第10話 ポーションの効果……?

 「きゃあぁあぁあっぁぁぁっ」


 YESを押したため、突然現れた耳の少し長い推定少女が小屋の中に入って来る。

 シンシアは特に攻撃する事はない。

 まだ何もお願いも命令もしていないためであった。


 闖入者がマロンに抱き付くように転がっていく。

 幸いにしてダメージは入っていない。小屋がホーム設定になっているおかげであった。


 ゴロゴロと転がった末に闖入者である推定エルフの呼吸がマロンに届く。


「はぁはぁ……、よ、幼女……」


 闖入者は変質者のようである。


「は、離れて。苦しい……」


 突起するものはないが、闖入者と床にマロンは物理的に挟まれており、ダメージは入らなくても痛かったのである。


 

「と、突然ごめんなさい。まさかこんな森の中に小屋があるなんて。」


 テーブルに案内された推定エルフは呼吸を整えると事情を説明し始めた。

 森の草を掻き分け、どこに通じているかもわからず歩き続けると、突然開けた場所に出て目の前に小屋があった。

 歩き疲れたと言う事もあり、助かったと思って駆け出した所、ちょうどマロンが扉を開けたところに出くわしたという事である。

 そしてタイミングよく、マロンが入室を許可したためにそのままダイブする事になり、くんずほぐれつゴロゴロと小屋内を転がったという事だった。



「何もありませんが、これでもどうぞ。」


 先程出来たポーション(媚薬効果入り)をお茶の代わりに出すマロン。

 プレイヤーかNPCか確認する事もなく接してしまうのは、友達100人作りたいマロンが先走っているせいである。

 もう少し警戒心や猜疑心がないと先行き不安であるが、それを指摘する者はいない。


「あ、ありがとうございます。」


 コップに移し替えられたポーション(媚薬効果入り)を飲み干した。

 水を出されたと思っていたので遠慮なく一気にいっていた。


 エルフの女性はHPが回復した事を実感する。他に何かの効果が感じられた事も違和感として受け取っていた。


「私はマロンと言います。こんな格好ですが痴幼女ではありません。ボディコニアンという種族です。」

 

 マロンは深々と頭を下げる。プレイヤー・NPC関係なく仲良くなろうという思いだけだった。


「私はトリスです。一応エ、エロフです。」


 マロンには「エロフ」とは聞こえていない。「ロ」を小さく言ったため、見た目の補正もあって「エルフ」と聞こえている。


「それでトリスさんが森を彷徨っていたのって……」


 そこまで言った所でマロンはトリスの息遣いがおかしいことに気が付く。

 はぁはぁ言い出しているのだ。どこか苦しいのだろうかと思ってマロンは近付いてしまう。


「はぁ、はぁ……も、もうだめ……目の前の可愛い幼女……これいじょ……もう、我慢できな……ああぁあぁあっぁぁぁあぁっ」


 マロンは襲い掛かって来るトリスに成す術もなかった。

 ベッドに押し倒され…… 



 気が動転し碌な抵抗も出来ず、その暴挙に抗う事が出来ない。

 そしてシンシアはその様子を見ているだけだった。

 

 マロンは気付くと天井の染みを数えていた。

 現実では味わった事のない感覚と痛みに何もする事が出来ず、天井を見ている事しか出来なかった。


 段々と天井を映す視界がぼやけてきて……トリスが身体の上で果てたのか折り重なっている事を実感する。

 その間に色々と終わっており、ステータスの一部が変化していた。


 【種族固有ステータス:経験1 再生0】 



 マロンは微かに動く指でログアウトボタンを押した。





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