第12話 小串の謝罪
「ごめんなさい。」
その後、喫茶店の店主……浪漫の父に嗜められ、どうにか猫の威嚇のような浪漫は落ち着きを取り戻す。
この喫茶店は浪漫の両親が経営していた。大きな喫茶店ではないが、子供を成人まで育てられるだけの財力は持ち合わせていた。
浪漫は小さな頃から喫茶店に通っていたので、角地のテーブルがほぼ指定席と認知されているのである。
そしてそんな店主でもある父に羽交い絞めにされ押さえられる事で冷静になる事が出来た。
「他のお客様に迷惑になるから。」と言う父に対して、「今他にお客さんいないでしょ。」と浪漫に返されていた。
浪漫は自分の座席に座り、小串に対して「正座。」と一言だけ呟いた。
その後暫くして二人に対して新しくカフェオレを置いていく父。
座席に正座をしている小串に、それを真っ直ぐ見つめカフェオレを口にする浪漫。
そして冒頭の「ごめんなさい。」に繋がる。
「私が……その……えっと……」
浪漫は小串の事を良く知っている。
幼稚園の頃から一緒で高校まで一緒だった。正確には大学に通う今でも一緒である。
高校は女子高、大学も女子大である。
子供の頃から一緒で、プールや海、銭湯など様々な所も一緒である。
普通の仲良し友達というには、少し行き過ぎなくらい仲は良い。
浪漫は他に仲の良い友人はいない。小串さえいれば良いと考えている。
両親からすれば、もう少し友人を増やして欲しいと思っていた。
「わかってるよ……小串の事くらい。」
小串が可愛い女の子に目がない事は浪漫は理解している。
そのためあのゲーム内で女の子ばかりのギルドを作ろうとしている事も。
「小串には私がいるじゃん……私には小串しかいないけど。」
「いや、本当にごめん。でもさ……あれ飲んだら急に淫らな気持ちになったんだよ。本当だよ。」
「そうでなければ、抱き着いたり頭撫でたり匂いクンクンしたりはしたかも知れないけど、あそこまではしてなかったよ。」
一応ハラスメントに掛かる恐れがあるのだからと付け加えた。
「あれ?あぁ、来客に出すモノがなかったから水じゃ悪いと思ったから、作ったポーションを出したんだよね。」
「は?作った……?ポーション?」
浪漫はゲームを登録してからの大方を小串に話す。
ランダム種族でボディコニアンになって魅力値が異様に高い事。
小屋が与えられ、最初に出会ったシンシアをテイムした事。
ナビ子からお詫びで貰った中にあった、説明書を駆使して錬金したらポーションが出来上がった事。
そのポーションに媚薬効果(小)が付与されていた事。
「は?ポーションに追加効果?もしかして流れてたワールドアナウンスって……」
「あぁ、あれ自分にだけじゃなかったんだ。もしかしてゲーム内に発信されてた?」
「初めてのアイテム作成時に付与と、激レア種のテイムについて流れてたよ。」
「シンシアの事かな。ただのウルフかと思ったらシルバーウルフだったし。」
「あのね。ワールドアナウンスはレベルアップとかのアナウンスと違うからわかるもんだよ。」
そしてチュートリアルが終わって、とりあえず外に出てみようと思ったところでエロフに襲われたと付け加えた。
「あ、はい。その節は大変申し訳ありませんでした。」
詫びではないが、浪漫が話した事でトリスこと、鳥栖小串も自分の事も話し始めた。
小串もまたランダム種族で始め、種族は既出の通りエロフというエルフのえろい版の運営のいたずらだろうという種族だった。
最初から使えるのは風系の魔法で、元がエルフなだけあって森が関係し、火系の魔法は苦手のようだった。
職業は射手見習いを選択。これも
ステータスは魔力と
プレイヤー名:トリス
種族:射手見習い
134cm 32kg
レベル:1
HP:100(初期値)
MP:100(初期値)
筋力: 10
体力: 20
知性: 20
敏捷: 0
器用: 10(射手見習いの職業特性初期値)
魔力:100
魅力: 0
固定スキル:ふたなり化(及び解除)、絶倫、命中精度超上昇、魔法矢生成
種族固有ステータス:
※エロフの初期値100は筋力10,体力20、知性20、魔力50が自動で割り付けられていた初期値である。
そして自分で割り振れる50ポイントは全て魔力に注いでいる。
ステータスを魔力に注ぐ理由……それは小串は将来魔弾の射手を目指している事を意味していた。
そのような職業があるかは確定していないが、魔法を矢にして飛ばすというのはベータテスト時に立証済であった。
ちなみに100ポイントが自動割り付け出来るのはランダムで激レア種を引いた人だけの特典である。
そのためステータスがバラバラでも、例え極振りでもロケットスタートが出来るだけのステータスではある。
エロフのトリスとしてチュートリアルを開始。
その中でエルフの村の中で生を受けた設定であった。
そのため、村の中で話を聞く事によりエルフっぽい魔法の習得に乗り切った。
将来の魔法属性矢生成のために必要と踏んだためである。
知性が最初から20あり、魔力が100と言う事で初級は何なく覚える事が出来た。
しかし魔法使い系のキャラ作成をした場合、他のプレイヤーでも可能な事なのでチートではない。
一つだけ小串は黙っていた。
種族固定ステータスの項目に経験というものがある事を。
奇しくもこれはマロンにもある項目であり、これが意味する事が何なのかを知る事はまだ大分先の事である。
浪漫はログアウトをしてしまったので気付いてはいないが、あの時トリスは三つのワールドアナウンスを聞いている。
世界で初めての童貞喪失と世界で初めての処女喰い、そしてこれは恐らくマロンが獲得したであろう世界で初めての処女喪失というアナウンスを。
恐ろしいのはその称号の効果であるが、確認した時に小串は驚いていた。
自分にはあまり上げる気のなかった魅力のステータスが思いっきり向上していたのだから。
二つの称号で得たステータスの合計は魅力が+100。
つまりは村でコンテストを開けば満場一致で優勝出来るだけの魅力を得たことになる。
これがどういう事か……
マロンと並び歩けば別であるが、エロフの力を発揮し易くなったという事は確実である。
魔弾の射手を目指している小串であるが、違う魔弾の射手となりそうであった。
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