第30話 もっと!モット!農作業! 歌:マロン
「あらあら、こんなところにお客さんとは珍しい事もあるもんだね。」
妙に年寄り臭い言葉でマロンを見つけたオプスは話しかける。
見た目も農作業をするおばあちゃんそのものであった。
ただし、そこから覗く肌は若々しく、容姿も美女または美少女としか形容出来なかった。
マロンの鑑定で年齢もレベルも確認出来ないあたり只者ではないのだが、現在のマロンにそこを疑問に思う余地はなかった。
畑に成っている野菜が第一印象として強烈だったからである。
「あ、いえ。森の中に畑って水らしいなって思って。」
だから近くに自然と身体が寄ってしまいましたと、マロンは説明する。
一方オプスはおかしいなという表情を消さないままマロンとの会話を進める。
「この森じゃ肉に偏ってしまうだろうからねぇ。」
オプスは会話の主たるものが食材である事を見越していた。
「そうなんですよね。どうも狼とか豚とかの系統が多くて。たまにきのこ類も見つけますけど。」
野菜が少ないんですよね、薬草はありますけどとマロンは続ける。
「そうなの?じゃぁ畑仕事を少しやってみる?」
その言い方は畑仕事の後には美味しい野菜が待っている、もしくは苗か種を分けてくれると言っているように感じられる。
マロンの脳内には決して〇〇のクエストを受注しますか?というアナウンスが流れたわけではない。
ここで手伝う事がイベントであり野菜を手に入れるために必要な行動ではないかと打算がなかったわけでもない。
全くないと言えば嘘になるが、それよりも野菜に飢えていた。
「やります!」
二つ返事で承諾する。屈託のない笑顔で手を上げて答えていた。
そしてマロンはオプスに教えられて農作業を手伝う。
ゲーム内時間で夕方までみっちりと手取り足取り腰取り教えらえた。
たまにオプスがマロンの幼体に触れるが、それは力の入り方がおかしいと矯正するためのものであって、決して幼女に触れたいというものではない。
少なくともオプスはそう主張している。
農作業結果、マロンには当然のようにスキルと称号が生えていた。
スキル:水やり(2/10)、農耕(2/10)、堆肥(2/10)、収穫(2/10)、発酵(1/10)、醸造(1/10)、
称号:豊穣の美幼女
マロンの脳内にシステム音声が響く。
【農業系スキルを統一しますか?】
マロンはYESをタッチする。
すると、今回得たスキルは……
農業(2/10)、発酵(1/10)、醸造(1/10)と短縮されたのである。
他の工程等を取得すればだが、恐らく発酵や醸造は酒造あたりに統一されるのでは?と想像していた。
尤も発酵は味噌や乳牛にも関係するので何とも言い難いところはある。
しかし、マロンも農業に統合された事で管理が楽だなとも考えた。
難しい事を考えるのは苦手なのである。
「これは今回のご褒美ね。」
マロンは収穫した野菜をたくさんと、大吟醸の瓶を1ダース手渡された。
大吟醸1ダースを軽々しく持つオプスに、随分と逞しいと思った事は間違いではない。
ステータスというものが存在する以上、見た目に騙されてはいけないのである。
ちなみにマロンはオプスに言われて一人で土を耕して種を蒔いて水をあげて剪定したりして収穫までを行っている。
一日で実がなる事が不思議だなんてのはファンタジー系ゲームだからツッコミは入れていない。
これは農業シミュレーションイベントだと思っているので、そのせいだとも思っていた。
そしてその農作業中に口ずさんでいたが以下である。
「鋤とか~機雷とか~♪最初に~言いだしたのは~♪だ~れな~の~か~しら~♪」
「駆け抜けてゆ~く~♪わ~た~し~の~
「今日も畑の前で、土を耕して~♪」
「茶色のう〇こは農業マジック♪とっておきの肥料~♪」
「(芽が出てきて)ささやき~(葉を広げて)きらめき~(害虫が寄ってきて)ドキドキ~(実がなって)だ~いす~き~♪」
「(実の生った野菜等を見て)あなただけ~に~見つめ~て~欲し~い~♪」
「TURUTEKA!仕上がりは上出来~♪」
「PIKAPIKA!準備はOK♪」
「すてき~な~予感~♪まな板に乗せ~♪」
「HOUCYO!適度に~斬って~♪」
「今こそ出来そう野菜いた~め~♪」
【もっと!モット!農作業!】歌:マロン
その昔プレイした所謂ギャルゲーの元祖と言っても良い有名なタイトルの替え歌である。
機雷は関係ないのだが……
寧ろ農作業からの料理にも発展しているのだが。
替え歌にそこまでのツッコミを入れても仕方がないのである。
語呂と勢いが大事なのであった。
オプスに貰った戦利品をストレージにしまうとオプスがマロンに提案をしてくる。
「じゃぁ、汚れを落としましょうか。」
ちょうどお風呂も沸いたし♪とオプスが入浴を勧めてきたのである。
「あ、はい。」
特に違和感も疑問も抱く事無く承諾するマロン。
農作業で土塗れになっているため、汚れを落とすのは自然な流れであったし、初対面なのである意味で警戒心が緩んでいた。
ちなみに護衛の役に立っているのかは微妙なシンシアは野菜を食べてひと眠りをしていた。
何も反応を示していないという事は、敵意は感じられないという事だろう。
オプスに流されるまま脱衣所で服を脱がされるマロン。
もちろんその後には自身も全裸になって風呂に入るオプス。
モザイクが掛からないのは大人モードだからである。
この運営、本当に大丈夫であろうかと心配にもなってくるマロンであるが、断念しかけていた野菜摂取の影響からか吹き飛んでいた。
そして野菜のように身体の洗いっこをして……
「ちょ、そ、その茄子入らない、って大根はもっと無理ぃ。」
そして風呂上りには経験回数と再生回数が5ずつ増える事となる。
一つの野菜で一カウントされていた。そしてマロンは都度再生していたので……
5回も破瓜を経験していたのである。
茄子、大根、胡瓜、ゴーヤー、そして謎の力で生えていたオプス自身によって。
マロンはオプスに美味しく戴かれてしまったのである。
脳内に聞きなれたアナウンスが響く。
【農業の寵児(農業神の加護)を取得しました】……と。
「本当はね、普通はこの畑を見つける事も入る事も出来ないのよ。」
オプスは呟いた。マロンに言い聞かせるように。
「だから色々張り切っちゃった♪」
その結果が野菜プレイである。食べ物は粗末に扱ってはいけないと、野菜はオプスがこの後美味しくいただきましたという事になっている。
食すれば良いという問題ではないのだが、廃棄するよりはという事である。
神棚に飾るという選択肢も存在するが、豊穣を冠とするこのNPCには何を言っても無駄な気がするマロンである。
農業神の加護なんてのも取得してしまうくらいである。ただ事ではない事は容易に想像出来た。
このNPCは本来であれば簡単には出会う事も出来ないであろう神の一柱なのだろうから。
豊穣の美幼女・マロンが爆誕した。
ちょっとおでかけをしただけなのに……スキルと称号が増えてしまうマロンであった。
そして女として大事なものを失ったり回復したりと、実に目まぐるしい一日であった。
そして農作業中にマロンは3つレベルがアップしていた。
レベル:15 12→15
HP:265/265 160→265
MP:229/229 194→229
筋力: 10 (5→10)
体力: 40 (35→40)
知性: 51 (50→51)
器用: 50 (45→50)
魔力: 13 (11→13)
魅力:1040 (960→1040)(装備+45)
手動振り分けステータスポイント 55
スキル:中級錬金術(8/20)、中級家事(2/10)、中級木工加工(11/20)、初級鍛冶(9/10)、鑑定(中)
農業(2/10)、発酵(1/10)、醸造(1/10)
未収得スキル:中級踊り
固定スキル:魅惑の踊り、治癒の踊り、再生
種族固有ステータス:経験23 再生9
称号:●はじめてのオプション(HP・HMを除く全ステータス+5)、●はじめての珍種(魅力+50)
●世界で初めての処女喪失(魅力+50)、●初めての処女〇再生(魅力+50)
●初めての輪姦(魅力+50)、●きのこ博士(知性+20)
●初めてのAF(魅力+100)、初めての口淫(魅力+70)、●初めての16P(体力+30、器用+30、魅力+50)
●こけしマイスター(知性・器用+10)、●初めての大人のおもちゃ(魅力+50)、●モテ女(魅力+50)、
●初めての小野兄ィ(魅力+50)、●初めての潮吹き(魅力+50)、●初めての絶頂(魅力+30)
●初めてのおもらし(魅力+70)
★豊穣の美幼女(魔力+10、魅力+50)、★農業の寵児(農業神の加護、筋力+5、体力+5、器用+5、魅力+30)
なお、称号等のステータスアップはレベルアップ後に加算されているため、このような数値となっていた。
「農作業を半日ちょっとやっただけでこれだけあがるって……」
冒険らしい冒険はまだあまりしていない。小屋と周辺の森探索と池と……
貞操を何度も散らした見返りと思えばリターンは大きいのだが、これで良いのかと思うマロンであった。
時々HPとMPが何依存で上がるのか忘れてしまいそうだが、HPは体力でMPは魔力に依存してあがる。
称号の効果で勝手に体力が上がったせいか、HPがMPをうわまる結果となっていた。
最初魅力に極振りしたのに自分はどこに向かっているのだろうか、それを疑問に感じてしまってはおしまいである。
フリーシナリオのゲームをやっていると思えば良い。
直訳、浪漫の性である。
競馬ゲームでも長距離同士を掛け合わせているのにステイヤーではなくスプリンターが産まれる事はある。
スティールハートの仔だってステイヤーズステークスに出走するのである。
短距離馬であるマグニテュードからミホノブルボンが産まれるのである。
もっともマグニテュードの父はミルリーフであり、スタミナを継承していたのだろうけれど。
さらに遡ればエクリプスという聞きなれた名前を辿り、最終的には三大始祖の一頭であるダーレーアラビアンにまで行き着く。
つまりは考えるだけ無駄、というよりは孫……損なのである。
「ま、野菜の目途も立ったし今回は良いかな。」
野菜というリターンの前には些細な事のようであった。
しかし合流した時にトリス達にどう言われ、思われ、ツッコミされるかはまた別の話である。
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