の男女がパソコンのモニター画面を見ながら呟いている。
「俺の作成したボディコニアンがこんな事になってるとはな。」
「私が考案したエロフも中々のものでしょ。」
ボディコニアンを考案した昭和の親父社員と、エロフを考案した女性社員の……渋いおじさんと可愛い女子の不釣り合いな二人だった。
「マロンちゃん……一度操作させてくれないかなぁ……」
二宮双葉が願望を漏らしていた。
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