第36話 ステータスアップと復讐は思わぬ時に

「マロン、何やってんの?」


「見てわからない?腕立て伏せ。他に腹筋、背筋、ヒンズースクワット、シャドーボクシングもやってる。」


 トリスにエロいトレントの話を聞いてからマロンは自衛手段をしなければならないと感じていた。


 他のプレイヤーの情報がわからないので、自分がどの程度の強さなのか比べようもない。

 あのトレントはその異質さも相まって良いようにされてしまったが、単純なステータスではマロンは劣っていなかった。

 ただ、相性が悪かった。


 マロンは知らないが、あのトレントの中の人……プレイヤーは触手大好き人間だったのだ。

 触手で卑猥な……ゲームを何本もプレイしており、薄い本もたくさん読んでいた。


 2000年初頭、いり●んという触手好きのゲーム会社の人が存在するが、その人に勝るとも劣らない触手愛に溢れたプレイヤーである。


 それはさておき、例の触手トレントと対峙してもビビらない胆力と、タイマン張っても勝てる強さを持ちたいとマロンは思っていた。


「まぁ奴と対峙した時に退治したいという気はわからなくもないけど……」



「ところで、マロンは分かるとして、なんでアクアも一緒になってトレーニングしてるの?」


 マロンの横では一緒になって腕立て伏せをしているアクアの姿もあった。

 実体化しているとはいえ、アクアは水の精霊。


 滴っている液体が水なのか汗なのかわからないが、妙にセクシーさを醸し出していた。


「マロンさんの話を聞いて、変態が近くにいると思うと気が気ではありませんからね。私も少しくらいは自衛出来るようにと思いまして。」


 これがばいんばいんなおねーさんであれば、谷間と汗ですこぶるやらしい場面となるのだが……


 いかんせん、ここにいる3人の女子はみんなが所謂残念系美少女である。

 そっちの趣味の人には天国だけれど、セクシーが大好きな人にはがっかりな事は間違いない。


「あとね、実は筋トレすると筋力があがるんだよ。」


 腕立て伏せをしながら、荒い呼吸の中マロンは爆弾発言を投下する。


「……なんですと?」


 首を伸ばしてトリスは驚いた。




「寧ろベータテスターのトリスが知らない事に驚きだよ。」


 トリスが知らないのも無理がない。

 ベータテストの時にそのような機能は実装されていなかった。

 そして誰も検証しようとしなかった。


 魔物を倒せばレベルが上がる。レベルが上がればステータスが上がる。


 だからこそ失念していたのである。


 レベルで上がらないステータス部分をどうやって上げるかという点について。



「私もアクアも筋力・体力は低いじゃない?足りなければ……補えば良いんだよ。シーザーも言ってたでしょ。」


 この場合のシーザーはカエサルとかそういうのではなく、某奇妙な冒険第二部の名キャラのセリフである。

 氷のツララを某呼吸で繋げた時のシーンである。


「トリスも忍者修行すれば……敏捷上がるなじゃない?」


 マロンの言う修行は素早く動く修行である。短距離走とか反復横跳びとかを言っているのである。

 周辺を探索していた時のトリスは、隠密行動を取っていたため敏捷とは反対の行動を取っていた。


 確かに検証の価値はあるかもと考えていた。


「じゃぁ私もやってみようかな。」


 トリスが修行しようとしているのには理由があった。

 掲示板を見ないマロンには気付かない。

 それでも公式ホームページくらいは見ても良いものではあるのだが……


「これで準備良しっと。」


 考え事をしているトリスを余所に、マロンは着々と準備を進めていた。


「ほらっ、シンシア!イノ乃!おねーちゃんが運動とご褒美をぶら下げてるよ!」


 はっとなったトリスはその様子を見て脱兎の如く逃げ出した。

 

「修行にならないからね。10秒経ったらGO!だよ。」


 シンシアとイノ乃は四つん這いで待機している。

 


「ってぇぇぇぇえぇっぇ、マローーーーーーン!これはあーん-まーりーだーーーー!」


 トリスの首と手と足には鎖が付けられその先には肉がぶら下がっている。

 そしてその肉を食べようと、シンシアとイノ乃が追従する。 


 

「蜂じゃないだけ良いじゃん。」


 その様子を見ながらマロンは呟いた。




「私、一旦ログアウトしますね。現実でもお風呂に入りたいですしご飯も食べておきたいので。」


「うん。じゃぁまた。お疲れ様でしたー。」


 先程まで一緒に入浴していたマロンとアクア。一緒の風呂に入るくらいには仲良くなっていた。


 トリスが忠告したのは2日前の事。この2日でマロンとアクアは筋トレと走り込みを行っている。

 そのため筋力と体力が少しだけ上がっていた。


 その際に【初めてのステータスアップ】という称号を二人は得ていた。

 これはレベルアップや称号以外でステータスをアップさせた事により取得可能となっていた。

 なお、この称号でHP・MPを除くステータス値が+2されている。


 レベルアップや称号以外でステータスがアップする事を知らないプレイヤーは多い。

 寧ろマロンとアクアが初の事である。


 意図して鍛えなければ意味がないのは実証済である。

 そうでなければ、創作系キャラが器用等が上がっていなければおかしいし、魔物を戦っている者が筋力や体力が上がっていないとおかしいのである。


 つまり、ダイエットするぞと運動すれば痩せる事も可能という事にもなるのだが。


 減らすべき肉のないマロン達には関係のない話でもある。


 マロンは……

 筋力:17 → 20

 体力:42 → 45


 アクアは……

 筋力:4 → 7

 体力:7 → 10


 二日間の成果としてこれが良いのか悪いのかはわからない。 

 ただ、種族や職業により上がらないステータスが、修行する事で僅かでも上がると言う事は、キャラクターの育成において大事だという事がわかる。


 脳筋や頭でっかちにならなくて済むという事でもある。


 


「ぜぇ……ぜはぁ……」


 トリスは息を切らせながら小屋の中に入って来る。

 その全身はシンシア達に舐められまくったのか、てかてかとしていた。


「あ、おかえり。それでどう?成果のほどは。」



「ぜぇ……あ、上がったよ。0から1にね。体力も1だけね。」


 体力20 → 21

 敏捷 0 →  1


 敏捷以外にも体力が1向上していた。

 たかが1と侮る事なかれ。レベルが上がった際にHPにも影響するのだから馬鹿にしたものではない。


 

「そ、それと変な称号も得たよ。【大逃げツインターボ】、敏捷10あがったよ。」


 敏捷 1 → 11


「あれだけ苦労して1しか上がらなにのに、変な称号で10も上がるって……」


「まぁ良かったんじゃない?」



※【大逃げ】 大差をつけて逃げるものの、あっという間に失速し捕まった時に取得。



「とりあえずお風呂行ってくるねー。ってアクアは?」



「現実でお風呂とご飯だって。」



「そっかー。」


 ばばばっと衣服を脱いでストレージに洗濯の名目で放り込むと、素っ裸となって風呂場へ向かった。

 小屋の中にはマロン以外にいないとはいえ、トリスの無防備さといえば半端なかった。


 そして小一時間の間、マロンは適当に草を潰して水等に溶かしていた。

 効率のいいステータスアップの仕方……つまりはプロテインのようなものを作成出来ればなと思っての事だった。

 しかしこれまでに出来上がったものといえば……


 酒(麻痺になる)、酒(激しく酩酊する)、酒(酩酊し麻痺する)、果実水(猛毒)、果実水(盲目)、果実水(催淫)

 ろくでもないものしか出来なかった。

 出来上がったものは冷蔵庫もどきの収納庫に保管してある。


 15分もすると風呂場から物音がマロンの耳にも入る。トリスが風呂から上がって来た音で間違いはない。


「あ、マロンー。冷蔵庫の中のもの貰うねー。」


 その収納庫の扉を開けてしまうトリス。一応だめだと言わなければとマロンは手を伸ばしてトリスを止めようと動く。


「あ、待って、それだめ……ってあーあ。飲んじゃった。」


 トリスは冷蔵庫もどきの保管庫から取り出した飲み物を取り出すと、温泉や銭湯などのコーヒー牛乳一気飲みの要領で飲み干した。全裸で。


 一見コーヒー牛乳に見えるその飲み物の正体を、匂いを嗅いだり凝視して確認するまでもなく。

 その警戒心のなさはのちに命取りと成りかねないというのに。


「ん?……ってはいぃぃぁ?」


 冷蔵庫もどきに入っていた飲み物の正体。

 それはオプスに教えてもらった技能の一つ、醸造などを使って作ったちょっとえっちな気分になるお酒……


 ではなく、酒に状態異常を付与出来るか実験したものだった。

 探索した時に採取した草などを混ぜて、どうなるかを観察中のものだった。

 ちなみにこれは昨日作成したもので、キンキンに冷えていた。


「あひあひあひあひあいはいはいいあ。」


 トリスの身体は何かに痺れたように崩れ落ちる。


 ちなみに現在のトリスのバッドステータスは……


 状態:酩酊、麻痺



「思わぬところで仕返しのチャンスが……」


 マロンの顔が鬼婆のように口がニヤソとなっていた。


 僅かにあがった筋力がここで役に立つ。風呂上がりの良い匂いのするトリスをベッドに寝かせると……


「ふぇぁ?ま、まりょん……にゃにすりゅにゃ……?」


 トリスは呂律が回っていない。酩酊により頭はぐわんぐわんとしており、麻痺により身体が動かせない。

 まるで「奥様は生ものですから美味しくいただいてください。」と言っているような、レッツ強●バッドステータスだった。



「トリスゥこれが何か……わかるかなぁ?」


「ひぃっ、ま、まりょん。おちちゅいへぇ。」


 マツタケもどきと電動こけしを足して、さらに凶悪になったそのおもちゃ。

 先日配送して届いたものを参考にさらに改良したその極悪電動こけし。

 それがマロンの幼き股間に装着されていた。


「うらみぃはらさでおくべきか、なんちって。前に私を襲ったお返しだよっ。いっただっきまーす。」


 

 マロンの脳内には『称号【初めての復讐者】、【初めての強●返し】、【初めてのタチネコ制覇】、【電動こけしの伝道師】を取得した。』と流れていた。


 一方トリスの脳内には『称号【初めてのふたなり処女喪失】【初めてのタチネコ制覇】』を取得した。』と流れていた。


 称号が被っているのは同じ行為内で得た称号のためマロン・トリス両方に贈られた。

 



 マロンとトリスが取得した称号条件と効果は以下の通りである。


 初めての復讐者 根に持っている行為に対してやり返した時に取得。筋力+5、器用+5、魅力+30、初級闇魔法取得(既取得者は魔力+50)


 初めての強●返し 強●に対して強●で仕返しした時に取得。体力+5、魔力+5、魅力+30


 初めてのタチネコ制覇 入れる方と入れられる方のどちらも経験した時に取得。その時、穴は前後どこでも良い。器用+15、魅力+50


 電動こけしの伝道師 電動こけしの伝道師と認められた証。この世界にもおもちゃのおもちゃが広がる可能性を広げた証。器用+10、魅力+30


 初めてのふたなり処女喪失 ふたなりの女の子側を喪失した時に取得。体力+5、魅力+50


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