本能の侭に
城井は膝から崩れ落ちた。全五試合で打率.563、本塁打6本、打点20と文句無しの成績を収めていた城井だったが、一方の高広も計33イニングを投げ防御率0.27と驚異の数字を残していた。
「あれだけ頑張って来たのに何でだよ...何で俺が三年も下の奴に負けるんだよっ!」
城井は
城井の高広に対する鬱憤は限界に達していた。その鬱憤を晴らそうと、シート打撃では高広と対峙する際、ピッチャーの方向への打球を飛ばしてやろうという嫌な考えもよぎった。しかし打球が飛んで行ったところで研ぎ澄まされた高広の反射神経でキャッチされるだけだった。
「正々堂々と打って俺の実力を分からせてやる」
セミの鳴き声がこだまする夜のグラウンドで、チーム内による紅白戦が行われていた。マウンドには紅組先発の高広、バッターボックスには白組四番の城井。殺伐とした雰囲気の中、あの時の屈辱を晴らすべく城井はいつも以上に燃えていた。一方の高広は、これ以上無い打席からの威圧感に気圧されそうになっていた。コントロールがうまいようにに定まらない。カウント1−3から次に投じた一球は城井の肩に当たった。避けなけらば顔面に行きそうなストレートだった。
「しまった...」
城井はあまりの痛さに地面に倒れ込んだ。なんと言っても当たったのは高広の豪速球だ。しかし、痺れるような痛みを感じていた時にはもう遅かった。体が本能の侭にマウンド方向へと向かっていた。猛牛の様な勢いの城井を止められる者は誰もいなかった。
「バタン!!」
次に目を開いた時には高広が右肩を押さえながら悶え苦しんでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます