第3話 キャラクター作成②


――それでは職業を選んでください――


 ボディコニアンなら踊り子一択だろと浪漫は思ったが、どうやらそうではないようである。

 職業一覧が浪漫の眼前に現れる。

 

 そこには戦士、剣士、魔法使い、治癒士、トレーナー、丁稚……


「丁稚って……いきなり商人や鍛冶師とかじゃないんですね。」




――神(運営)の悪戯心らしいです。本当はすっぴんとかノービスとかありふれた職業スタートが検討されていたようです――


 どんな事にも下地から始めなければいけないという運営のお茶目から始まったらしく、進化すれば鍛冶師や商人になる。

 丁稚の進化先には料理人とかもあり、トレーナーから進化すれば魔物使いや調教師になる事が可能となる。


 また、ある一定のレベルになるとサブ職業が持てるようになり、サブ職業のレベルが上がると特殊職業に就く事が出来る場合がある。

 魔物使いと商人が一定に達すると奴隷商人(魔)が顕現する。これは魔物専門の奴隷商人という意味である。

 一部上位職業は公式とベータ版により明らかになっているために、特に秘匿する必要も無かったりする。


 こういった職業の組み合わせも自由自在のため醍醐味の一つと言えた。


――それと、種族特有の武器防具に限り、筋力に関係なく持てます。筋力0だから扇子持てませんとか寂しいですからね――


「それは確かにあまりにも悲しいですね。」


――あと、例えば知性が0だからと言って、頭が悪かったり、詐欺にあい易いとかいった事もありません。そこはプレイヤー自身の頭脳の問題です――


 都度対応が人間らしいナビ子さんである。

 それはなるべくストレスなく進められるよう配慮された高性能AIなので、出来るだけ人間っぽい対応になるようにプログラムされていた。

 裏で運営が喋ってるのではないかと思えるくらいには、対応が人間っぽかった。


「生産職か治癒士にしようかなと思ってたけど。う~ん。」


「うん、当初の予定通り治癒士にしよう。」

 踊って治す姿を想像して止めた。扇子を振って腰を振って、良くわからない踊りを踊って治癒をしている姿があまりにもシュールだった。



――それではご自身で割り振れるステータスポイント50を割り振ってください――


 職業も決まったため、職業に合わせたポイント割が後の冒険に影響を来たす。

 治癒士は知性に勝手にボーナスとして10ポイント割り振られている。

 

――あ、治癒士の職業固有のもので10ポイントが自動で割り振られていますが、ボディコニアンの種族特性につき回復効果等は魅力に依存します。

人間種であれば知性や魔力を上げる事で効果が上がるのですけどね。こういった種族特性ってある意味縛りプレイですよね。というかなんかやらしいですね――


 やらしいのはあんたの方だよと、浪漫はツッコミを入れるのをグッと堪えた。

 魔法は魔力や知性依存のためそれらが高い方が効果が高いのは理解出来る。

 しかし魅力で回復って……スマイル0円で回復するみたいなものだなと思っていた。


 職業特性の10ポイントも魅力に変換して欲しいくらいだよ、何その中途半端な極振りはと思っていた。

 ナビ子の意見を聞いた今となっては、魅力を上げるという選択肢しか出て来ない。


 他のステータスは装備品であげればいいだろう。この時浪漫はそう考えていた。


「じゃぁ50ポイント全部魅力に振ります。」



――それでは最後に容姿の設定をお願いします。VR機器が読み込んだ、実体から極端に違う見た目には変更出来ませんのでご注意を。具体的には異なる性別、20cm以上の身長差、30kg以上の体重差等ですね――



「面倒だからそのままで……と思ったけれど少しは変えようかな。」


 浪漫はリアルでは美容院へは行かず、髪は母親に適当に切って貰っているため貞子みたいな黒髪で長髪である。

 そのためゲーム内では色は変えようと浪漫は考えていた。どうしようか思考した結果、ラノベなどの影響で憧れていた綺麗な銀髪で、腰付近までのロングにする事に決める。

 目も少しくりんくりんにして、右目は紅、左目は碧のオッドアイに。


 完全に中二病患者である両親の血を引いていた。


 20cm以上の差は駄目とか言う割には、マロンは幼体であるため140cm程しかなかった。

 体重にしても30kg差は駄目という割には……30kgはなかった。ギリギリ29kgだった。

 これは恐らく成体になれば本体と同じ154cm、4〇Kgになるに違いないと浪漫は期待する。


 出来上がったキャラクターアバターは残念ながら幼体であるため体型は寸胴である。

 ぼんっきゅっぼんは夢の彼方へと吹き飛んでいた。

 しかし、VR機器が読み込んだ当人の身体データもきゅっきゅっきゅっというスリム体型のため問題はなかった。


 断崖絶壁、鎖骨にボールを置いたら真っ直ぐ下に転がり落ちるだけである。

 胸を滑り台にして前方になど飛んだりはしない。



――以下マロン様のステータスとなります――



 プレイヤー名:マロン

 種族:ボディコニアン(幼体)

 139cm 29kg 

 

 レベル:1


 HP:100(初期値)

 MP:100(初期値)

 筋力:  0

 体力:  0

 知性: 10(治癒士の初期値)

 敏捷:  0

 器用:  0

 魔力:  0

 魅力:150


 固定スキル:魅惑の踊り、治癒の踊り、再生

 種族固有ステータス:経験0 再生0 ※種族特性によるものです。数値により魅力の効果に上昇効果あり。




――以下、各ステータスに私なりの言葉でご説明させていただきます――


 ナビ子ちゃんの言葉のため、公式での表記と一部説明の仕方に善意だったり悪意だったりが混じっている。


 HP:0になると死にます。死ぬと最後に立ち寄った町の教会か、本拠地のポータルか、後に実装されるマイホームで蘇生されます。デスペナルティはゲーム内時間の1日の間、元のステータスから20%減。

 MP:0になると魔法が使えません。また0になると所謂魔力欠乏症となり貧血のような症状を引き起こします。

 筋力:物理攻撃力に加算される数値。高い方が、拳だろうと剣だろうと相手に多くのダメージを与えられます。  

 体力:物理攻撃に対する耐久値。また体力値がレベルアップ時のHPの増加に影響します。  

 知性:高い程魔法使い系・治癒系の魔法の効果が上がります。また魔力と作用しますので、知性と魔力が高い方が魔法使い・治癒士としては優秀です。 

 敏捷:素早さです。早い程避けたり走った時の速度が高くなります。  

 器用:武器防具を扱う器用さ。命中率にも直結します。手先の器用さにも影響します。物作りの精巧さにも影響出ます。生産職は高い方が良いでしょう。

 魔力:魔法攻撃力・魔法耐性に加算・影響されます。  

 魅力:色々なモノを魅了します。高い方がモテます。かっこいいとか可愛いはこの数値が高いという事です。高すぎてサークルクラッシャーになっても責任は負いかねます。




――参照数値は下記となります――

 

 ※筋力100あれば米俵を担いで平常通り歩けるレベル

 ※体力100あれば夜のお相撲をぶっ通しで一晩頑張れるレベル

 ※知性100あれば都内の有名な高校に主席入学できるレベル

 ※敏捷100あればスカート捲りしても風のせいじゃない?と誤魔化せるレベル

 ※器用100あれば加〇鷹二世と呼ばれるレベル 弓矢で言えば10射中8射は確実に図星に当たるレベル

 ※魔力100あれば魔力による威圧で魔力20程度までならお漏らしさせられるレベル

 ※魅力100あれば町のミスコンで優勝出来るレベル



「ナビ子さんの参照解説に偏見が半端ない……」





――それではマロン様、ニューワールドをお楽しみください――




 そして栗林浪漫ことマロンは、一応魔族の末席ボディコニアン(幼体)として新しい世界へと旅に出て行った。

 たった一人の友達と一緒にプレイする事と、友達100人作るための旅が始まる。



――あ、その前にチュートリアルがあった――


 おっちょこちょいのナビ子さんである。

 本当に中の人は存在しない。

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