第27話 称号のバーゲンセール
「えっちなのはいけないと思いま……」
マロンがイノ吉・イノ子夫妻に説明する。
目の毒かどうかは不明だが、見えたらいけないものが色々と見えてしまっているのだ。
それも生々しく……
獣なので人間でいうところの四つん這い立ちバックという事になるのか。
覆いかぶさっているイノ吉の下に見えるものがとてもリアルで、マロン達には目の毒であった。
「それに、流石にもうイノ吉達一家からは食肉には出来ないよ。同じ種族のノラとかならともかく……」
意思疎通の出来る相手、ましてや言葉を交わせる相手を食するというのはどうしても抵抗が出てしまう。
それは人間が最初から喋る事の出来る生物故のものかもしれない。
『我々は気にしませんぞ。』
「私達が気にするの。」
イノ吉達親子も自然や生物の摂理に従い、例え我が子でも時としてエサとなる事には何の疑問も抱かない。
流石にイノ乃を差し出す事は出来ないだろうけれど、食べるために子供を作る事に関しては特別な感情を抱く事はなかったのだ。
「柵には今我が家に居るみんな以外の外部の生物が触れた場合、電撃が走るようにしてあるの。」
だから基本的には外的が現れれば初見殺しにしかならないかもしれないけど、迎撃するよと伝えた。
その内自動的に外的には攻撃ならぬ警告するようなものを計画しているとも伝えた。
番犬として置くとは言ったが、テイムした魔物であっても傷つくのは忍びない。
外犬を飼っている人には伝わるかも知れないが、やはり気になってしまうのだろう。
不法侵入者の生殺与奪は家主であるマロンの匙加減。
基本的には捉えて、会話が出来そうなら追い返すだけにする。
そうでない場合は……戦って殺めたり食料化したりするという方針に決まった。
「だから、もしビリビリして動けなくなったら一応捉えて動けないよう簀巻きにして、逃げないようにして貰えると良いかな。」
人型でないイノ吉達には出来ないので、簀巻きにするのはマロン達一応人型の役目である。
「それでイノ吉達は外で生活で大丈夫?」
『我らはもとより森の中で生活していた身、何ら不満はありませぬ。」
森で生活していた時も適当な草むらに囲まれたり、木にもたれ掛かったり、洞窟のような洞穴などで生活していたとの事。
雨風を遮るものがないので、今後の課題ではあるものの概ね満足で双方共納得のいく出来となった。
『不要な外敵がいないというだけでも、充分助かります。』
それはあの森には色々な魔物が存在すると言う事だろう。
ゲームのシステム的な防御もどこまで信用して良いのかマロンにはわからない。
ログインしていない時間がどうなるかもはっきりとはしていないので、猶更防衛には力を入れておきたいところだった。
それと、アクア用の池も考えなければならない。
マロンは夕飯に、先程採取した野草やきのこ類を鍋で煮込んでみんなで囲んだ。
鍋はやはり大人数で囲うに限るのは、万国共通であった。
水はアクアの水魔法、毒はマロンの治癒の踊りで予め毒素は抜いていた。
マロン印のエロポーションは封印している。
食事が終わり、イノ吉達を番犬代わりに放牧するとマロン達は小屋の中に入った。
「工房もあって台所も……それにお風呂まで、ベッドもふかふかの布団がありますし、この小屋……完全に引き篭もれそうですね。」
アクアの反応も無理はない。
どうみても最前線で攻略をするような人がいる場所には見えない。
鍛冶が出来て酒が飲めれば良いという、頑固ドワーフみたいな人が籠るような小屋である。
流石に皆一緒に風呂に入ったりはしないが、順番に温かい湯を堪能する。
「良い湯でした。ここはもう引き篭もりには超天国です。出来る事ならこちらを拠点に登録させて貰いたいくらいです。」
「外に池を作る予定なので、そこなら良いですよ。やっぱり水の精霊ですし水が良いですよね。」
マロンも流石に家の中を拠点にされるのは遠慮していた。
トリスのようにリアルでも友人であれば、何かあっても本人を糾弾出来る。
しかし、ゲーム内でしか繋がりのない人だと、いくら深く仲良くなっても一線は引いてしまうものである。
ちなみにマロンがいないときは一部機能を除き、箪笥などを勝手に開ける事は出来ない。
ドラ〇エの
ただし、マロンがログインしていなくても家に入る事は可能である。
そのため風呂に入ったりベッドで寝たり、調理したり工房を利用する事は可能であった。
その辺の匙加減は考えても仕方がなかった。
一晩眠るが、特にえちを含めて何のイベントも起こらず時間は過ぎて行った。
アクアも女性体なので、何か起きると思っていたのだが、ある意味でマロンは拍子抜けをしていた。
しかし、本来何も起きないのが普通なのである。
いくら自由度の高いゲームとはいえ、えっちな展開はあくまでサブ、補助的な要素なのである。
勘違いしてはいけないのであった。
翌朝、全員で穴掘りをしていた。
シャベルを作る事に成功したマロンが、どうせならみんなで共同作業をしようという事になった。
シンシアやイノ吉達は護衛を兼ねた食う寝る遊ぶを行っている。
イノ乃は随分とシンシアに懐いていた。
なんとなく、「お姉さま……」とイノ乃が言っているように映る時もあった。
午前中一杯で穴を掘り切ると、そこそこの池が出来上がっていた。
マロンはあの池の水をそこそこ収納してきているので、出来上がった穴に放出する。
「マロン……絵面が……」
トリスのツッコミは尤もで、まるで放尿しているように元の池の水は放出されている。
それも男子の放尿のように。
「ってアクア、あんたもかいっ!」
当然自分が今までいた池の水、自ら収納していてもおかしくはなかった。
一人よりは二人、二人よりは三人という事で、実はトリスも収納していたため放出していく。
「結局トリスもだね。」
ここで一人だけ違うようにするわけにもいかず、トリスもこのノリに付き合う事にしていた。
おバカトリオ誕生の瞬間でもあった。
池の水は掘った穴に満たされ、新たな池の誕生である。
「アクアさんはここを好きに使ってください。」
マロンは敷地内に出来た池をアクアに解放した。
マロンの所有でもあるが、アクアの所有でもある。所謂共同所有者という事になる。
池のレイアウト変更等の弄る権限は二人に帰属する。
午後になるとそれぞれ自由行動を取る。
トリスとアクアは一度ログアウトして現実での諸々を行うという事で現在はマロン一人だけとなっていた。
「少しだけ探索しようかな。」
南と東は少しだけ探索したのだから、北か西に行ってみようとマロンはシンシアを連れて森を進んで行った。
イノ吉達はおするばんである。来ないとは思うが、念のため家を守る者は必要であると判断したためだった。
「き、きのこ……形が……リアル過ぎる。これが噂のマツタケ……」
立派なマツタケが生えていた。これだけあればマツタケパーティーが開ける、もといきのこパーティーが開けると。
現実ではこんな立派なマツタケの匂いを嗅いだこともなければ、食べたこともないので、本当にこれがマツタケの香りなのかはマロンには判断が付かない。
しかし、良い香りだなぁとついつい近付いていく。
マロンはしゃがみ込み、群生しているマツタケを一つ千切ると……
マロンは堪能してみようとその匂いを嗅いで、頭が少しくらくらしていくのを感じた。
魅惑とは違う、困惑状態となっていた。
自分のステータスを確認した時には時既に遅く。
群生していたマツタケは地面から伸び、マロンへ襲いかかる。
その数10を超える。
マツタケそっくりの魔物に襲われたマロンの経験が1どころか15も一気に増える事となった。
【初めての輪姦】と【きのこ博士】、【初めてのAF】【初めての口淫】【初めての16P】の称号を得ていた。
マロンは快楽?に薄れる意識の中で、シンシアに
「こいつら
シンシアがマツタケの魔物……「マツタケもどき」を屠る中、こいつら絶対食ってやると誓うマロンだった。
このゲーム開発の会社が元はそっち関係の会社である事を忘れてはいけない。
全年齢対応ゲームに入れて良い要素ではないのだが、ユーザー獲得と長く遊んでくれる事を意図して盛り込んだ機能が、このような結果を齎すとは運営も考えてはいなかっただろうけれど。
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