第38話 ある意味友情の環

「で、あんたたちは何をシているの?」


 マロンとアクアは互いの足を交差して組んで腹筋して、上体を上げた時に身体を左右に「フンッフンッ」と捻っていた。

 トリスのログインを確認したマロンは目線をトリスに向けて説明をする。


「スパルタンセック……スパ●タンXでジャッ●ー・チェンとユン・●ョウがオープニングでやってた腹筋。」


「あ、汗はあんなに大量に出ませんけどね。」


 そういうアクアの周囲は液体で一杯である。


「こ、これは私が水の精霊だから色々漏れ出てしまって……」


「一応これで筋力と体力が1ずつ上がったよ。」




 マロンとアクアは修行を切り上げると、察そうと風呂場へと消える。

 汗を流すためであり、何の不思議も蟠りもないのだがトリスは少しもやもやしていた。


「狭い……」


 もやもやしていたトリスは、別に汗を掻いたわけではないがマロン達の浸かる湯船に入り込んでいた。


 マロンに寄りかかるようにトリスは身体を入れている。正面にはアクアの姿。

 湯船に意思があるとするならば、美幼女3人が入ってくれて極楽であろう。

 それはお湯にも言えるかもしれない。


「ちょ、ちょっとトリス……押し付けないで。」


 ナニをとは言わない。背面状態で押し付けるものなど背中か尻しかない。


 ちなみにトリスはマロンの実験で再生を使ってもらい、アレは再生している。

 つまりはマロンもトリスも未経験状態に身体は戻っていた。


「私が押し付けてるんだよ、マロンのおぱーいを。」




「それで、これは?」


 身体を拭いて着替える前にマロンは二人をリビングに通した。

 ここには全裸の美幼女が3人。ただし、一応バスタオルは身体に巻いている。


「トリスに作ってみた。試着してみそ。」


 

「これ、何の冗談?」


「冗談じゃないよ。オオマジだよ、だってアクアがスク水でしょ?対極のものを作りたくなるじゃない?」


 そこには昭和の人間には見慣れたモノ、平成後期やそれ以降の年代には風俗店やえっちなビデオやゲームでくらいしか目にする機会のなくなったモノ。


 紺色ブルマーと体操服が置いてあった。ご丁寧に体操服にはお腹の部分にゼッケンが縫い付けて在り、そこには【とりす】と平仮名で書かれていた。



「日本の3大萌え衣装、紺色ブルマー、旧スク水、メイド服……三種の神器を揃えたくなるじゃない。」


 マロンは自分用にメイド服を作成していた。自分だけ普通の衣装なのは……


 元の装備が紐みたいなエロセクシー衣装だからに他ならない。


 何故かメイド服のカテゴリがその他に分類されるのは謎であるが、おかげでマロンのステータス補正としては大いに助かる事になった。


 

「一応ね、紺色ブルマーは敏捷+30と魅力+20、体操服の方は体力+20と魅力+20だよ。」


 魅力が向上するのはマロンが製作する以上仕方のない事であった。

 


「ねぇ、マロン。不思議なんだけどなんでカテゴリが装備欄のその他になるの?アクセ的な装備なの?」


「それはわからない。私用のメイド服もその他だし、疑問に思うのは止めたよ。」


 マロンとアクアは既に着替えている。トリスがまじまじとブルマーと体操服を見ている間に済ませていたのである。


「それで、アクアにはこれね。」


 アクアは鑑定すると疑う事もせずに装着する。

 腕と首にはマロン産の輪……腕輪と首輪を装備する。


 効果はそれぞれ腕輪が筋力+20と魅力+10、首輪が器用+20と魅力+20が付与されていた。


 友好の輪の意味も兼ねていたのだが、上手く伝わっているかはわからない。



「それと……これは友好の証の指輪。3人でして出来た世界で3つしかないモノだよ。」


 アクアの錬成とマロンの鍛冶スキル等を駆使して作成したものである。

 あとは他にもあるのだけれど、トリスも後にすぐ理解する事になる。

 


「これは……初見殺しだね。」


 トリスは指輪を手に取り早速鑑定を掛けてみる。

 実際には相手を殺めたりとか物騒なものではないのだが、たまったもんじゃないと言う意味では初見泣かせではある。


「よくこんなモノ錬成・作成出来たね。」


「材料……知ってるでしょ。トリスの協力もあったからだよ。」


 にこりと笑うマロンの表情が少し怖いトリス。それと同時に違う感覚も湧き上がって来る。


「ちょ、ちょっと恥ずかしいから思い出させないでっ。」


 最近少しだけマロンの方がマウントを取りつつあった。



「3人のパワーは絶大って事だね。」


 これはマロンが18禁要素を逆手に取った、ある意味反則級製作方法である。

 マロンには何度も処女喪失を経て羞恥心が薄れてきているのか、平然と話しているいた。

 アクアは羞恥心が大きいのか真っ赤になって俯いている。


 トリスは……唖然として開いた口が塞がりそうもなかった。


 何しろ、この指輪には【聖絶】という物理も魔法も遮断する結界を展開する力を秘めているのだから。

 もちろん効果は然程長くはないのだが、それでも充分に初見泣かせにはなるのである。


 ちなみに聖絶というスキルはゲーム内に存在する。

 聖職者系の職業を得る事で可能となるが、ゲーム開始1週間足らずで覚えられるものではない。

 ただし、職業だけで取得出来るわけでもない。運営は本来そういったイベントやクエストも考えていたのだから。


 職業取得イベントやスキル取得イベントも本来考えられていたのである。

 それをマロン達は覆して先に入手してしまったとも言える。


 しかし聖水の効果だけでこれだけのモノは作成出来ない。


 トリスが偶然拾って来たセクシルという鉱石は、ニューゲームにしかないオリジナル鉱石である。

 ラノベやゲームで良く目にするオリハルコンやアダマンタイト、ヒヒイロカネでは面白みがないという事で、運営が考え出したものである。

 それがなぜ偶然トリスが拾ってしまったかではあるが、ここがどんな森か考えれば想像出来るだろう。


 ここには人間の町付近にはない木や花、鉱石なんかも存在する。

 当然魔物も同様である。端的に言えば、ゲーム開始直後のプレイヤーが投げ出してしまいそうな場所からスタートしているのである。

 そのようなところで逞しく過ごしているこのマロン一家がおかしいのである。


 そのおかしいのを覆してしまったのが、マロンの高すぎる魅力のせいだというのに気付く事があるのかはわからない。

 シンシアをテイムしたところから全ては狂ってしまっているのである。


 


 マロンがセクシルという鉱石を試しに工作してみると、セクシービームみたいなのが出る事がわかった。

 これを何かに応用できないものかと、度重なる実験の果てに以前作ったえっちになるポーションを振りかけてみたところ……


 科学反応のようなもので、結界が出来上がってしまう。

 そこで聖水を混ぜたらどうなるかと思い、一人で実験をしてみる。


 すると光子力バリアのようなものが出来る。もちろん「パリーン」と割れる事はないが。

 その時の効果は物理・魔法ダメージ軽減程度だった。


 恥を忍んでアクアにお願いして聖水をプラスすると、軽減が半減に変わっていた。

 そして満を持してトリスから、トリスのためのアイテムに必要と、土下座をして頼み込んだところ入手するに至った。


 トリスも土下座が欲しかったわけではないので、対価をハグからの頭なでなでに変更はしたのだが。

 それと出してる所は見せられないよという事で、必要な容器に入れるで妥協する事にはなったのだが。

  

 そして完成したのが聖絶なんて、序盤では取得出来ないスキル効果の付与された指輪となったのである。


 もし、この製作方法が世に出回る事があるのなら、別名「聖水の指輪」と呼ばれるかもしれない。


 尚、この一連において、指輪を装備した3人は称号が追加される。


 ●激レアスキル製作(知性+15、器用+15)

 ●激レアスキル早期取得(腕力+10、知性+10、器用+10)


「なんか身に覚えがないのに、称号を得たと思ったらこういうわけね。」

 

 聖水という重大なモノを使用しているので製作の殆どに携わっていなくても、トリスもその一員と見なされていたのである。



「あ、なんかマロンとアクアの愛を感じるわ。」


 なぜか温かい気持ちになる指輪だった。




「実力確認のために狩りにいきたいぞー!」


 マロンが唐突に右腕を突き上げ叫び出す。


「お、おー」


 小声でアクアがそれに続いた。


「まぁ第一回イベントは戦いがメインだし、それもアリかもね。」


 先を見据え、トリスも続く事になる。

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